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安全保障輸出管理の制度とチェックリストの活用

1日本の安全保障輸出管理の制度

主に日本の安全保障輸出管理には、2つの制度があります。1つは、炭素繊維や数値制御工作機械などの貨物や技術を輸出しようとする場合です。この場合、経済産業大臣の許可を必要とします。この制度をリスト規制といいます。リスト規制には、武器、コンピューター、原子力、通信関連、化学兵器、センサー・レーザー、生物兵器、航法関連、ミサイル、海洋関連などがあります。

2つめは、リスト規制に該当しない貨物や技術を輸出しようとする場合です。この場合、一定の要件を満たした場合、経済産業大臣の許可を必要とする制度です。これをキャッチオール規制と呼んでいます。リスト規制品に該当しないものの輸出や技術の提供を対象にして、その用途と需要者の内容に基づき、大量破壊兵器や通常兵器の開発などに使用されるおそれがある場合に規制を行います。

なお、この規制はすべての国が対象ではありません。ホワイト国にあたる優遇対象国は輸出貿易管理令の別表第3に指定された27国でしたが、韓国の除外により、ホワイト国という通称はなくなり、AからDの4つのグループに分けられることになりました。グループAには、アイルランド、イギリス、イタリア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、ルクセンブルク、アメリカ合衆国、アルゼンチン、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの国々が指定されています。グループAの国々は、キャッチオール規制の対象外となり、グループAを仕向け地とする一定の品目を包括的に許可を受けられるようなメリットがあります。

一定の要件とは、インフォーム要件又は客観要件として、定めています。インフォーム要件とは、経済産業大臣から許可を申請すべきであると事前に通知(インフォーム)を受けた場合に、許可申請が必要となる要件です。客観要件とは、用途要件と需要者要件があります。用途要件では、大量破壊兵器等や通常兵器の開発等に使用される恐れがあるかを確認します。需要者要件では、需要者や技術の利用者は核兵器等開発等の開発を行っているかなどを確認します。

2チェックリストの活用

安全保障貿易管理のツールの一つとしてのチェックリストの活用について、お話しします。

安全保障貿易の日々の業務では、どのような事項において、会社が気を付けるべきかをチェックリストにして整理することは有効です。ここでは、チェックリストの主な項目について、解説します。

当該チェックリストには、①自国の輸出管理法の把握、②特定国との取引禁止、③米国再輸出規制の把握、④輸出管理体制、⑤該非判定、⑥用途チェック、⑦需要者チェック、⑧代理店販売、⑨取引審査、⑩輸出許可申請、⑪出荷管理、⑫監査、⑬報告、⑭違反等に対する措置、⑮罰則、⑯社内規程、⑰教育訓練、⑱記録管理などの項目です。

それぞれの項目で具体的にどのようなことを整備すべきかについて、お話しします。

①自国の輸出管理法の把握の項目では、規制を受ける輸出管理法を把握し、社内規程やマニュアル、業務フロー等が整備されているかを確認します。

②特定国との取引禁止では、当該業務を禁止する社内通達や取引国明細等が整理されていることを確認します。

③米国再輸出規制の把握の項目では、再輸出等において、米国製部品、製品、技術、ソフトウェアの再輸出品(EAR規制対象品)の有無を確認しているかを確認します。なお、EARとは、Export Administration Regulationsと呼ばれる米国の輸出管理規則です。EARは、米国原産品目を規制していますが、それらの品目が世界中のどこかに輸出される場合は、法の規制対象になります。

④輸出管理体制の項目では、営業部門が需要者・用途を確認、技術部門が製品・技術を該非判定、物流部門が輸出許可証有無等を確認するなど、安全保障貿易体制を機能させるための役割分担が明確な組織体制になっているかを確認します。

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