2021年12月31日 「fun time COUNTDOWN 2021-2022」


2年連続で大好きなバンドのライブを観ながら年を越せる。2021年の大晦日、またUNISON SQUARE GARDENは配信ライブをすることを発表した。しかも2マンである。その相手が女王蜂。音楽のストライクゾーンが狭い私は、もちろん名前は知っているが聴いたことも観たこともないバンドだ。アヴちゃんというボーカルの存在しか知らない、その程度だ。

配信ライブが決まってから田淵とアヴちゃんの対談があり、それを見てライブへの期待が更に高まった。特に気になったのがセットリストの話である。

その後田淵はブログで、

"お互いライブのセットリストには異常なこだわりがあって、話しているとそこが嬉しい。
女王蜂のライブのセットリストには必ず文脈がある。
それにひっぱられてやったことないセットリストの組み方をしてしまったよ。


そこにははじめた理由があって、
そこには生きてく理由があった。"

なんてことを書いていたのでセットリストが気になって仕方なかった。セットリストを考える際、歌詞の繋がりなどは考えないと話していた田淵(これは実際どうなのだろうか?)。歌詞の深読みはしないが、セットリストの深読みは興味がある。


そうして気付けばあっという間に大晦日、時計は22:30になりUNISON SQUARE GARDENと女王蜂の配信ライブは始まった。

※若干ではあるが開催中のTOUR 「Patrick Vegee」のネタバレとなる部分がややあるので参加がこれからの方はご注意を。


フロアに向かい合わせでそれぞれのバンドのセットが組まれている。UNISON SQUARE GARDENと女王蜂のメンバーがそれぞれ対角から同時に登場。斎藤くんとアヴちゃんがすれ違う瞬間の足元が映されたのにはドキッとした。なんという素敵な演出。

斎藤くんは黒地に赤紫のシャツ、田淵は黒いアインシュタインのイラストT、貴雄はPatrick Vegeeツアー中盤でお披露目された新しいSTOFのパーカー。


お互いが向かい合ったバチバチの状態で1曲目を飾ったのはUNISON SQUARE GARDENだった。貴雄のカウントから始まったのは「Catch up, latency」。今開催中のTOUR 「Patrick Vegee」のセットリストからは外されたアルバム曲。ここで聴けることがまず素直に嬉しい。爽やかな白と青の照明で比較的明るくメンバーの顔がよく見える。
"満を持す絶好のカウントダウン"
という歌詞が入ったこの曲から始まったことにドラマを感じつつ、
"君も傷ついてきたんだね それならその合図で反撃してやろうじゃない"
女王蜂と一緒に今の音楽シーンに対して反撃を開始する、ユニゾンの意志表示のようなそんなライブの始まり。

3人が向かい合い音を合わせた後、斎藤くんが溢れんばかりの笑顔で「fun time COUNTDOWNへようこそー!」と。その斎藤くんを見ていた物好き達も笑顔になったであろう、その空気をガラッと変えてきたのが女王蜂だ。

普通の対バンライブと言えば先攻、後攻でバンドが入れ替わり行われるものだが、配信ならばやり方は更に自由になる。まずこの発想に驚かされた。

ユニゾンが1曲披露し、続いて女王蜂のターン。
いつも大体、対バン相手の曲は少なからず聴いてからライブに臨んでいたのだが今回は女王蜂というバンドを全く何も知らない状態で観ることにした(年の瀬で時間がなかったこともある)。
ステージに立っているだけでアヴちゃんの存在感が凄い。他のメンバーも白い衣装で統一されていて、派手なメイクがとても素敵だ。

背中を向けていたアヴちゃんが少しずつ振り返りながら歌い始めた1曲目は「雛市」と言う曲。歌詞が結構リアルで仄暗い雰囲気。その曲を体現するアヴちゃんの姿。凄い。
アヴちゃんの凄まじい低音からのハイトーンボイスに目が離せなくなる「火炎」。それだけでなくステージで踊るアヴちゃんはとても綺麗だし、早口がすごい。ギターのフレーズが好き。
アヴちゃんが妖艶な笑みを浮かべ始まった「夜天」を1番だけ披露した後そのまま「BL」へ。アヴちゃんは本当に色々な声色を出す人だ。
"ねぇ、こんなとこにピアス"
拾って飲み込む仕草にドキッとさせられる。


続いてユニゾンのターン。この2バンドの音楽性が全く違う事を改めて示すように突然始まった「君の瞳に恋してない」。この楽しくて最高にハッピーな雰囲気。メンバーが向き合って笑顔になっているのを見るとこちらまで楽しくなる。

"君の瞳に恋なんてしてはないけどわかる
大事なもの失った時 壊れちゃってしまってしまった気持ちは
虹色に光る幸せ そんなものがなくても
小さじ一杯のカラクリが生み出せるもの"

そんな小さじ一杯のカラクリのようなこの曲。先程まで女王蜂が作り上げたダークな空気を一気に変えてしまう。そしてこのいつもの雰囲気に何となくほっと安心してしまう。やはりユニゾンは私のホームなのだ。最後はセンターにいた田淵を覗き込むように斎藤くんが近づいて行く。

この年の瀬に聴けてとても嬉しかった「シャンデリア・ワルツ」。シンプルな白い照明で照らされるそのステージに奏でられた歌と音楽は何よりも輝いていた。

"suddenly 時には涙を流すだろう
感情は何通りもあるけど ただ 自分のためでいい"

"徐々にスピード上げる季節の中 少しだけでいいから 見つけてみて
自分の心を加速させる様な確かな事"

シャンデリア・ワルツの歌詞にはいつも救われてきた。何よりも自分を大切にしろ、と言ってくれるようで。
"世界が始まる音"で胸をトントンと叩く田淵を始め斎藤くんも貴雄も目の前にいる女王蜂に向けて、最大限に想いをぶつけようとしているように見えた。

そして次に演奏されたのが予想外の「cody beats」だった。少し前の田淵のブログから察するにもうライブで披露する気はない曲なのかと思っていた。ギターを弾きながら優しい顔をする斎藤くん。

"セロファンのテープで貼り直した 歪なボーイミーツガール" それがこの後、
"何事もどうにもこうにも 歪んで繋がっていく" ことになるとは。

"この足で そう 歩き出す 思いのスピードで 君の待つ場所へ"
この曲は、確実な方向へユニゾンが歩き出した曲なのかもしれない。

さっきまでの妖艶な女王蜂とは完全に対比したターンだった。これがUNISON SQUARE GARDENのライブだ。

貴雄のカウントで女王蜂の「催眠術」が始まる。
アヴちゃんがコートのボタンを外し、そのコートを翻しながら歌う姿が色っぽくて素敵。
「ありがとう」と言ったアヴちゃんがコートを脱いで「KING BITCH」へ。アヴちゃんのスタイルの良さに驚くのだが、その手脚の長さを最大限に生かして歌い踊る姿、そして曲終わりに見せた表情が最高にカッコよかった。
そしてアヴちゃんの雄叫びから始まった「P R I D E」。アヴちゃんだけでなくベースのやしちゃんも歌いながら煽る。

アヴちゃん「ありがとう。UNISON SQUARE GARDEN、誘ってくれてどうもありがとう。いくよー!」目の前のユニゾンに向かって伝える。
そして始まったのが「HALF」。この曲、1番好きだ。女王蜂のメンバーも向かい合い楽しそうにしているのが伝わってきた。


そして細かく刻まれるギターの音、カメラが映す映像は女王蜂からユニゾンへと移動。ここから始まる曲は何だろうか…ドキドキしながらこの曲のイントロへと流れていく。「Own Civilization (nano-mile met)」。1台のカメラを使いモノクロで映された映像がこの曲にとても合っていて、カッコいい。

"ここらでぐらつかせてやろう
有体たる流れを変えてやろう
ほら僕と君とで遊んでやろう"

まさに歌詞の通り、ぐらつかせて流れを変えてきた。先程のターンとはガラッと違うユニゾンの一面を見せつける。

続いて「パンデミックサドンデス」へ。イントロの途中でモノクロだった映像がカラーへと変化し青と緑の照明がわかるように。音と照明が完全にリンクしていて最高にカッコいい。

"ああ全部全部意味わかんない君のその哲学がわかんない
この人生は解釈が多すぎて
どの道選んでもきっと 生き抜くことが難しい
じゃあ全部全部マジわかってるフリだって構わずに笑って
なら僕は異常だって構わない!"

この対バンでこの曲を演る理由、この歌詞が全てを語っているように思う。

Revival Tour "Spring Spring Spring"で付け加えられていたセッションをそのままに、貴雄がスティックで斎藤くんを指して始まる「マスターボリューム」。田淵とアヴちゃんの対談でアヴちゃんが最もお薦めしたい曲として挙げられた曲だ。田淵が動き回り、貴雄が激しくドラムを叩く中であまり動かずに歌う斎藤くんの睨むような視線がカッコいい。赤い照明が最高に似合う。
1番が終わった後のベースのメロディーの部分で貴雄が後ろから田淵に向けてリズムを取りながらスティックを振る姿が。最後は3人が向かい合い音を合わせて終わった瞬間に暗転。

"何が正しくて、何が間違っているのか
全部わかんないが、問題ない"

アヴちゃんが言っていた通り、ずっとユニゾンは変わらずにこのことを歌っている気がする。そんな大好きな曲をこのライブで聴けて本当に嬉しい。

先程のターンとは打って変わり、ロックなユニゾンのターン。全体的にピントを合わせないカメラワークが多いように感じた。


そんなユニゾンのマスターボリュームを受けて、アヴちゃんが不敵な笑みを浮かべる。そしてしゃがみながらラララ…と綺麗な歌声で歌い始めた「Q」。そして、続く「十」ではやしちゃん、ルリちゃん、ひばりくんのコーラスがアヴちゃんの歌声に絡み合うように重く、深く響き合う。どちらの曲も痛々しいくらい曲を体現するアヴちゃんの表情。曲が終わった瞬間の十字に光る照明が目に焼き付く。
「今年最後の曲です。」というアヴちゃんの一言から始まったラスト「Introduction」。田淵が女王蜂の中で最もお薦めしたい曲として挙げていた曲。

"黒白黄色 その奥の虹色
まぁ色々あるけど
行く先は ばら色"

田淵が好き、と言う曲だ。やはり最後は歌詞も含め、光が差して明るい空気で終わった女王蜂のライブ。

私はリアルで直接的な重めの歌詞を書くバンドが苦手で、どちらかと言えばアヴちゃんの書く歌詞はそちらに当てはまる。どうしてもその負の感情に引っ張られてしまう癖があるので初見では目を背けたくなり、正直しんどい気持ちになってしまった。それを忘れさせてくれるくらい、アヴちゃんをはじめ他のメンバーが熱いパフォーマンスをしていても。
しかし、改めてアーカイブを観ると女王蜂のライブの凄さに圧倒された。曲が苦手とかそういうのを抜きにして、バンドで世界観を表現している姿は単純にカッコいい。何だかまた観たくなってしまい、アーカイブは何回も見てしまった。
最初はリアルな歌詞の重さやアヴちゃんをはじめ女王蜂の作り出す仄暗い雰囲気が少し怖いと感じてしまったが、ライブがカッコいいバンドはやはり惹きつけられるものがある。何回も観るうちに曲にも引き込まれるようになった。女王蜂もかなり攻めのセットリストだったのかもしれない。まさに芸術的なパフォーマンス、素晴らしいライブだった。

ライブが終わった女王蜂の上からカメラがそのままユニゾンのセットを流れるように映し出し、最後のユニゾンのターンへ。まず、ドラムソロとセッション。楽しそうにドラムを叩き、たまにカメラ目線で笑顔を振りまく貴雄の姿にまた一安心。ドラムソロ終わりに投げキッス。サービスが凄い。
立ち上がった貴雄、3人で音を合わせ「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」へ。"5678"で斎藤くんがアップに。
"ワタシドコ ココハダレ ダアレ?"
と言うのはここでは女王蜂へのメッセージなのではないかと斜めに見てしまうくらい。意味がない歌詞だからこそ。最後に、
"存在で10点満点!!!"である。最高。

そして「シュガーソングとビターステップ」へ。イントロで田淵がカメラ目線でポーズを決め、その後"見失えないものは何だ?"で斎藤くんもカメラ目線で微笑みをくれたり、貴雄も笑顔が多いし田淵もめちゃくちゃ笑っているし幸せが溢れている。生きてく理由、それはきっと、

"鳴らし続けることだけが
僕たちを僕たちたらしめる証明になる、QED!"

この歌詞に尽きる。
cody beatsの"セロファンのテープで貼り直した 歪なボーイミーツガール"がCDのジャケットになっているこの曲を組み込んでくる所、最高。

斎藤くんが「良いお年を」と言って始まったのは「センチメンタルピリオド」。ユニゾンのカウントダウンと言えばやはりこの曲なのだ。後ろからの照明で全体的に暗い中、ぼんやりと浮かび上がる3人が向かい合い音を鳴らしている姿、この始まりが大好きだ。
ギターソロでセンターに出て来た斎藤くん、途中で田淵がそこに駆け寄ってきた。貴雄は本当に笑顔を絶やさない。
両腕を上げやり切った表情の田淵、貴雄と斎藤くんは向かい合いバチバチに音を鳴らしている。最後の音を合わせて鳴らした瞬間に気付けば日付が変わり、年を越していた。

女王蜂の日本武道館公演のアナウンス、そしてUNISON SQUARE GARDENの2022年の活動計画が発表される。

2022年4月に「fun time HOLIDAY 8」、夏に全国ツアー「kaleido proud fiesta」の開催。嬉しい。また今年も沢山ライブに行くことが出来る。何よりも嬉しい。


田淵が全力で考えたセットリストを、UNISON SQUARE GARDENがバチバチの音を鳴らして女王蜂にぶつける、そしてそれを女王蜂がユニゾンに返す、それぞれめちゃくちゃ熱量の高いライブだった。しかしセットリストの文脈について考えてはみたものの結局よく分からずじまいだった。

ただの陽と陰の対比ではない、それぞれのバンドの持ち味、最強な部分を照らし出しお互いを高め合う対バンだったように思う。ユニゾンと女王蜂は、音楽の方向性は相反するバンドだけれどそれを利用して交互に演奏する形を取ることで調和に結びつけたのだろう。もう少し女王蜂の歌詞を紐解ければセットリストの文脈を理解出来たのかもしれない。

田淵のブログより
、
"ロックバンドなんてわかりやすいものにここまで執着するのはそういうことなの。
それ見てる間に年越せるなんてすごいことだと思わないか。
そして2022年も派手に進んで行く。それもすぐ話すよ。
楽しいは尽きないね。"

尽きない楽しみを、いつもありがとう。


2021.12.31
セットリスト

1.Catch up, latency

女王蜂 1.雛市
    2.火炎
    3.夜天
    4.BL

2.君の瞳に恋してない
3.シャンデリア・ワルツ
4.cody beats

女王蜂 5.催眠術
    6.KING BITCH
    7.P R I D E
    8.HALF

5.Own Civilization (nano-mile met)
6.パンデミックサドンデス
7.マスターボリューム

女王蜂 9.Q
    10.十
    11.Introduction

ドラムソロ〜セッション
8.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
9.シュガーソングとビターステップ
10.センチメンタルピリオド




























ユニゾンのファンクラブ「UNICITY」ではこのカウントダウンライブに加えて新春ミニライブで3曲観ることが出来た。詳しくは触れないが、セットリストだけこっそり載せておく。


"新春ミニライブ" セットリスト

1.ラディアルナイトチェイサー
2.何かが変わりそう
3.I wanna believe、夜を行く


"ラディアルナイトチェイサーが 僕らの日常を壊してく
壊れたら創っていく解析は一生続く Oh NO"
まるで今の世の中を歌っているような曲から。

"何かが変わりそうな夜だ"
"ふいに響く誰かの声 他でもない優しい声でした
「一人だけど 独りじゃない」鮮やかに 鮮やかに"
この瞬間から何かが変わっていきそうな。

"君は君のままでいて 僕は僕の王冠を! 快進撃なら、もうそこまで?"
「TIGER & BUNNY」への感謝の気持ちを込めたスピンオフ的なこの曲を最後に。

最高のセットリストに感謝。

2022年、UNISON SQUARE GARDENは動き出した。まずはまだ続いているTOUR 2021-2022 Patrick Vegeeを余すことなく楽しみたい。

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