『ひとりで泣いちゃダメだよ』

そっかあ。彼にはこんな風にも甘えられるのか。そう思った出来事です。

喧嘩をしたある日、いつも温厚な目をした彼が、憎悪に満ちた目でこちらを見ていました。
喧嘩の内容よりも、彼がそういう目をすることの方がショックでした。

彼は何に怒っているのかを淡々とくり返し私に説きました。でも喧嘩ですから、私も反論する訳です。そしてお互いの主張が繰り返される。話は平行線。とうとう彼が自分が悪いって事でいいよ?って珍しくやな感じで言ってきました。全然納得してないのにそんな事言うなし。

永遠に終わる気配のない喧嘩、繰り返される主張へ反応する事に、とうとう私の脳みそは耐えられなくなりました。視界がぼやけて倒れそうになりました。

ちょっと休んできていい?

なんで?

疲れたから。

こう言う時はひとりで思いっきり泣くのがいんだ。自分は自分で慰めた方が癒される。ひとりになりたい。

ところがそれは叶わず、彼も私のシングルベッドに入って看病?が始まった。私の涙腺は崩壊したようだった。ダムを解放した様に涙は溢れてきた。その勢いは意思では止められなかった。彼の前で泣いたら心配して私が泣き止むまで居ちゃうじゃん。ひとりになりたいのに…ところが限界を超えた私の脳みそは大量の涙を出す事でしか癒す方法が無かったらしい。

ひとりで泣こうと思ったのに。

だめだよ。ひとりで泣いちゃ。

そう言いながら、怒っていたはずなのに相変わらず献身的に寄り添ってくれた。言い過ぎた、ごめんね。今度は素直に謝ってくれた。

ひとしきり泣いた後、私の何が彼を怒らせていたのか理解した。彼は間違っていなかった。仲直りもできた。それもめでたしだけど、なにより、

人前で泣いていいんだ?癒されることってあるんだ?

それを知って楽になった。ああ、私の帰る場所はこの人なんだ、と。親しき仲にも礼儀ありの精神は忘れちゃいけないと思うけど、思ってた以上に私は強がってたな。弱いくせに。笑 人に甘えるっていいもんだな。

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