性的不能の男 4
夫は外資系企業の営業マンで、帰宅時間は遅い。
土日祝日も展示会などのイベントで出かけるので、ゆっくりと話す時間は少ない。
その日、夫はいつもより早く帰宅し、珍しく穏やかで、いつもなら文句の為の言いがかりをつける食事にも黙って手をつけていた。
「あのね、婦人科へ行くって言ったでしょ。それで…」
私の言葉を封じるように夫が暴言を放つ。
「お前、医者とはいえ、見せびらかしてきたのか?
よく平気で脚を広げられるな。
好きだな、お前。
それで、触らせたのか?」
卑しく笑う。
喜び勇んであの診察台に乗る女性はいないと思う。
どこまで堕ちた男なのか、私の夫は。
私は強引に切り出した。
もうどうでもなれという気持ちになっていた。
「先生が御主人と一緒にいらっしゃいって。」
「どうして?」
「あなた子供が欲しいって言ってたでしょ?できれば女の子がいいとまで言ってたじゃない」
「で、どうして俺も行かなきゃいけないんだ?」
「いまは、子供を作るのに色々な方法があるから御主人と一緒に…」
夫がテーブルの上の物を払い落とした。
「お前、まさか俺の事を医者に話したのか?!」
夫の顔が赤くなったり青くなったりするのを、私は呆然と見ながら言った。
「私だって子供が欲しいし、年齢的にも急がないと」
「お前、よくもそんな事を他人に話せたな!何を考えているんだ?!
よくもよくも恥をかかせやがって」
激怒した夫が玄関を飛び出し、車のエンジンをかける音を聞きながら
恥、か….
と私は呟いていた。
婦人科へ行ったんだろ?具合はどうなんだ?
と、先ず訊いて欲しかった。
望むべくもないことは、とうにわかっていた。
前もって、子供を望むなら一度病院で相談しましょう、
と言ったところで、結果は同じ。
私にはわかっていた。
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