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三毛縞斑を好きだった時のこと

三毛縞斑の誕生日だけど、三毛縞を祝うための何かができるわけでもなく、今はそもそも三毛縞をメインの推しとしているわけではないので、三毛縞を一番に好きだった時のことを振り返りたいと思う。今ジャニオタとして生きていて、あんさんぶるスターズから少し離れたからこそ今冷静になって考えられることもある。

私が三毛縞斑を一番に好きだったのは3年半ちょっと、あんさんぶるスターズの歴史は2015年からなので短いといえば短い期間なのだと思う。でも三毛縞は私にとって大学受験から大学3年ごろまでを費やした大事な存在で、初めて同担拒否の感情をはっきり抱いた人で、恋に近い感情を抱いた人だった。

あんさんぶるスターズを始めたのは受験期、高校三年生の4月のことだった。本当に受験勉強を真面目にやれでしかないけれど、その頃はちょうどコロナ禍でオンライン授業ばかりの時期で、私はかなり気が滅入っていた。今でこそインドア派だが当時は体育会系の部活で、学校に毎日行くのが楽しいタイプの学生だったから、家でただこもってオンライン授業を聞いて勉強する毎日が憂鬱でしょうがなかったのだ。その時たまたまあんさんぶるスターズを薦められて始めたのだった。オープニングムービーを見た時から一人だけひとりぼっちでアイドルをしている人がいて、その異端さに目を惹かれた。それが三毛縞斑だった。私はチュートリアルでも初めから三毛縞を選び、三毛縞をセンターに据え置いてゲームを進めた。

本気で三毛縞に「落ちた」と感じたのは、おそらくメインストーリーを読んだ時だろう。三毛縞斑は作中唯一のソロユニットとして活動していて、そのカリスマ性やフィジカルの強さから周りに「怪物」と呼ばれ恐れられていた。私はその三毛縞の圧倒的な強さが気に入っていた。三毛縞はメインストーリーで「主人公」とされていたグループを厳しい言葉で叱咤しながらも指導するような役割を果たしていた。メインストーリーの後半、ある問題をめぐりフェスにいるアイドルファンが怒りで暴走するシーンがある。その時三毛縞斑は颯爽とステージに現れ、こう言うのだ。
「俺は『MaM』の三毛縞斑! アイドル業界のはぐれ者! ESを流浪する無法者!(中略)全力で! 全員に手を差し伸べるのは無理でも、せめて俺の手の届く範囲にいる人々は守る! 助けるっ」
※MaM:三毛縞斑のソロユニット名
※ES:作中のアイドルが所属する企業の名称
そして三毛縞は見事ファンを視線を惹きつけパフォーマンスをこなす。このストーリーもシチュエーションもフィクションでしかなく、そもそも三毛縞斑も実在しない。それでも作中で描かれる三毛縞は頼れるアイドルであり、自分の主張を貫いて戦う人間であり、一人の生きている「人」だった。私は三毛縞斑の強さや孤高さ、アイドルでいる時の明るさに惹かれ、大好きになった。

そうして三毛縞の過去のストーリーを読み進めるうち、三毛縞のさらなる強さや苦しみ、アイドルとしての魅力を知り恋をした。ここで言う「恋」は恋人になりたいというものも含まれているが、それ以上に彼の内面や人生をもっと知りたいという感情が強かった。三毛縞が何を考え、どんなふうに生き、どんなアイドルになっていくのかをずっと追い続けて知って行きたかった。

しかしその年の八月、彼に関してある発表がなされ界隈はざわめいた。
三毛縞はソロユニットのアイドルとして活動している。あんさんぶるスターズはソーシャルゲームのためユニットごとのイベントが存在し、それは年ごとにローテーションで行われる。その都合上、「ソロユニット」だと毎年彼だけハイレアのカードや彼が中心の新曲が出されることになり不公平な状態になる。多分それが理由だったのだろう、突然三毛縞斑は別のユニットの一人と「臨時ユニット」を組むことになり、二人でのユニットとしてイベントが開催されることが告げられた。そして二人のイベントが行われ、終わり、ゲームにメンテナンスが入った後、大好きなソロユニットの存在が告知なしに抹消された。公式サイトからもゲームのキャラ紹介からもソロユニットの説明やロゴが消去された。

私はそれに対してめちゃくちゃ怒った。そもそも三毛縞が唯一のソロユニットとして活動し続けているのにはそれなりの理由があることがストーリーで判明していたし、そこには深い信念があった。そして三毛縞がその強さで「怪物」と恐れられていることは上記に書いたが、三毛縞はそんな暴力的とも言える強さを、アイドルとして使うことで人を笑顔にしようとしていた。でもその二人のユニットは問題のあるプロデューサーを抹殺するために作られたユニットで、三毛縞は己の暴力性を使ってアイドルをしながら人を傷つけることに使っていた。(ここでは「抹殺」みたいな変な話なのは置いておく。あんさんぶるスターズは裏社会だの戦争だの暗い話題が普通に関わってくるため)三毛縞がアイドルとしては使おうとしていなかった凶暴性を使うような展開にしたこと、そもそももとあるソロユニットを抹消したこと、そしてそんなことを考慮せずにソロユニットの三毛縞斑という存在を生み出したことへの怒りがずっと収まらず、私は他のキャラクターやオタクに当たるようになった。多分、同担拒否に近くなったのもその時だ。三毛縞の隠れた優しさや強さが大好きだった私は新しいユニットを肯定できる同担を嫌悪して、自分と意見の違う同担をシャットアウトするようになった。

思えば怒りを感じた時点で私は求められている顧客ではなかったのだろう。その時に止めるべきだったのかもしれない。でも私は怒りながらも三毛縞自体のことは大好きなままだったし、三毛縞の生き様をまだ追い続けたいと思っていた。だから3年間(多分)三毛縞を追い続けた。思い返せば二人のユニットのストーリーやイベントが出るたび文句を言っていたし、オタクのツイートも見るたびにカチンときていた。それでも苦しかった思い出はなくて、三毛縞がかっこよかったこと、新たな一面や性格を知ることができて嬉しかったこと、MVや曲でアイドルらしさを見せる三毛縞にときめいたことばかり思い出せる。謎だけど、怒りながらしっかりオタクを楽しんでいた。

結局このユニットがどうなったかというと、2023年の新年にしれっとソロユニットとしての新曲イベントがやってきて、二人のユニットは2023年の夏に正式に解散した。二人のユニットの紹介や存在は公式サイトから消え、ソロユニットが戻ってきた。

本来なら喜ばしいというかもちろん嬉しかったが、2023年の1月以降、私はなんだか気が抜けてしまった。多分私は怒りながらオタクをすることをかなり楽しんでしまっていたのだと思う。楽しいや好きという感情よりも、怒りが私のエネルギーになっていたのだろう。思えば人生で他人に対して怒った経験が本当になく(誰かと喧嘩をしたこともない)、なんなら三毛縞を通して怒りという感情を知ったくらいだった。ソロユニットが戻ってきたことは嬉しくてなんだか解放された気分になったけど、同時に疲れがどっと出て、私はその頃から侍担にシフトチェンジしていった。

今も三毛縞斑の成長や人生、アイドルとしての生き様は見続けたいからゲームは続けている。ガチャも回すしイベントもある程度は走るし、三毛縞の歌う音楽も聴く。でも昔みたいにずっと怒り続けるようなことはしたくないと思う。きっと怒ることが楽しくなってしまうし疲れてしまうから。だからある程度の距離を取り続けてこれからも彼のことを見ていたい。三毛縞の一人の人間としての姿も、人々を笑顔にするアイドルとしての姿も、ハマった時と変わらず大好きだ。

だから便宜上「三毛縞斑を好きだった時」と書いたけど今も「好き」は現在進行形だ。今でもほぼ同担拒否だし(昔から仲良くしている同担は数人いる)意見の違う解釈ツイートをうっかり見て気分が下がったり、唐突に過去の怒りを思い出して長文ツイートを書き連ねたりもする。三毛縞を好きになったこと自体は全く後悔していない。三毛縞のおかげで自分の中の新しい感情に気がつくことができたし、ジャンルから離れても仲良くしてくれる友達もできたし、何より三毛縞は心の拠り所だった。

お誕生日おめでとう。これからも元気に笑顔でアイドルし続けてくれることを願っています。(2024.05.16)


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