眉毛は薄い方がいい
婚活開始のため、紹介用の写真を撮影してもらうべく写真館に向かった。
建物はこぢんまりしており、コンクリート打ちっぱなしの至ってシンプルなスタジオだった。
人からヘアメイクをしてもらうのは成人式ぶりだと思う。
担当はチャキチャキとした若い女性だった。
彼女はトークに長けており、ひょっとすると自分より年下かと思われたが、私より一枚も二枚も上手な印象だ。
「いつもメイク道具をスーツケースに入れて運んでいるので、物件を探すときにはエレベーター付きのマンションというのが必須条件」というようなことを、よどみなくお話ししてくれた。
昔は中目黒に住んでいたとのこと、おしゃれピープル感がすごくて若干の劣等感を覚える。
私のこの朴訥とした様子を見て「こんな受け身なやつだから婚活すんだろうなぁ」と納得されているだろうことを思うと少なからず落ち込むが、まあ事実なのでしかたない。
まず、髪はゆるく巻くことになった。
「普段巻いたりとかします?」と聞かれるが、「いや〜めんどくさくてやらないですね」と答えて無意識に会話をしめてしまう。
そもそも中学生以来コテなんてほとんど手にしておらず、毎日ストレートアイロンで髪を整えるくらいで、ヘアアレンジなんてしようと思った試しもない。
私は内外問わず自分のアップデートを放棄してきた気がする。
おしゃれをしない理由について、「自分はそんなキャラじゃない」を言い訳にしていたが、単なる怠慢のような気もしてきた。ずっと同じ見た目でいることは、その位置で延々と足踏みをしているようなものかもしれない。
メイクもサクサクと進められていく。
私は普段化粧といえば眉さえあればいいという感覚でいるので、なにかを塗り重ねるなどはろくにしていない。
大学2年生の頃に、バイト先の店長から見た目を見直すようすすめられ(そんなことで注意を受けるというのがすごい)、きちんと化粧品一式を買った記憶があるが、まともな化粧を知ったのはその時だった。
それまではファンデーションにリキッドとパウダーがあることさえろくに知らなかったし、デパートの化粧品売り場に行ったこともなかった。
しかしながらそれ以降メイク道具もあまりアップデートされることはなく。
しかしながら、婚活仕様のメイクは眉がかなり薄い。私は普段濃すぎなくらいしっかり描くのが好きなのだが、あまり流行りではないのかも知れない。
そもそもこういう類の写真ではやさしさやマイルドさが求められているのだろう。
その風潮に若干の寒気がするが、そこは飲み込むしかないのかもしれない。
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