コロナワクチン:世界のワクチン開発は?(1) mRNAタイプ

イスラエル、イギリス、アメリカと各国でワクチン接種が進んでいます。それとともに、酷かった感染が収束に向かっています。そこで数回にわけて、これまで開発・承認・使用されてきたワクチンをタイプ別に紹介したいと思います。1回目の今日は、日本でも承認されているファイザー製が用いているメッセンジャーRNA(以下、mRNA)タイプについてまとめてみます。

ファイザー・ビオンテック製

アメリカ製薬大手ファイザー社とドイツのバイオテック企業ビオンテック社が開発したワクチンは、世界で最も早く承認・使用が開始されたものです。現在、日本で唯一使用されているワクチンでもあります。

その特徴は、人工的に作り出した抗体で、ウィルスの侵入を防ぐもの。その効果はきわめて高く、ファイザー社の発表では従来型ウィルスに対する効果率は95%です。イギリス型変異にも強いことはすでに実証済みですが、南アフリカ型、ブラジル型に対しては若干効果が落ちるとの検証結果が医学ジャーナル『セル」誌にて報告されています。それでも、現在最も頼りになるワクチンのひとつであることに変わりはありません。

使用については、2度の接種を前提としており、ファイザー社CEOアルバート・ブーラは最近のインタビューで、3度目のブースターショットが感染を抑える上で効果的との見解を示しています。

同じインタビューで、ブーラは、少なくとも向こう数年間は、さらに年に1回のワクチン接種が必要になるだろうと述べています。同様の見解は、すでにアメリカ製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン社CEOアレックス・ゴルスキーによっても示されています。


モデルナ製

ファイザー・ビオンテック製同様、擬似的に免疫を作り出すmRNA型のワクチンがモデルナ製のものです。効果については、ファイザー製と同等で、南アフリカ型、ブラジル型への効果が若干落ちる点も変わりません。ただし、2度の接種を確実に受けることで、その効果は高まるとの見込みです。

日本では、武田薬品がモデルナ製ワクチンの輸入・供給を引き受ける予定で、現在承認申請中です。認可が下りれば、5000万回分のワクチンが年内に供給される見通しです。

ファイザー製が原則として超低温管理を必要とするのに対し、モデルナ製はマイナス15度から25度での管理で済むなど、扱いが比較的簡単なのが優位点とされています。

一方、あくまでも限られた報告ではありますが、接種後の副反応については、ファイザー製に比べ強めに出るのがモデルナ製のようです。また、いずれのワクチンも1回目の接種後には腕の腫れなど軽微な副反応で済むようですが、2度目には接種者によっては37〜38度の発熱が2〜3日続くこともあるようです。ただし、これによって免疫が定着するという専門家の見解もあります。

先日報道がありましたが、このmRNA型ワクチンの基礎研究を支えたのは、新潟薬科大学の古市泰宏客員教授だそうです。その後、欧米の研究者の間でこのmRNA型ワクチンの研究が進み、今回のパンデミックではその知見が最大限に活かされた結果、従来にないスピードでのワクチン開発が実現しました。

おそらくmRNA型の最大の利点は、人工的な免疫を体内に作り出す点にあります。つまり、ワクチンにデザイン変更を加えることで、比較的容易に変異型に対応できるようになるのです。3回目のブースターショットが有効とされるのは、免疫を長期にわたり持続させるのに加え、変異への対応を可能にするという点にもあります。


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