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嫌われる勇気

 人材育成も行う仕事において、自己変革の支援をする機会も多いのですが、「そんなことしたら評価されませんよ。周囲の人にも嫌われたくないですし。」と言うような人に遭遇することがあります。このような言葉を耳にすると、アドラー心理学を著した「嫌われる勇気」という6、7年前のベストセラーを思い出します。当時のブーム以降も売上は伸び続け、国内累計200万部超の売上を記録、続編も発刊されたので読まれた方も多いのではないでしょうか。

 この「嫌われる勇気」ですが、しばらく前に、著者である岸見一郎氏がリーダーは嫌われる勇気を持ってはいけないと述べていた記事を目にして、ちょっと違和感を覚えました。リーダーが周囲ばかり伺っていたのでは、変化が早く予期せぬことも起きるこの時代、その企業は衰退してしまうと思ったからです。
 

 その後、記事をよく読んでみると、著者のリーダー論の一節には、部下に嫌われてでも、言うべきことは言わないといけないというリーダーは、きっとパワハラをすると思う。との記述がありました。ここでさらに違和感が積もったのですが、リーダーたる者、すでにどこまでを言っていいのか、言うべきなのかをわきまえているのが理想であると捉えました。ただし、裏を返すと、むしろ上からの発言が多いリーダー(と呼ばれる人)は、嫌われると思っていないまま嫌われることをやってしまっているということの警笛でもあるとも思えます。すなわち、嫌われる勇気は、すでに組織、プロジェクトをマネジメントする立場の人向けの言葉ではなく、なかなか殻を破れずに、上の立場にいる人の顔色をうかがってしまうような人が、言うべきことを言えるようになるために勇気を持というということと言えます。 
 

 旁若無人に振る舞うわけではないものの、あまり周りの目を気にしすぎないというマインドをもとうということは、非常に大切な観点であると思います。慶應義塾大学大学院SDM研究科の前野教授の幸福学研究による幸せの4因子の一つに、他の人に左右されずに、マイペースで生きる(マイペース因子)というものがありますが、それと同義であると感じます。マイペースでどんどん突き進んでいる人に、「あなたらしくマイペースでいきましょう。」というアドバイスは必要ありません。むしろ、マイペースも完全なものではないでしょうから、学びを怠らないようにすることなどを諭すことが必要になります。
 

 言葉には、万人に当てはまる言葉 (例えば:生涯成長しよう) と、人の環境、状況によって当てはまったり、当てはまらなかったりする言葉があるというのを再認識して、的確に判断して使っていきたいものです。 

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