どろどろぽとん

この間久しぶりに事務所へ出社した。
実に1ヶ月ぶり。
遠方から偉い人たちが来るから仕方なく。必要に迫られて。

偉い人たちに口々に言われる。

えらい雰囲気変わったな
痩せた?
どうした?
元気ないな


私を心配して気遣ってくれて言った言葉だってわかってる。わかってるんだ。
でも放っておいてくれ。
関係ないだろ。お前らに。
相手への怒りではなく、そう感じさせてしまう自分自身への不甲斐なさに、そんなことを言ってしまいそうなのを堪えてのらりくらり。

いろいろあって〜人生ですよね
そう、痩せたんですよ!
髪型変えたからですかね
元気ありますよ、一人でわーわー言ってたら変でしょ

なんて口にする。
お前たちになんか理解できないだろ、わたしの状況を。考えていることを。順当に、着実に、レールに乗って生きてきたお前たちに。

関係ない。言う必要もない。
どうかわたしの様子に気付いても、気付かないで。

お前たちが求めているのは、私の役割は、元気で明るくて仕事ができて、ときに毒舌を吐いて、偉い人に向かって率直な意見を言うわたしだろ。
その役割にわたしの感情なんて関係ない。関わらせない。


気持ちを押し込めて、あっけからんとした様子で言う。

まあまた飲み行きましょ!
ところでこれってどうなったんですか?


わたしの気持ちを嘘で塗り固めて、わたしの気持ちごと勘違いさせるんだ。自分自身でもどれが本当のわたしか分からなくするために。それでいいんだ。

放っておいてくれ。
辛くても迷惑かけないから。
わたしはわたしでゆっくり死んでいくから。
求められたわたしを演じるから。

どろどろした気持ちがゆっくり頭から流れて伝わってくる。ぽとん。ぽつん。
流れては止まらなくなって、わたしを覆っていく。

覆われていく。



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