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苦手なプレゼンを「ごっこ遊び」で克服した話

【ポイント】
話し方を上達させたい人がまず話し方の本を読むのはおすすめできないです。
カイヨワの「遊びの4類型」にミミクリ(模擬)がありますが、先に話が上手い人の動画をシャドイングで真似して学ぶのが良いです。

初めてのプレゼンで大失敗した

大学1年生だった時、前期終わりに初めてプレゼンするという場面がありました。

ちゃんと準備して臨もうと思い、Amazonで『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』という本を買いました。

TEDというのは、世界各国の知識人によるスピーチ動画を配信しているアメリカの非営利団体で、要は「すごいプレゼンがたくさん見られるやつ」ぐらいの認識で大丈夫です。

本の中で紹介されているテクニックを原稿に盛り込み、実例として紹介されているTEDでのプレゼンをYouTubeで見て勉強しました。一字一句Wordで作りこみ、当日は原稿を印刷して、強調するところに蛍光ペンを引くなどしました。

そうしてプレゼンに臨んだのですが、今思い出しても酷いものでした。原稿を持つ手は震え、足はガタガタ、どこまで読んだか忘れ、スライドを次に移すのを失敗し、言い直し、嫌な汗がつたって、その汗の感覚が妙に気になりながら原稿を読み終え、終わったことに気付かれていないっぽくて「以上です。」と言いつつ前を見ると、みんなスマホを触っていました。

かなり落ち込んで、その後カバンに入れてあった『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』という名前を見て、皮肉めいて感じたのを覚えています。

YouTubeの動画をシャドイングすることにした

結論から申し上げますと、YouTubeの話が上手いなあと思う動画をシャドイングすることで全て解決しました。

もともとは『アウトプット大全』と言う本に、本で読んだ内容を話してアウトプットするのが良いというような内容があって、中田敦彦さんの世界史か何かの動画が出始めていたときに「これをシャドイングしたらインプットとアウトプットが同時にできるのでは?」と思って始めました。

「どこでシャドイングするのか問題」なのですが、イヤホンをつけてシャドイングしていると、すごく盛り上がって電話している人みたいになるので、通学通勤中に歩きながらシャドイングするのが便利です。

そうしてシャドイングしていると、いつの間にか中田敦彦さんみたいな話し方に近づいてきて、間とか息遣いが分かるようになりました。

家で身振り手振りもそのまま真似すると、最初はなんとなく恥ずかしかったのですが、「こんなに手を動かすんだ」「こんなに早口でいいんだ」と思いながら少しずつできるようになりました。

前期のプレゼンは大失敗したものの、後期に毎週グループワークをして4人中1人が発表するみたいな授業があって、そこでプレゼンしたら「プレゼン本当にうまいよね」などと言われたり、プレゼンを聞いた後笑顔で拍手している人が見えるようになりました。「前期のプレゼンは酷かったよね」とか言うと、「そうだっけ?」みたいな反応です。僕の前期の失敗は誰も覚えてなかったみたいです。

「ごっこ遊び」で学ぶのがおすすめ

スタンフォード監獄実験というものがあります。こちらの記事によれば、「監獄を模した施設で被験者を囚人役と看守役に分け、その行動を観察する」というもので、「人間の行動はその人の気質や性格で決まるのではなく、置かれた状況によって決まる」ということを証明しようとしたものです。

結果、看守役の人たちが受刑者役の被験者たちに対して残酷で非人道的なことをするようになり、看守役の被験者は「あの時は本来の自分とは別人になっていた」と語ったそうです。つまり、「キャラが与えられたらその通りに行動がデザインされる」ということです。

中田敦彦さんの話をシャドイングして経験を積み、本人になったつもりでプレゼンすると、何を言うべきか、どんなテンションでいつどんな冗談を挟むべきか感覚的に分かるようになりました。その後プレゼンの本を読むと、そういうことか!と言語化されていって身につくという感じです。

「ごっこ遊び」というのは学習方法として本能的に備わっています。「学ぶ」の語源は「真似ぶ」だ、との説もあります。

また、ロジェ・カイヨワの「遊びの4類型」の1つに、ミミクリ(模擬)というものがあります。シャドイングによる「話の上手い人ごっこ」自体、非常に楽しいです。

話し方だけでなく、尊敬する人の同じ服装をするとか、同じものを使うとか、愛読書を聞いて読むとかもアリです。

「ごっこ遊び」というのは非常に汎用性の高い学習方法なので、ぜひ試してみてください。

【クエスト】
・好きなYouTuberの動画を開く
・盛り上がって電話しているフリをしながらシャドイングする
・プレゼンの本を読んで言語化する

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