見出し画像

第二十一話 再びの旅

まさかの二十話越え!今回は、サガワン視点でお届けする。

川沿い

ダイに紹介状を書いてもらい、それを携えて北西に向かう。ゴウいわく、
「川沿いを上流へ歩き、小さな支流が交わるところあたりが念の国の入口だから、すぐに分かる」
とのこと。とにかく川沿いを行けと。一体、何日かかるのやら。とは言え、川沿いは気持ちがいい。風が通る。ふと見ると、こひなたんも歩いている。なぜ?
「なんで歩いているの?」
「水の近くではあまり浮けないからよ」
そうだったのか。だとすると、こひなたんには川沿いは疲れるのではないかと思った。
「大丈夫、疲れないわ。ほんの少しだけ浮いてるのよ、これでも」とのこと。歩いているように見えるけどなあ。
川では、釣りをしている人が見られる。魚は何かを食べるのか。我々は食べなくてもいいのにな。
「少し休もう」と私は言い、近くの大きな岩に腰を下ろして釣人を見ていた。お!かかったらしい。何を釣っているのかな。

SCISSORS、再び

竿がグイグイ曲がってる!おお!見えてきた!赤いぞ!あー!SCISSORSだ!
「おじさん、SCISSORSがかかっちゃったよ!」
「いいのいいの、こいつをなんとかして取って、殻を原料として使うんだから。なかなかいい消臭剤になるんだぞ。これを手帳のカバーに仕込むと、SCISSORSが気づきにくくなるからな」
そんな事ができるのか!知らなかったぞ。しかし、SCISSORSは川の中にも居るのか。。。
「基本は川の中にいるのよ。手帳の匂いを嗅ぐと川から出てくるの。つまり、釣られたあのSCISSORSはあなたのじゃばらんだを狙っていたんだと思うわ」とこひなたん。
コワイコワイ。とは言え、あのSCISSORSは体長が50センチくらいだからたいしたことないね。聖剣 邪破乱打にかかれば一発でしょ。とか、呑気なことを考えていた。

ちいさな流血

休憩もして、少し元気になった私たちは、さらに上流へ向かう。川は相変わらず、なだらかな流れで、ホッとする。ただ、少しずつ細くなってきている。
顔を上げると、少し急流になっているところが見えた。いつの間にか、釣人の姿も見なくなった。そして、周りには鬱蒼とした木々が迫ってきていた。だんだん足場が険しくなってきた。
高さが3メートルほどの滝の下に着いた。ありがたいことに川の向こうがわに上まで続く鎖が見える。川を渡ってあれを使えば、上に行けそうだ。
「こひなたん、渡ろう。それほど川も深くないから膝くらいまでは濡れるけど、渡れるだろう」
「そうね、あの鎖は使いたいものね」
(ジャブ、ジャブ、ジャブ)
と川の中を進む。4、5歩進んだところでこひなたんを見ると、かなり苦労している。エルフは水に弱いらしい。手助けをしようと戻ろうとすると、片足を何かに掴まれた!痛い!掴まれたというより、挟まれた感じだ。さらに、ふくらはぎ辺りにもちくりと痛みを感じる。
水から頭を出している近くの石にもう片方の足、右足だが、を伸ばして水からでてみた。予想通り、左足には小型のSCISSORSがハサミで食いついている。私の足は手帳じゃない!ハサミにある出っ張りが、ふくらはぎに食い込んでいる。チクリとしたのはこれか。
聖剣は重くなっていない。相手はたいしたことないということか。背中から聖剣を取り、SCISSORSのハサミを切り落とすべく軽く振る。簡単に落とせると思ったのだが、SCISSORSの動きのほうが早く、食いついていた足からさっと逃げ、水の中へ。つーっとふくらはぎから血が垂れる。
こひなたんは?と見ると、彼女は、私がSCISSORSとやり合っているうちに渡りきったようだ。良かった。血はまだ流れている。困った。水に戻ると痛みが増す。
(ジャブ、ジャブ、ジャブ)
あと2歩くらいのところで、また、左足のふくらはぎが挟まれた。勘弁してくれ。今度は気づかれないようにそーっと剣を抜き、スピーディーに振る。カツン!と音がして、SCISSORSの頭が落ちる。が、ハサミは開かない、やれやれ。こひなたんが、またバサダーを呼び出してふくらはぎからの血を止めてくれた。

合流地点

少し時間をロスしたが、鎖を使って滝上に出ると合流地点が見えた。ほぼ同じくらいの幅の川が一本になっている。流れはそれほどでもない。まいったのは、そこにSCISSORSの大群がいたことだ。川面を埋め尽くす大群。あそこを渡るとしたら、足が何本あっても足りないだろう。さて、困ったぞ。
上流に向かって右の岸に渡ってきて鎖を使って滝を上がった。にもかかわらず、念の国への入口であるゲートらしきものは逆側の岸にある。こんなことなら、鎖を使わなければ良かったと後悔する。
「また、あなたの足、血だらけになりそうね」とこひなたんがニヤついて言う。
「他人事だなあ。何かいい方法がないかなあ」

私は途方に暮れた。

続く(かも

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?