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所信表明DJ - 2020

世はまさに大Pioneer DJ時代!! 猫も杓子もDDJ-400という暗黒時代(諸説あり)を破壊すべく立ち上がったAbleton Liveでライブ(DJ)をすること僕ことあそなす。
所信表明DJというのにかこつけて新しい機材(とは言いつつもハードウェア自体は昔から持っていた)でDJに挑戦しようと思ったのであった。

当日の構成は下記のツイートから参照できます。

具体的には

* Ableton Live
* Ableton Push2
* Native Instruments Komplete Audio 6
* KORG nanoKEY Studio
* KORG nanoKONTROL Studio
* iLoud Micro Monitor

という構成です。スピーカーはiLoud Micro Monitorです。界隈ではtofubeatsが不定期で開催している TTHW(Three The Hard Ware)で使用されている事が有名です。小さいながらもかなりいい音が出るのでちょっとしたスペースで音楽をでかい音で聞きたいときにはめちゃくちゃオススメできます。
音圧がグッと強い音を再生するとめちゃくちゃいい音が出ます。 @muchan がめちゃくちゃいい音流してた。

当日流した曲は

* house music in her room
* Funkadere!
* Flicker(Tomggg Remix)
* GO! GO! MANIAC(rolled egg mix)
* Love Circulation_(natural decoration core mix)
* ワンルーム・ディスコ
* チョコレイト・ディスコ
* MEGAHARD
* Green Night Parade
* ゆうやけハナビ
* Dance Music
* i want you
* 20140707tsukasa
* 距離感
* Dance To Chop
* Pipo Password(Luluco on SILENT PLANET Remix)
* LOVE&ROLL(Full10 Knockout!! Remix)

です。30分でこれだけ流すのは我ながら頭がどうかしてるなと思います。

実際にAbleton LiveでDJをするまで

DJをやらない人向けに説明をすると、現代のパッケージングされている構成でDJをするとCueという仕組みがあります。これは次の曲を試し聞きする様な機能で、一般的なDJ機材を使用すればこのあたりの機能はボタンのON/OFFで操作することが可能です。しかし僕が使いAbleton LiveはそもそもDTMのためのソフトウェアなのでDJのための機能は(Cueに限らず)一切ありません(正確にはAbletonにCueという機能はあるけど、DJで使う想定はされていないのであった)

ここではAbleton LiveでDJをするまでの長い長い試行錯誤の道のりを説明してみようと思います。

Cueを実現する方法

これが一番むずかしく試行錯誤の連続でした。最終的な完成形は以下の様になります。

スクリーンショット 2020-01-21 21.25.35

Liveには音声の経路を自由に設定できる、いわゆるルーティングの仕組みがあります。図の場合だとAとBのデッキがあります。Browserとかかれているトラックには今回かけようと思っているトラックを配置しています。音楽を流したいときにはBrowserにある曲をAまたはBデッキにコピーして使います。
このリターントラックを利用することでAとBの出力を自由に制御することができます。
今回の場合だと、各デッキは リターントラックC に音声の出力を向けています(細かいことを書くと各デッキはSend onlyになっておりMasterには音が流れないようになっています)。リターントラックCMaster(つまりスピーカー) に出力をします。画像をよく見ると リターントラックCリターントラックE にも出力を送っています(これについては後述します)

とりあえずこれで、AデッキとBデッキのフェーダーを操作することで曲をつなぐ事ができるようになりました。

次の曲をMaster(スピーカー)に流さずヘッドフォンから聞くためのCueを実装するためには リターントラックD を作成し、各デッキから音を聞きたい時には リターントラックD に向けて音を流します。
そしてリターントラックDとEは、それぞれリターントラックFに出力しています。リターントラックFは単純にデッキAとデッキBの音が届いていて、それを出力する先が3/4になっています(Masterは1/2)。つまり、オーディオインターフェースの出力3/4ではMasterとは関係ない別の系として音が流れる事になります。(これを思いついた瞬間に声を出しながら膝ポンしました)(そしてこの感動を多くの人に伝えるのは難しい...)

リターントラックDとEにも縦フェーダーがあるのでMaster側に流す音もCueで合わせたい音も聞けるのでそこはいい感じにMIDIコントローラで調整をします。といっても大抵の場合は期待した位置からの再生ができているか、の確認になるので リターントラックD はInfにしておいてEは0にしておきます。曲調を合わせたいときにはそこをいい感じにMIXします。

Abletonの公式のドキュメントに詳細な情報が書かれてあります。もし同じ様な構成で悩んだときには下記のドキュメントを参照すると良いでしょう。
https://www.ableton.com/ja/manual/routing-and-i-o/

MIDIのアサイン

前述の通りのルーティングを実装できました。まとめると以下の様になっています

* リターントラックC に音を流すとスピーカーから音が出る
* リターントラックD に音を流すとヘッドフォンだけで音が聞ける

という環境が出来上がっています。しかしこのリターントラックCやDに音声を送るのをマウス操作だけでやるのは現実的ではありません。ただ、このCとDについては0またはInfで制御できればよいのでMIDIコントローラーで制御できればよいのです。
ただ、Push2も使っているんですが、Push2だけでやるのには限界があるので、諦めてMIDIコントローラーを導入しました。

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また、Track Volumeに関しては最大で6dbまで設定できるのですが、今回の構成だとMasterだけで調整できればよいので意図しない大音量が出ないように各デッキ、各リターントラックの最大出力は0dbまでにしています。つまり間違えてMIDIのフェーダーを0dbよりも大きく振っても0db以上になることはありません。これはLiveで普通のライブをする上でも重要なTipsです。

ボタンに関しては、リターントラックCとリターントラックDへの0,Inf(オン・オフ)の切り替えを設定しています。最初はDをオンにした時点でCへの出力をオフにするようにしていましたが、Masterに流しつつもCueで音声をききたい場面がある、という事に気がついてそこの切り替えはせず、単純にCとDへのそれぞれオン/オフを切り替えるようにしました。

DJできるようになった!

さてここまででDJができるようになりました。rekordboxをつかってる人から見ると「は?」って感じだと思いますが。

次に、HotCueの設定の仕方やBPMの調整、エフェクタについて書きます

HotCue

HotCueというのはいわゆる「ここから再生」というポイントを設定できる仕組みです。当然ですが、Liveにはそのような機能はないので自分でどうにかする必要があります。

HotCueの設定は難しくなく、Browserに登録している曲をコピーして下に配置して適当な名前(ここではAとかBとかOutroとか)をつければOKです。

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開始したい位置を1.1.1に設定することでHotCueを設定できます(ルーティングの設定に比べれてば何百倍も簡単です)

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### BPMの調整

これはPioneer DJのrekordboxが天才すぎるんですが、Ableton LiveはDTMのソフトウェアなので、複雑な音源のBPMを見つけ出すのは困難なようです。
環境設定ののRecord Warp Launchの「デフォルトワープモード」を「Complex」にしておくことで幾分かはましになります。(もしくは、音源を取り込んでワープモードをComplexにしてもOKです)
経験則ですが、ジャズやロックバンドのような曲だとBPMがゆれることが多いです。その場合はLiveのメトロノームをオンにして曲を再生してズレを直していくのがよいです。

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エフェクターについて

Cueの実装のところでリターントラックCとかDとかEとかFとかを書いていましたが、実はLiveはデフォルトでAとBにReverbとDelayのエフェクターをアサインしています。DJをする上でReverbもDelayもあまり使い所がないのでそこはいい感じに変更すると良いでしょう。
2つのリターントラックがあれば十分かもしれませんが、3つ以上のエフェクトがほしい場合にはそれぞれのエフェクタをアサインしたリターントラックを増やしてそれぞれリターントラックCに流せば問題ありません(このエフェクターを多量に使いたい場合にも配慮もできるルーティング構成なので膝ポンなんですよ)

総評

まずは、ここまで読んでほとんどの方は「何いってんだ?」ってなったと思います。Pioneer DJがDJの敷居を下げられるような仕組みをつくったのは本当に素晴らしい事だと思います。多くの人にとってはこの記事は不要だと思いますが、いつか新しい境地を踏みたいときにはこの構成を試してみるといいかもしれません。今回はPush2については一切ふれていませんが、ほとんどの場合はPadがたくさんついているLaunchpadでもOKです。もし、Push2を持ってる方がいらっしゃったらもう少し細かい説明を書いてみようと思います。

Ableton Liveへの愛情や慣れがあるのであればこの構成は良いでしょう。Pioneer DJ一強みたいな状態を打破したい人にもおすすめしたいです。この構成だと(業界2位のNative Instruments社の機材が含まれていますが)Pioneer DJへの強い対抗策となるのではないでしょうか(本当に...?)

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