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『おせんべいくんとぷりんちゃん』7話

7話

おせんべいくんの学校では、月に一度の席替えがありました。

先生がランダムに席順を決め、みんなの前で一斉に発表するというものです。

男の子と女の子は必ず隣り合わせで、左側に男の子、右側に女の子が座りました。

その日、発表された席順で、おせんべいくんの隣に座ることになったのは、例の、おせんべいくんのことを詰問し、追い詰めた女の子でした。

開口一番、その女の子は言いました。

「隣が、最悪なんだけど」

それは決して大きな声ではなく、仲の良いグループの女の子に対して喋った一言でしたが、おせんべいくんの耳にははっきり聞き取れました。

隣が最悪、と。

おせんべいくんは、表面上はなに食わぬ顔で取り繕っていましたが、心の内は、激しい自己嫌悪の濁流に、例によって、飲み込まれていました。

また、自分のせいで、他人にいやな思いをさせてしまった。

僕が隣の席になったせいで、この子に不快な思いを抱かせたんだ。

僕はこのクラスに必要ないのかもしれない。

おせんべいくんは、いつも感じていた、微かな、それでいて、確かな、自分のあるひとつの感情に気づいてしまいました。

それは、死にたい、という感情。

おかあさんにも、クラスメイトにも、先生にも、自分を認めてもらえない。

学校にも家にも居場所がない。

おせんべいくんの行くところは、学校と家しかありませんでしたが、その両方で、居心地の悪さを感じ続けていたおせんべいくんは、もう、疲れ果てていました。

いっそのこと、死んでしまえたら、どんなに楽だろうか。

この頃から、おせんべいくんは、死にたい、という自分の気持ちを認めることができるようになりました。

そうすることで、心がいくらか楽になっていくのを、感じていました。

続く