大学1年 春④ 家庭教師は鼻血との戦い
昼は講義を受け
放課後はダンスの練習やったり友達とだべったり、Jさんやその仲間と遊んだり
そんな毎日を過ごしていたが、ある日ダンスの先輩に家庭教師のお誘いを受けた。
やったことないけど面白そうだと思って、そこの社長をご紹介いただき家庭教師を始めることになった。
担当したのは中学2年の女の子。
当たり前だが初めから1人。
ハードルが高い。
聞いたところ、そもそも高校に入れるかどうかというレベルの学力だという。
とてもハードルが高い。
生徒のモチベーションが大事だ!と思い立った僕は
「将来なにしたいの?」
と聞いてみた。
「モーニング娘。に入るから勉強はなくても大丈夫。」
真顔で答えられた。
本気でそのために頑張りたいなら後押ししたい。
でも、話を聞くと
ダンスの練習をしてるわけでもない
歌の練習をしてるわけでもない
身長も低く、プロポーションがいいわけではない。
あと、これは失礼かも知れないが、カワイイとかキレイとか評価を受けるタイプのビジュアルでもない。
お母さんは「習ってもないのにテレビ見て上手に踊れるのよ〜。才能あると思うの!」と言っていたが
身近に空手家、プロダンサー、プロミュージシャン、俳優などを目指して切磋琢磨してきた仲間が周りに多くいた僕からすると
夢見てるだけで努力もしないやつが叶うわけがない。
と一気に熱が冷めたのを覚えている。
でも、家庭教師は立派な生活資金。
時給も普通のバイトの3倍近いし、夕食付き。
待遇はめちゃくちゃ良かったから、そこそこ頑張った。
そんな日々が続いたある日、授業後にお父さんから呼び止められた。
「おかげで少しずつ勉強してきてるようでありがとうございます。もし、いい高校入れたらベンツ用意しときますんで」
話し方がVシネのヤクザやん。
めちゃくちゃハードルが高い。
そんなことを思いながらソワソワしていると
「ちょっと〜、タオルないんだけど〜」
と言いながら、お母さんが全裸でリビングに出てきた。
狼狽える僕を見たお母さんは
「こりゃ帰り事故るね〜!気をつけて〜!がっはっは〜」
と言いながらお風呂場に戻っていった。
この家はあらゆることのハードルが高い。
娘が顔を真っ赤にガチギレしてる姿を尻目に
僕は愛用の青いスーパーカブに乗って、GOING STEADYの銀河鉄道の夜を歌いながら帰路に着いた。
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