ETD、1F

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ETD。すなわち、エロトラップダンジョン。
ゲームなどで連想するようなモンスターと宝箱のダンジョンとは違って淫猥な罠のひしめくそこは、普通の人間に言わせればまぁ、ひどく趣味の悪い品である。
ただ、"私"にとっては……最高の場所だ。
とある軍事組織のトップを務める私は、自分の命を電子の世界にバックアップした外道だ。
人として一度死ねば終わる運命を拒み、バックアップから何度でも蘇る。
無論それは組織として戦いに勝つためのもの。後悔も、罪の意識も欠片もない……が、ふと、私は思いついてしまった。
バックアップを残している以上、たとえ気が狂おうと、心の臓を杭に貫かれようと、肉体が粉みじんにされようと、私は元の私になれる。
そう。たとえ、快楽に脳みそを焼き切られようとも、だ。
それに気づき、自身の被虐嗜好を思い起こして……それだけで、全身が震え上がるような、ゾクゾクとした感覚をまだ覚えている。
あくまでも抵抗して、それでも快楽に襲われ……最後には、呑み込まれてしまう。そんなこじらせた嗜好は早々満たせるものではない。

ゆえに、シミュレーション機器で完全に再現されたその場所は、私にとっては楽園だった。

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高くそびえたつ塔。目の前に現れたそれはひどく高く、その頂上はまるで見えない。
「…………」
警戒を解かず、懐中電灯で入り口と、軽くその周囲の怪しい場所を確認する。
「……クリア。」
誰もいないことを確認しつつ、尚も警戒は解かず。拳銃を構えたまま、じりじりと入口らしき扉に近づく。
扉までたどり着いてもなお、見張りや敵は現れなかった。……一度警戒を解き、状況を確認しよう。

目が覚めると、目の前に塔があった。周囲の環境は森らしく、鬱蒼とした木々はその奥に何があるかを見せない。
私が身に着けている装備は拳銃、コンバットナイフ、懐中電灯……もとい、タクティカルライト。
防具の類は装備を纏めるベルト以外になく、普段着に物々しい装備と幾分かちぐはぐな恰好になっている。
ここがどこなのかは全く分からないがしかし、森を抜けられる保証も日を越せるような装備もない。
……見た感じ、目の前の塔は周囲の森に似つかわしくない技術力を以て建設されているように見える。
なら、かなりの賭けではあるが目の前の塔を軽く探索して装備品や食料の手合いを探すべきだ。長年戦い続けて鍛えられた勘と知識がそう告げる。

情報整理、完了。目標設定、完了。なら、後はそれを実行するだけだ。
扉に手をかけると、意外にもすんなりと開いてしまった。慌てて警戒し、先ずはライトを扉から覗かせる。
次いで肉眼、即座に銃口。敵影は確認できず……ひとまず、入口は良し。
「妙、だな……」
……あまりにも、気配がない。人影も、足音も、敵意も何も感じない。もう打ち棄てられた施設なのか……?
無益な接敵は避けたいが、しかし何もないのもそれはそれで困る。何かしらの補給を求めて来ている以上、棄てられた場所に用は無いのだが……
一歩、二歩。一秒止まる。何も起きない。
「少し緩めるか……」
わずかに警戒を緩め、進むことを優先する。大丈夫、今もまだ気配は何も感じない……

数分ほど歩いたが、やはり何も起きない。やはり棄てられた場所なのかと思っていると、狭かった通路から突如開けた部屋に出た。
中央には椅子。その奥には扉。……その椅子はやけに清潔に見える。まるで直前まで手入れされていたかのようだ。
……ちぐはぐだ。何の気配もないのに、ただその椅子は棄てられたどころか、むしろ丁寧に手入れされている。
ひとまず椅子は無視し、扉に手をかけてみる……が、こちらは開かない。横にはパネルがある……?
「"ようこそ、私の庭園へ。まずはそこの椅子に座って、落ち着いてから奥へどうぞ"……?」
はぁ、とため息を吐く。どうにもこの塔の主は暇人らしい。すっかり気も抜けてしまった。
ああわかったよ、と独り言を言って椅子にどっかりと座り込む。どうせ人の重みが鍵になって空く仕組みでも仕込んであるのだろう?
がちゃり、と金属音がする。やっぱりな、と思って椅子から離れようとすると、ぐっと押さえつけられて立ち上がれない。
……金属のリングが私を椅子にくくり付けている。お腹のあたりに、足首手首。やけに厳重だ。
しまった罠か。そう思った時、大抵の罠は手遅れだ……せめて目を閉じ、音に集中する。
首は動く。上半身もよじれぬことは無い。大丈夫、頭への攻撃くらいは避けて見せる……
案の定、罠にかかった私に卑劣な攻撃が襲い来る。ヴィイイ、という機械の駆動音。動けない下半身の方から聞こえて……

「ひ、ぅぁっ!?」
情けない声が漏れる。思わずライトと銃を取り落としてしまう。
攻撃が来るだろうと身構えていたら、あまりにも予想外。
太ももの周りをマッサージするように、電動マッサージ機のようなものが二本。
「ん、ふっ……」
妙に優しいそれに、思わず声が漏れる。くすぐったい様な、癒されるような……
わざわざ拘束して、何でこんなことを……と、考えるも優しい刺激に打ち消される。
警戒して固まった肉体をほぐすように……優しく、揉み撫でるように、脚やその付け根の周りをマッサージする。
腰回りにそれが当たったかと思えば気付けば太ももに戻っていて、また気付けば脚の付け根を。また気付けば背中を……

「ひっ、んに……❤やっ、そこはっ❤ぁぅっ❤❤」
何分か何十分か、下半身をとろかしていたそれがだんだんと脚を昇ってきて……ついに、股間に触れた。
周囲をずっと苛められ、それなのにそこだけは触られなかったことが却ってその場所を意識させられて……体の方は浅ましくも出来上がっていた。
それなのに、何の前触れもなくそこに触れられ、て……っ❤
「はっ、や、め❤❤っ、く、ぅうぅ❤❤❤」
がく、がくっと脚が震える。焦らされた体は、いともたやすく絶頂を迎えてしまった。
それにもかかわらず、機械は無慈悲に"マッサージ"を続ける。いや、明らかに意図が変わっている。
先ほどまでの脚や体を労わる動きは消えて、ぐりぐりと押し付けるように、明確に"そこ"を狙って。
「ふぁ、やっ❤❤」
達しても止まらない快楽に、体が暴れる。だが金属製の戒めは、力の入らない体では当然破れない。
暴れれば暴れるほど、押し付けられる快楽が大きくなってくる。激しく、だめ、だ、また……っ❤
「や、らっ❤❤あぅっ❤❤ぅ~~~~っ❤❤❤」
味わった事のない、連続での絶頂。しかし機械は動きを止めない。それに、また動きが激しくなってる……!
ダメだ、せめて何か、対策をしないとまたイかされる……❤
「やめ、ろぉ❤このっ❤❤」
せめてもの抵抗に、内股に太ももを締めてマッサージ機の動きを止めようとする。
一瞬だけ動きが緩んでほっとしたのも束の間、ヘッド部の動きが今まで以上に激しくなり、股間に強烈な刺激が与えられる。
「~~~~っ❤❤ごめんなさっいぃっ❤❤❤抵抗してっ❤❤ごめんなさっ❤❤❤」
強烈すぎる快感に一瞬で反骨心を折られ、無様でも許しを請う。
当然、そんなことをしても機械に哀願は通じず、激しい振動が流し込まれ続け、同時に絶頂に上り詰めさせられる……❤
「やっ❤❤❤お゛ぅっ❤❤❤❤ゆるしてぇ❤❤イってるの❤❤❤」
がくがくと痙攣しながらイかされて、イってる間にまたイかされて……
何度絶頂に達して、いつ終わるのか分からない。腕も足も拘束されて、抵抗も逃げることも出来ない。
冷静になればなるほど、逃げられない事実と強烈な快楽が理性を削ぐ。
もう逃げられないなら、きもちよく、なっちゃえば……❤
「うぁっ❤❤はっ、あっ❤❤~~~~~~っ❤❤❤❤」
声にならない声を上げ、何度も何度もイかされる。
少しでも受け入れてしまったら、その先はすぐだった。
もう逃げられないなら、気持ちよさを受け入れたほうが楽。
そう認めた瞬間、今まで我慢しようとしていた分も一気に昇ってきて……
かと思えば突如ヘッド部の動きが止まり、数分間焦らされて……また突然、これまでで一番激しい刺激が襲い掛かってくる。

結局、何十分か何時間か分からないが、私は数えられないほどイかされて、突然椅子の拘束を解かれた。
「は、ひっ❤はっ❤……はぁっ❤❤う、あ……❤❤」
べしゃり、と地面に倒れ込んで、荒い息を整える。いや、整えるというよりは、荒い息のまま、なんとか呼吸する。
これは、すこし……立ち上れる気がしない。情けないが、十数分はこのままか……
軽く周囲を見渡す。ライトと拳銃はどこにも見当たらない。奥の扉は……開いて、いる?
……次に、自分の体を見る。全身が汗だらけで、履いていた下着と服はぐしょぐしょだ。どうやら、ナイフは残されている。
「はーっ、はっ❤❤ふっ、うー……❤いか、なきゃ……❤」
とにかく、ここまで来てここまでされてしまったのだから……奥に、進まなくては。
気力を振り絞り、這いずるように扉のほうに向かう。
開け放たれた扉を潜った先は階段だったので、段差を使ってひとまず体を休める。
このまま、一度、眠ってしまおうか……いや、それはまずい……
体力を回復したら、もっと奥深くに進んで……また……❤
い、いや……誰かの建築物なのは確かなのだから、せめて食料か装備品を見つけなくては……

To Be Continued...?