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これは僕と妻との運命の話

僕が地方に転勤になって仕事をし始めて1年が経ったころ,その地方が出している都内のアンテナショップでセミナーをやることになった.
「どなたか呼べる方っていますかねー?」
という主催者の言葉に,過去の名刺を見返す.
この地に住んでいて,しかもセミナーの内容に興味がある人かぁ,と数名をピックアップしてエクセルファイルで送付.
「このくらいしかいないですねぇ,すみません」
そう言って送っては見たものの,名前を見ても誰が誰だか顔と名前は一致しないものだ.名刺なんて所詮そんなものかもしれない.

セミナー当日.
見たことがある人,初めて見る人,主催者のチラシのお陰で結構な人数が集まる.
開始5分くらいで一人の綺麗なスーツ姿の女性が入ってきた.まぁこういうセミナーでは遅刻する人も少なくはない.さっと会場を見まわし,空いている席へ...
一番前!おぉそこに来たか.
その女性は一番前にさっと座り,筆記用具を出してノートを取り始める.熱心なお方だ.

セミナーは滞りなく終わり,講師の私はとりあえず質問に来た方とお話をしたり,知り合いにご挨拶をした.さっきの女性は...とみるとまだ席について何かをメモしている.とりあえず,と名刺交換へ.
名前を見て,私がエクセルファイルに書いた人の一人だということに気が付いた.
「どこかの展示会とかでお逢いしてますかね?」
「いや,してないです.」
あれ,そうですか.名刺を持っているということはどこかで交換している気がしたんだけどな.
若干の疑問が頭を過ぎったが,私も名刺をどこでもらったかも不明だったので気にせず.改めてご挨拶をさせてもらい,その後何回かのディスカッションを経てなんだかんだと一緒に仕事をすることになった.

いたって普通に仕事をしていた...つもりだったのだが,僕はどんどん彼女の魅力に引き込まれていった.気が付けば一緒にご飯をしたりする仲になっていった.

年の初め.一緒に初詣をしようということになり,都内の有名な神社に行ったが,なぜかその帰りに彼女のお家に呼ばれる.まぁいっかーと気楽に(内心はドキドキしていたけど)向かった先には彼女のお姉さん家族もいたりして.当然お姉さんの旦那さんもいて,蚊帳の外感がある男子二人で盛り上がっちゃったのは言うまでもない.
「もう泊っていけば?」
と彼女のお姉さん.
「え!?本当ですか!?」
まさかの展開.彼女はその時「え!そこは帰るでしょ.」って思っていたというのは後から聞いた話だ.まだ正式に付き合ってもいない彼女の実家に泊まるというのもなかなかのレア体験だとも思うが.

なんだかそんな風に周りに巻き込まれながらも僕は無事に(!?)彼女にプロポーズをした.
「前向きに考えます.」
というOKなのかなんなのか分かりにくいお返事をいただいたが,付き合ってから1か月もしないうちにプロポーズをして,10か月後には結婚式を挙げていた.なんというスピード婚!!

結婚半年で彼女が海外に1年仕事に行ってしまったり,まぁ普通の新婚さんにはないようなこれまたレア経験もしたけど,今は二人の子供にも恵まれ,バタバタだけどそれなりに楽しい毎日を送っている.

とまぁそれは置いておいて.
彼女との運命を感じたお話.

出逢った(と思っていた)ときは名刺だけ持っていたにもかかわらず,お互いの記憶にない状態.
その後色々お話をしていくと,どうやら地方に転勤になる前,僕が世話になっている人から転勤先にいる彼女を紹介してもらっていたらしい.しかも結構なイベント会場で.まぁだから忘れてしまったのかもしれないけど.その一枚の名刺があったお陰で今の関係があると思うとなかなか感慨深いものがある.

もっと言うと
実は学年は違っていたけど彼女と同じ大学だったようで.1階と2階というかなり近い位置にいて,共通の友達もいるのに本人のことだけは知らなくて.
でも結婚した後にふと彼女の卒業式の日の写真を見て驚いた.
「僕じゃん!!!!」
にっこり笑った彼女の写真の後ろに,ばっちりこっちを向いている僕が!

ちょっとしたお惚気だけど,これはきっと僕らにしかないレア体験だと思う.
なんというかレア体験の連続で彼女とこうして生きているけど,なんだかんだと僕と彼女は運命の赤い糸で繋がれていたんだなと.

きっと人と人との繋がりなんていくつもの偶然がないと生まれないものだし,そう考えると今の僕はレア体験で成り立っているような,そんな気がするよ.

#私だけかもしれないレア体験


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