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なぜ、最高と言えるのか

UNISON SQUARE GARDEN初の生配信ライブを観て


これはライブレポートでも感想でもない。
「USG 2020“LIVE (in the) HOUSE”」を観て今思ったことを素直に残しておきたいだけの場所。不快な気分にさせてしまったら申し訳ない。


2020年7月15日(水)、ユニゾンが初の生配信ライブをする日。この日をどれだけ楽しみにしていたか。
忙しくなるとわかっていた7月、忙し過ぎてあっという間に15日になった。冷凍されていたフードを直前に調理していると、あっという間に10分前になっていた。

20時に近づいていく画面の時刻表示。
それが、突然消える。
そしていつものSE「絵の具」が流れる。

ここまでは、いつものライブと何も変わらない。バックヤードの映像から、メンバーがステージに移動する様子が画面に映る。これだけはいつもと違う。

私にとっては、今年初のUNISON SQUARE GARDENのライブだ。もう本当にこの日のために日々頑張ってきた。自分へのご褒美のようなライブ。

青く照らされたステージ、3人が揃う。
その光景を見るだけでグッとくる。
ライブが、始まる。


“今日までの感情が明日を作るから
イライラも後悔もまるごとミックスジュース
12時過ぎても解けない そんな魔法があっても欲しくない
早く帰って眠らなくちゃ”

「mix juiceのいうとおり」のサビの一節からライブが始まった。

すぐにわかる。斎藤くん、高い声が出しづらそう。

そりゃ去年は10本以上ユニゾンのライブに行っていたし過去のライブ映像のDVD、Blu-rayは全部買って何回も観ている。最近の斎藤くんの歌は特に最強だった。だからこそ、すぐに気付いた。気のせいであって欲しかった。

ようこそ!ではなく、おまたせ!と言った斎藤くん。そう、待ちに待った今日。楽しみたい気持ちしかなかった。
「オトノバ中間試験」もなかなかにキーが高いが、田淵のコーラスで紛れているように感じた。イヤモニの調子が悪いのかとも思ったが、「桜のあと(all quartets lead to the?)」を聴いてやはりキツそうだなと確信した。もうここから私はダメになった。

フードは喉を通らなくなってしまった。画面を心配する目でしか見れなくなった。どうしていいかわからずライブが終わるまでは開かないと思っていたTwitterを開き斎藤くんの喉を心配するツイートをして、ちょっとタイムラインを見た。


「最高!」
「神!」
「楽しい!!」


目を疑った。予想以上にタイムラインにはライブを楽しんでいるワードが飛び交っていた。私がおかしいのだろうか。たまに心配のツイートも見かけたが、みんな楽しんでいる。

高いキーが出ないだけでなく、ピッチもこんなにふらついている斎藤宏介をかつて私は見たことがない。加えていつもの自信たっぷりの微笑みさえも見せてくれない。どんどん不安になる。

そんな中でも盛り上がれる人たちが沢山いる。なんで?どうして?


なぜ、最高と言えるの?


全然最高じゃないでしょう。投票した曲が聴けたの?久しぶりに3人の姿が見れて最高って言いたいの?私には全然わからなかった。こんなに不安な気持ちで観るライブは初めてだ。もしかしたら斎藤くんの声が出なくなってしまうかもしれない、少し休み休みでもいいのではないかと思ってしまうくらい私の気持ちは闇へと沈んでいった。

田淵が序盤から笑顔を見せたり、貴雄が強くドラムを叩いてずっとニコニコしている姿には救われたが、どうしようもない不安はずっと心に残っていた。

「MCなし、UNISON SQUARE GARDENです!」
斎藤くんのコールはいつも通りだった。


ブレイク後の「きみのもとへ」は斎藤くんも調子を取り戻していたように感じた。曲調もそんなに速くない。少しほっとする。優しい表情でコーラスする田淵を見ると何だか安心する。貴雄も口ずさんでいる。あぁ、やっぱりユニゾンっていいバンドだな。


「君の瞳に恋してない」

この曲には魔法がかかっているのかもしれない。田淵と向き合う斎藤くんに笑顔が見える。ギターソロで前に出る斎藤くんはいつもの斎藤くんだ。お互いを見ながら、2人でマイクに戻る姿。

あっ、そう、この感覚。

ライブでの高揚感を少し思い出す。

そしてセッション、少し聴いたことのあるフレーズが入っているように感じる。続けて始まった「オリオンをなぞる」。去年のプログラム15thを思い出し、不安な気持ちも入り混じってここで何故か涙が止まらなくなった。

“オリオンをなぞる こんな深い夜に
僕がいて あなたがいて それだけで 十分かな”

それだけで十分、そうだ。
3人がいて、私もこのライブを観てる。
そう、このライブはそれだけでも十分だったはず。

不安とか心配とかそういう気持ちはずっと残っている。でもライブってナマモノだし、何が起こるかわからない。
斎藤くんが最後までちゃんと歌えることを祈りながら、気付けば私も斎藤くんに負けないくらい、泣きながら大声で歌っていた。


大丈夫。だって斎藤くん、すごいもの。
絶対途中でやめたりしない。
それを1番わかっているのが私たち、物好きだ。


そしてオリオンをなぞるに続いた曲が「I wanna believe、夜を行く」だった。この展開にはとにかく驚いたし思わず「アイワナー!!!」と叫んでしまった。
投票結果のランキングを見て、この曲は絶対にやらないだろうと思っていたし、田淵もB面ツアーだから仕方なくライブでやることにした、というようなことを言っていたのを覚えている。もう私の人生ではライブで聴き納めた曲だと思っていた。
それがこの並びで聴けること、こんなに嬉しいことはない。まぁ、この曲もかなりキーが高いから斎藤くんはキツそうだったけれど。あのB面ツアーでは毎回聴けたロングトーンは聴けなかったけれど、それも特別。
嬉しさと楽しさが不安を飛び越えた瞬間だった。


ライブで聴いたことのない曲が沢山聴けてどんどん嬉しさと楽しさが心と脳を満たしていく。貴雄のドラムソロは普段見れない貴雄目線を楽しめたし、セッションはやっぱりカッコいいに尽きるし、そこからランキング1位の「Phantom Joke」に繋げるところ。本当に最高じゃん。

そう、ユニゾンのライブには常に最高が散りばめられている。


「箱庭ロック・ショー」、ずっとライブで聴きたいと願っている曲のひとつ。向かい合う3人に心が躍る。もうこの時には部屋でノリノリで歌い、踊っていた。やっぱりライブっていいな。感じるのは、命が歌い出す高揚感。

私が1票を投じた「フルカラープログラム」。貴雄のドラムから始まるこの大好きな曲をラストに持ってくるなんてずるい。控えめに言っても最高。
斎藤くんのアカペラ、全然大丈夫じゃん。自信満々に歌うその姿、カッコいい。

“ふざけろ!「いつか終わる、悲しみは」
どうか忘れないでよ”

このフレーズでライブを締め括るなんて、最高過ぎるでしょう。


誰もいない客席が映し出される。斎藤くんの声と客のいない席以外は本当にいつものユニゾンのライブだった。それは彼らがいつも煽らないからなのか。他のバンドの配信ライブであった、メンバーのカメラ目線が増えるとか、いつもより沢山MCをするとか、チャットに答えるとか、そういうのは一切せず、ユニゾンはいつも通りのライブをした。

そしてそれが、物好きにとっては1番嬉しいことで、最高。


ここでライブは終わりですと告げた斎藤くんがサラッと報告したのは、ニューアルバム「Patrick Vegee」の発売日だった。
そしてこんなに高い声だけ出ない日は初めて、と話した。そんな斎藤くんにすかさず貴雄がフォローを入れる。ユニゾンのこの関係性が本当に好きだ。
斎藤くんから高い声が出なかったということを聞けて良かった。それを隠さずに話せるというのは大事なことだと思う。いいライブだったと語っていたが斎藤くんは本当に悔しかっただろう。きっと彼のことだから、次の生配信ライブは完璧に仕上げてくると思っている。UNISON SQUARE GARDENはこんなもんじゃない。いつも最高を更新してくれるバンドだ。次は魂込め込めのハイトーンボイスを聴かせてくれるだろう。

そしておまけでアルバムの曲「弥生町ロンリープラネット」まで披露してくれて、その最後の歌詞“春が来る”から繋がる「春が来てぼくら」まで聴かせてくれるなんて、本当に最高。

エンドロールのリハーサル風景と春が来てぼくらのインストにまた泣かされる。生配信ライブ、とても良かった。画面の前でまたワクワク出来る。次の楽しみをすぐに手渡ししてくれるユニゾンは、優しい。

“今日の感情が明日を作るから”

というフレーズから始まったこのライブ。
物好きの明日は、間違いなく楽しい1日になるだろう。


今アーカイブを観て思い返せば、田淵も貴雄も最初から何も心配しちゃいなかったんだと思う。2人がどっしりと構えているから安心できる。もしライブの中で田淵と貴雄が少しでも不安な表情を浮かべている瞬間があれば、観ている側は更に不安になっただろう。斎藤くんも、辛そうなシーンは何回もあったものの、最後の最後まで歌い切った。思い返せばライブ中、斎藤くんも不安な表情は見せていなかったのだ。真っ直ぐ前を見て、魂を込めて歌っていた。高い声だけ出ないという過去になかったハプニングに動揺してもおかしくないはずなのに、歌詞は一切間違えず、ブレずにギターを弾き、表情にも出さなかった。
箱庭ロック・ショーで3人が見せた笑顔に心から安堵し、改めてUNISON SQUARE GARDENが好きになった。そして3人の信頼関係を深く感じ取ることが出来るライブだったと、今は思う。
そしてそれを即座に感じ取って楽しめるファンが沢山いることも。
私はまだまだだ。でも、
「今夜のライブも最高ですわ!!」
やっと、言える。


なぜ、最高と言えるのか。
UNISON SQUARE GARDENが3人揃って音を出し、ただ普通に良いライブをする。
その事実だけで、最高なのだ。ライブの途中で、気付けて良かった。いや、当たり前のように気付かされた。

高い声より、大事なのは魂の込められた歌声。

2020.07.15
「USG 2020“LIVE (in the) HOUSE”」
セットリスト

SE.絵の具
1.mix juiceのいうとおり
2.オトノバ中間試験
3.桜のあと(all quartets lead to the?)
4.きみのもとへ
5.君の瞳に恋してない
6.オリオンをなぞる
7.I wanna believe、夜を行く
8.スカースデイル
9.静謐甘美秋暮抒情
10.mouth to mouse(sent you)
11.ドラムソロ〜セッション
12.Phantom Joke
13.to the CIDER ROAD
14.場違いハミングバード
15.シュガーソングとビターステップ
16.箱庭ロック・ショー
17.フルカラープログラム

おまけ
18.弥生町ロンリープラネット
19.春が来てぼくら

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