潰れた奴が悪い
潰れた奴が悪い。
この風潮は、いま、日本社会全体に蔓延している。
僕がいた前の部署に新しく赴任した若手の有望な子が、上司のパワハラで、鬱病で休職したらしい。
僕がその部署に着任したのも、前任者が、上司にやられ、同じように鬱病で休んでいたからだ。
急遽前の部署を一年で変えさせられた僕は、その魔の部署で、丸3年働いた。
2年間はなんとか当たらず障らず、のらりくらりと仕事をし、精神を保ちながら、業務を淡々とこなすことができた。
だが、三年目はもたなかった。
次々に、襲ってくる理不尽、ドロドロの人間関係。
互いの派閥、蹴落とし、横取り、落とし穴、裏切り。
数え切れない負の連鎖に、僕はまったくやる気をなくし、家族を裏切り、愛人を作るのに注力し(結局無理だった)、取引先からの援助やサボり、職場離脱、無断出張など、あらゆる悪いことに、手を染め始めた。
それが社会の、当たり前だと思っていたからだ。
こんなにしんどいのだから、少しくらいいいだろう。
みんなやってる。
何が悪いんだ。
という自己の正当化が歯止めなく進み、その結果、僕の精神は、裏切りによって崩壊した。
会社からは部下の労務管理不行き届きで始末書、上司からは使えないと飛ばされ、他部署への異動、その時好きになっていた女の子に告白するも、家庭を壊すことはできないと、体のいいお断りを受けて、自滅。(なら、二人で何回も出かけたり、それっぽい仕草を出すな)
すべて自分が蒔いた種だけに、救いようのない結果だが、もういっそのこと、会社やめてしまおうか、と考えたら、なぜか気持ちが軽くなり、前向きになった。
けど、異動先の部署で待っていたのは、上司の、壮絶なパワハラ、洗脳、職場いじめ、恐怖政治だった。
何日も、何回も密室で言葉の暴力を受け続けた僕は、もともとやる気をなくしていただけに、抗うだけの気力を、失っていた。
イエスマンと、成り果てた僕にできることは、ただ、うなずくこと。
やれと言われたことに、操り人形のように、従うこと。
それだけだった。
周りはまったく見えず、自分の保身と上司の、機嫌を、うかがうだけの毎日。
家族に当たり、子供を、叱り飛ばし、精神状態は末期だ。
一年続けた結果、頭痛が鳴り止まなくなった僕は、心療内科へ行った。
診断名は、ストレス障害。
上司に、報告したら、俺についてこれないやつはいらない、ということで、左遷だ。
壊れたおもちゃはいらないということだ。
壊れた僕は、いま、この部署にいる。
なんとか、仕事を、こなしながら、支えられながら、単身赴任で一人家族から離れ、生きている。
会社からは一枚の異動通知のみ、面談もなにもない。
潰れた奴が悪い。
この風潮は、しばらくなくならないだろう。
その前の部署も、休職した子の代わりに、誰か身代わりが来るんだろう。
そんなもんだ。