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CS-21工法 施工事例 / 駐車場防水改修工事

工事概要

工事名称: 屋上駐車場改修工事
工事場所: 愛知県
建物構造: 地上3階建・S造
工  期: 2017年9〜11月
使用材料: 2液混合型けい酸塩系表面含浸材
     「CS−21ビルダーNETIS登録番号:CG−170009−A
施  工:(株)益田工務店(アストン協会コンクリート躯体防水研究会 会員)

工法採用の経緯

 本工事は,愛知県東部に位置する物流倉庫の屋上駐車場における防水改修工事である。
 当該建物は,当初FRP防水が施工されていたが,経年とともに浮き・まくれ・剥離などで防水層が変状し,加えて漏水が発生していた。

補修方法を検討するため,次の調査を行った。
①書類調査: 構造図,コンクリートの調合,打設記録
②外観目視調査:(上面)既存防水層を撤去後,コンクリートのひび割れ・浮きなどの変状,(下面)漏水箇所,デッキプレートの発錆状況
③鉄筋探査:溶接金網のかぶり厚さ,開口箇所の補強筋数量 ─ など。

調査の結果,部分補修で対応が可能と判断された。
 そこで,無機質で耐候性に優れるとともに,膜を造らないため防水層の浮き・まくれ・剥離の恐れがなく,施工後も躯体を直接目視で確認できるけい酸塩系表面含浸材塗布工法を,コンクリートスラブの微細ひび割れ補修,および水密性向上対策として提案し,採用された。

施工概要

①既存塗膜撤去
②下地処理(高圧洗浄)
③けい酸塩系表面含浸材と補助剤の混合液塗布(1回目)
④けい酸塩系表面含浸材と補助剤の混合液塗布(2回目)
⑤湿潤養生,散水

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使用材料の概要

 当該工事で使用したけい酸塩系表面含浸材は,けい酸ナトリウムを主成分とする主剤と,水酸化カルシウムを主成分とする補助剤の2液を現場で混合し,使用するものである。
 主剤は,新築駐車場・屋上・地下・水槽などの防水工法として15年以上,延べ130万㎡以上の実績がある材料をもとに新たに開発された製品である。
補助剤との混合により,単独での使用時に比べて,次の新たな性質が付与される。
①混合後は一定時間流動性を保ち,塗布または注入後に浸透した空隙内でゲル化,滞留する。
②ゲル化後,乾燥固化後も反応性を有しており,補助剤およびコンクリート中のカルシウムと継続的に反応物を生成することで,空隙充填性が高まる。
③ゲル化タイムは,主剤と補助剤との混合比によるコントロールが可能。

 この混合液化による新たな性質が,表面からの目視では発見しづらい微細ひび割れの充填,および施工後に新たに発生する微細空隙の充填に効果を発揮することで,表層部が中性化した既設コンクリートの水密性向上に役立つと判断し,同材料を使用した。

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工事上の留意事項

 けい酸塩系表面含浸材の塗布では対応できない箇所については,事前に他工法による処理を実施した。
①デッキプレートの腐食部は,別途,補強対策の上,部分的に塗膜防水処理を実施。
②鉄筋爆裂部は,はつり後に断面修復を実施。
③注入が必要なひび割れには,前述の混合液を先行注入後に無機系注入材を注入した。
 これには,無機系注入材の流動性低下を防ぎ,単独では浸透しづらい微細な空隙を充填するとともに,後から表面に混合液を塗布することで,無機系注入材の硬化収縮により発生する空隙を充填し,水・劣化因子の侵入を抑制して,水密性・耐久性を高める目的がある。

まとめ および 今後の展望

 当該工事は,前述の対策により工期内に工事を完了した。漏水の再発などの不具合発生もなく,経過は良好である。
新築建築物では,着工前にひび割れの発生を抑制するための躯体条件について事前協議を行った上で,けい酸塩系躯体防水材による躯体防水工法を適用し, 防水10年保証*を行っている。
 *新築時の防水10年保証における躯体条件等の詳細は、
  資料「コンクリートの躯体防水」をご参照ください。
 *躯体防水工法の施工事例・施工実績については
  躯体防水研究会オフィシャルサイト > 施工実績 をご参照ください。
しかし,既設の場合は,変状発生後の対策となることが多く,けい酸塩系表面含浸材単独での対応が困難なケースもある。
 今後は,当該工事における経験を踏まえ,各状況に応じて最適な工法を選定・施工し,コンクリート構造物の予防保全によるライフサイクルコストの低減に貢献していきたい。

アストン協会コンクリート躯体防水研究会 会員・(株)益田工務店 上田康博


最後までご覧いただきありがとうございました。

本記事は、防水ジャーナル2018年2月号(P42-43)に掲載された「二液混合型反応型けい酸塩系表面含浸材を使用した駐車場部分補修工事」の転載(一部再構成)です。

コンクリート躯体防水材CS-21によるコンクリート構造物(駐車場・屋上・屋根・地下・水槽など)の躯体防水につきましては、コンクリート躯体防水研究会 ウェブサイト をご覧いただけますようお願いいたします。