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サラリーマンポエム②『namagomi』

『namagomi』

ゴミを仕分ける奥さん

どーせ廃棄場では、いっしょくたに

どーせ廃棄場では、いっしょくたに

プラ可燃ガラスに電池

牛乳パックにお魚トレー

なのに一所懸命仕分ける奥さん

どっかのえらいお役所さんが

世間体のためだけに作った分別表は

やけに見にくい

やけに醜い

焼けにミニ喰い

分けても一緒

シェアしてばら撒け廃棄物

盲目的に分別表を信じて

決まった時間に捨てに行く

それをきっちり監視する町内会の皆様方

それをつつきにくるカラス

捨て忘れた我が家のゴミは

怒り狂ったような奥さんの表情とともに

全責任をぼくに押し付け

ついでに僕の部屋にゴミ袋も押し込み

生ゴミ臭くなった新築の家の僕の部屋は

新しい気分を一瞬でめちゃくちゃにした

このままゴミ袋と一緒に

死んでしまいたい衝動に駆られた僕は

忘れないように庭にゴミ袋を出しておく

翌朝鬼婆のような顔の奥さんに起こされた僕は

庭に放置されていたゴミ袋が

カラスによってめちゃくちゃにされていることに気付くんだ

溢れ出した生ゴミはあちこちに散乱し

腐敗臭が新築の庭に立ち込める

やっていることがすべて裏目に出たあと、

おめおめとゴミを包み直そうとしたとき

中からゴキブリが這い出すのを目視した

その瞬間思った

もう無理だ、と

生ゴミのように腐って

生きていくことに絶望した僕は

このきっちりと分別されてゴミを、

町内会のゴミ捨て場に捨てたあと、

車で40分かけて、

嫌な上司のいる職場に向かうんだ

生ゴミのように腐った心は

どこにも逃げ場なく

ただゆっくりと

死んでいくんだろう

この社会生活のなかで

カラスに突き刺されながら

野犬に囲まれながら

ゴキブリどもに這い回れながら

ゆっくりと

ゆっくりと

腐って死んでいくんだろう

僕はそれを受け入れて

ただそれを一身に受け止めて

だれかが作った当たり前のルールになかで

よく知らない常識のなかで

がんじがらめになって

身動きとれずに

ゴミを捨て、嫌な会社に行き、また家に帰れば奥さんにいじめられ、起きて会社に行けば上司にいじめられ、またゴミを忘れ、叱られ、

その無限のサイクルのなかで

もう、生きていくことに疲れたぼくの心は

冷蔵庫でしなびた特売のパプリカのように

はじめは鮮やかな色だったのに

使い道がなく

不要なものとして

どんどんどんどん

周りから切り捨てられ

回されて

姦されて

輪姦されて

舞わされて

ニッポンの資本主義競争社会弱肉強食システムのなかで

静かに踊り狂うんだろう

真夜中のダンスホール

周りにはだれもいない

ぼくだけのダンスホール

いい感じだ

全うしよう

この僕の

運命的弱者思想を

namagomi万歳