ユニゾンの曲にかけられた魔法

私は、UNISON SQUARE GARDENの他にもそれなりに色々なバンドの曲を聴いている。

3月、私の職場は「繁忙期」を迎えていた。
毎年やってくる、毎日が忙しさに追われ辛い日々。そんな時に自分を救ってくれるのは間違いなく音楽だ。
職場へ向かう車内で聴く音楽は「今日も1日頑張ろう」と思えるし、仕事終わりの車内で聴く音楽は、その日のモヤモヤを全て吹き飛ばしてくれるチカラがあるし、どうしようもなく落ち込んでいる時にはそっと寄り添って励ましてくれたりもする。
これまで、沢山の曲に救われてきた。

今年の3月は、とにかくUNISON SQUARE GARDENの曲に救われた。

ユニゾンと出会ってからは、落ち込む日もイライラが止まらない日も、凄く良いことがあった日も、ユニゾンの曲は聴くとすぐ側で私の気持ちに共鳴してくれた。

今まで聴いてきた音楽にも、励ましてくれる曲や前を向かせてくれる曲など沢山あった。
でも、ユニゾンの曲は何かが違う。今まで聴いてきた沢山の曲たちよりも、この忙しく心が荒んでいる今、聴きたい!と求めてしまう気持ちが強いような気がしている。
私は歌詞の深読みはしないと決めているが、少しだけその「何かが違う」について考えてみることにした。
とても悲しいことに今、ライブが簡単に出来るような世の中ではなくなってしまった。元々はライブの感想を置いておく場として作ったのだが、とりあえず今文章を書きたい欲が止まらない。何となく、興味のある方はお付き合いを。


音楽がより必要とされる時、そして心に響く時とはどのような時なのか、とりあえず2つのパターンを考えてみた。

1つ目は、上手くいかないことが続いて、ひどく落ち込んで、涙が止まらないような悲しい時。
私は泣くまでいくことはほとんどないが、曲を聴いて涙が自然と出てくることはある。
沢山あるのだが、代表的な曲として…

*黄昏インザスパイ
*さわれない歌
*きみはいい子

本当にまだまだ沢山あるのでその一部である3曲をピックアップしてみたのだが、聴くだけであたたかい気持ちになれるし、曲が傷付いた心を癒してくれる。そして、勇気や希望をこちらに与えてくれる、そんな歌詞が特徴的だ。

“今日が辛いから 明日も辛いままだなんて思うな”
(黄昏インザスパイ)
このフレーズ、この部分にこの曲の全てが詰まっている気がする。深呼吸を三秒間、明日という世界へ背中を押してくれる。そして負けない、とこの歌は私たちを信じて寄り添ってくれる。

“もう少し、もう少し、って思えるように
大丈夫、大丈夫、って僕は歌いたい”
(さわれない歌)
とにかく辛くて助けを求めて泣いて誰かに手を差し出してもらいたい時、自分で立ち上がること、答えを出すことの大切さ。誰にも触れないけれど、この歌はそんな想いを心に届けてくれる。

“一緒に歩こう 小さな歩幅だけど 一人じゃないんだよ 誰もが同じさ”
(きみはいい子)
一人でちゃんと歩けるね、と言った後に本当は誰もが一人じゃないと言ってくれることの心強さ。そして一緒に、と言ってくれる優しさ。この歌はぎゅっと心を抱きしめてくれる。

改めて歌詞を読み返しただけで、なんて良い歌詞なんだ、と思い若干涙目になった。素直に泣ける歌詞である。優しさが詰め込まれた曲は、辛い時の常備薬のように心を軽くしてくれる。

そして2つ目は、理不尽な事で怒られたり、クレームを受けたり、むしゃくしゃしてイライラが止まらない時。思い通りに進まなくて泣きたくなったり、カラオケに行って大声で歌いたくなるような時だ。まさにCheap Cheap Endrollを歌いたいのだがここは敢えて違う曲を3曲。

*マスターボリューム
*crazy birthday
*Phantom Joke

ちょっと違う目線から3曲選んでみた。ただこの曲達、ライブでは間違いなく盛り上がる。聴いていてカッコいい、楽しい、それだけでも元気になれるのだが、それでも歌詞の中にどこか今の自分の状況と重なったり、共感できる部分があったりする。

“何が正しくて、何が間違っているのか
全部わかんないが、問題ない”
(マスターボリューム)
大好きな曲なので選んだ。やはり好きな曲というのはいつ聴いてもいいものだし、聴いていると不思議と無敵になれる気がする。この歌は倒れそうになる背中をぐっと支えてくれる。

“もう限界 もう限界と 最高に頭来ちゃっても
面と向かってはなかなかどうして それじゃここらでちょっと叫んでみよう
(せーの、バカ!)”
(crazy birthday)
面と向かって言えなくても、大声でバカにバカって叫んだって良い。何事も当たり前じゃない、限界まで頑張っている人へ。この歌は今日くらい、何をしても良いよと言ってくれる。

“だめだ そんな悲しいこと言うな まだ世界は生きてる”
(Phantom Joke)
やはりこの部分が胸に刺さる。願っているだけでは始まらない。良いことも悪いこともわからなくなっても、抗うことをやめてはいけない。この歌は塞がれた道を切り拓いてくれる。

聴いていて心が強くなれる曲たち。ライブのことを思い出したり、楽しくなって思わず身体が動いてしまうくらい、聴いているうちにモヤモヤはどこかへ吹き飛んでいる。

ちなみにシュガーソングとビターステップにはどちらの気持ちもうまく入っていると思えるのはMVの影響もあるだろう。
“生きてく理由をそこに映し出せ”
凄く好きな歌詞のひとつだ。

音楽の力というものは計り知れないが、ユニゾンの曲を強く求めてしまう理由のひとつに歌詞の素晴らしさがあると思う。田淵の書く歌詞には魔法がかかっているように思えてしまうくらい、喜怒哀楽様々な感情にぴたりと当てはまって心を揺さぶってくる。そして魔法と言えば、この曲のことも忘れてはいけない。

“不安を抱えてしまった 君を笑わせるためなら
魔法使いかなんかにもなれるんだよなあ”
(スカースデイル)

斎藤くんの書く歌詞も、とても優しい。

とは言えユニゾンの曲のほとんどは田淵が作詞しているので田淵の書いた歌詞ばかりになるのだが、ここから個人的にこの部分がいいぞ!と思う歌詞の一部を並べてみる。まだ載せたい歌詞はもちろん沢山あるのだが、そしたら大変なことになりそうだったので数曲に絞らせてもらった。


“ミファソラシド 声に出してごらんよ
軽くなるだろう? ちょっとしたおまじないだよ”
(flat song)

“思い通りに行かない 沢山あるでしょう
そんな時は 少し立ち止まってブラブラお買い物でもしよう”
(UNOストーリー)

“僕は僕のために そう例えば僕はそう だから 君のために君はいるんだよ”
(お人好しカメレオン)

“難しい言葉じゃわからない伝わんない
もう知ってる そんなこと だからこそ、ただ、君に届け”
(流星のスコール)

“ちょっとだけ怖いけど 大丈夫だよ ずっと譲らないから 大丈夫だよ”
(ノンフィクションコンパス)

“君が握るその何でもなさそうな想いはもう輝きだした
だからこそ今 大事な約束をしよう さあ、ワルツ・ワルツで”
(シャンデリア・ワルツ)

“今日までの感情が明日を作るから
イライラも後悔もまるごとミックスジュース”
(mix juiceのいうとおり)

“君が一人ぼっちだって手をつなげば二人ぼっちだぞティンカーベル”
(コーヒーカップシンドローム)”

“忙しい人生の隙間で 嫌になる度に 呼び出しボタン押していいから
せいぜい明日もがんばって!”
(instant EGOIST)

“他の誰も知らない方が君の秘密基地になれるし”
(フライデイノベルス)

“大事なことは 最初からある
血液みたいに体を流れて知ってるはずさ”
(誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと)

“シアワセ貯金を済ませば また奇跡的だって生きればいいじゃないか”
(オトノバ中間試験)

“席はちゃんと空けておくから 間に合わないなんてないんだよ
この高揚感は誰にも奪えない”
(Dizzy Trickster)

“三歩先をエスコート 心配ない、大丈夫さ”
(サンポサキマイライフ)

“だけどいつか 誇れるくらいには 人生はよくできてる
だから、生きてほしい!”
(Invisible Sensation)


ここまで載せた歌詞を読むだけでも、心がじーんと温かくなる。ただ、ユニゾンの数ある曲の中で、私が1番優しいと思える曲は「君はともだち」である。

“いいよ 恥ずかしがらずに 抱えた傷をちゃんと見せて
僕は受け止めるし 笑ったりもしないからね”

優しい、とにかく優しさのかたまりのような曲。最初にこの曲を聴いた時、ロックバンドがこんな曲を歌うなんて!と驚かされた。しかしユニゾンの曲の中にはこのような優しすぎる曲が沢山あるのだ。それがピッタリとハマり、寧ろとても好きだと思えるのは、斎藤くんの声質のせいもあるだろう。そして時に田淵と貴雄が優しい声でコーラスをしていたりする。こういう曲をサラッとロックバンドでやってしまうところも、今ではユニゾンの強みのひとつであると思う。


最後に、私の中で1番涙腺が緩む曲の歌詞を。

“言えなかったバイバイを優しさで そっと包んで
ふざけろ!「いつか終わる、悲しみは」
どうか忘れないでよ”
(フルカラープログラム)

そう、悲しみはいつか終わるのだ。まさに、ふざけろ!と、今の世の中に言いたい。
完全無欠のロックンロールがここにはある。
その未来にロックバンドは生きている。


ここまで並べてきた歌詞を見るだけでも、田淵が書く歌詞は優しいものが多いと改めて思う。意味不明で難解な歌詞ももちろん多いのだが、よく聴いてみると、暗闇の中に一筋の光が見えるような、そんな希望を持たせてくれる歌詞が多いのだ。
(この文章を書き終わった頃にBase Ball Bearと田淵のニコ生の対談があったのだが、歌詞について最後に光が見えるラストにしたい、などまさに同じようなことを田淵が話していて驚いた。)

そして「何かが違う」について。
UNISON SQUARE GARDENの歌詞にはユニゾンとファンの間に絶対的な距離感がある。
他のバンドはどうだろうか。ライブでのMCで熱く思いを語るバンドは沢山いる。辛くなったらライブハウスで会おうと言ってくれるバンド、自分たちは決して裏切らないことを伝えてくれるバンド、曲を聴けばファンを大切にしていることがわかる歌詞があったり、ファンとの間に深い絆があるバンドは沢山いるのだ。もちろん、私はそういうバンドがずっと好きだったし、今も好きという気持ちは変わらない。
ユニゾンと出会って、彼らのファンとの距離の取り方に少し驚いたくらいだ。SNSもユニゾンとしてはやっていないし、ライブのMCでも多くを語らない。
先述した「さわれない歌」の歌詞にある、
“近づき過ぎないで ちょうどいい温度感であれ”
この曲が、舞洲で3人のMCの後に披露されたのも、とても意味があるように感じてしまう。
「何かが違う」のひとつは、この距離感にあるような気がする。お互い、ずっとちょうどいい温度感でありたい。近づき過ぎたら求め過ぎてしまう。この距離感こそが、彼らの優しさなのかもしれない。

田淵はいつも、歌詞にそこまでの意味はないと言っている。
語感を大切にしているのもわかるし、本当に意味がないように感じる曲もある。だからこそそこに深い意味が込められているように思ってしまう。意味のない歌詞に、ここまで心を動かされるものだろうか。
彼らは優しくないけど、とても優しい。そういうひねくれているところが歌詞にも曲にも表れていて、結局人間らしくて好きなのだ。


と、ここまで歌詞について書いてきたが、実際のところはわからないのが本音だ。田淵に踊らされているこの状態が楽しくて仕方ない。

ただ間違いなく歌詞には田淵の魔法がかけられている。その楽曲たちにどれだけ救われてきたか計り知れない。本当にいつもありがとう。


ずっと楽しみに待っていたfun time HOLIDAY8の延期が発表された。
メンバーからのコメント、田淵のブログ、読んで思うことは沢山ある。
ただお互い元気に、またライブ会場で。
その日まで彼らの曲を聴きながら喜怒哀楽忙しい日々を過ごそうと思う。


“こんな時代に生れ落ちたんだ 胸張って笑える準備をしよう”

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