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電動未来_001-さよなら、CHAdeMO

 日本発の電気自動車の標準充電方式の一つ、CHAdeMOが生まれたのは2010年の事でした。その当時、電気自動車の量産化という意味では、まだ世界をリードしていたといえる日本がすることですから、近い将来このCHAdeMOが、「ガラパゴス製造機」である日本発の数少ない国際標準に育つのではないかと淡い期待をいだいたものです。 
 ただ、「CHAdeMO」がCHArge de MOve」の略称だというのは、まあ良いのですが、その他に「茶でも飲むまに充電云々」という意味を含めませてある、ということを聞いて、国際標準を目指すべき規格の名称に、日本語の意味を入れるという行為が、そもそも国際標準を取る気が無いのではと感じたのも、また事実でした。

 現在では充電の主な方式には、北米でも使われていることの多い日本のCHAdeMO、欧州のCombined Charging System(CCS)、中国のGB/T、テスラのSuperchargerがあります。
Supercharger以外は、2014年4月に開催されたIECおいて、電気自動車用急速充電規格の国際標準として承認されました。CHAdeMO以外の規格に関しては、当時、まだそれほど実態がなかったのすが、それでもCHAdeMOに一本化されることはありませんでした。
 2020年に入ると、CHAdeMO協議会と中国の「中国電力企業連合会」は、日中で共同開発中の次世代超高出力充電規格をCHAdeMO 3.0として発行したと発表しました。この規格は、それ以前のCHAdeMOとコネクター形状と互換性がありません。またおそらく名称についてもこの規格開発のコードネーム、Chaojiという、いかにも中国風なネーミングが国際的に使われていく可能性があります。CHAdeMOは名前すら、失うのかもしれません。
 ここに来て、フォードやGMがテスラの充電網を利用することが報道され、少なくとも米国ではスパーチャージャーに統一される可能性が出てきました。つまり、CHAdeMOは北米の市場を失うことになる、と言うことです。
米EV充電網、テスラが「王手」 日本のチャデモ淘汰か:時事ドットコム

 このような状況ではありますが、実は私はCHAdeMO規格に「さよなら」を言うつもりはありません。それどころか、CHAdeMO規格は再評価されるだろうし、少なくとも日本のような資源輸入国で自然災害の多い国には最適な規格だと今でも思っていますし、いずれ世界でも再評価されるのではと考えています。というのは、CHAdeMOは、VEVを「動くバッテリー」として使い、電力供給を行う、いわゆるV2Gの機能があるからです。
 V2G(Vehicle-to-Grid)は、電気自動車(EV)が電力グリッドと双方向で通信し、電力を供給や受け取りができる技術です。これにより、単に災害時などに電源として活用できる可能性というだけではなく、電力の需要のピークにEVから電力を供給したり、余剰電力を蓄電したり、再生可能エネルギーのような不安定な電源のバックアップに使えたりするなど、社会全体のエネルギーを効率的に利用することが出来ます。この機能を必要としているは日本だけではありません。
 だからこそ、私は「さよなら、CHAdeMO」と言わないのです。その真の価値を見極め、一方で、世界の潮流に逆らうことなく、他の充電方式との互換性を持つなど、更なる進化を追求することが必要です。未来の電気自動車の世界は、単に「移動する道具」ではありません。社会のエネルギーの一端を担う何かになるべきなのです。


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