寒くなってきたから暖を取れそうな暖かいアルバム10選紹介します
朝起きて仕事をして家に帰って飯食って寝るだけの繰り返し、どうも◯代目です。
いやはやTwi...Xもnoteもサボりにサボっていたら、もうすっかり10月下旬(この記事書き始めた頃)です。ナンバーガール風に言うなれば、赤い季節到来告げてってやつですよ。とほほ。時の流れは早いですね。というか時間の経過早過ぎませんかね???だってこないだまで半袖半ズボンでぎゅうぎゅうのぎゅうのZOZOマリンスタジアムで、ポカリ没収されて炎天下の中でNewjeans見てたのついこないだですよ???このときのスピード感やばない???ジョルノ・ジョバーナかお前ら???スピード上げて摩天楼ダイブしてボリューム上げて今宵の共犯者なのかお前らぁぁぁぁぁぁぁぁ...あ!俺、ふざけた資格試験のせいでNewJeans見れてねえや!!!!!ハッハッハッハッ!=和田アキコ×4体
Q.E.D〜
(東京大学理III平成73年度入試問題出典)
さてさてそんなわけですっかり世間では紅葉の季節になりかけてきてるわけですが、そういう時になんとなく聴きたいよねってアルバムを、個人的にも振り返れるように文字にしてシェアしたいなと思う次第です。最近暗いニュースばかりだし、季節と音楽くらいには余裕を持ちたいなっていう個人的な思いも込みでこの文を書いております。
1.The Byrds「Turn! Turn! Turn!」
USフォークロックを代表するバンドにして、後世のインディーロックにも大きな影響を与えたバンドですね。
このThe Byrdsというバンドですが、個人的にはもっともっと評価されても良いバンドの一つなんですが、いかんせん時期によって作風がガッツリ変わるタイプのバンドなので一つの側面だけで捉えると痛い目に遭うバンドとしても有名です。ジーンクラークという優れたソングライターが在籍していたフォークロック期、ロジャーマッギンの独裁色が強くなったサイケ期、グラムパーソンズが参加したカントリー期、クラレンスホワイトなどの名手を迎えライブバンドとして成熟した後期といった具合に多様な変遷を経て深化していったバンドなんですよね。
今回紹介するのは初期のフォークロック期の作品です。一つ前の作品に当たるデビュー作「Mr. Tambourine Man」でフォークロックというジャンルを確立した彼らが、満を持して前作の方法論をより強固なものにしたのが今作の特徴で、中でも印象的なのがロジャーマッギンの12弦ギターが織りなす繊細な音色だろう。手編みのニットのように丁寧に丁寧に織りなすその煌めくギターサウンドがまた心地よく、そこに穏やかなコーラスワークが乗っかることで非常に秋の訪れを告げるような優しい雰囲気が聴き手を包んでくれる。なんだかのほほんとした気分で散歩に出かけたくなる一枚だ。
2.Fairport Convention「Unhalfbricking」
アメリカにてフォークロックの型を作ったのがThe ByrdsやBob Dylan、Simon & G arfunkelだとしたら、イギリスからの回答としてそこに一石を投じたのがFairport Conventionだろう。
彼らはいわゆるトラディショナルフォークと呼ばれる、まぁざっくり言ってしまえば昔から伝統的に歌われてきたイギリスの田舎を想起させるような牧歌的なフォーク(この説明が合ってるかは保証できん)を、エレクトリックギターなどの電子楽器を用いたアップデートさせたバンドでしてね。もうちょいざっくり説明すればプロテスト的な意味合いが強かったUSのフォークロックよりも、より民俗学的なThe 伝統!って感じのフォークロックを奏でてたのがこのバンドなわけです。
彼らのディスコグラフィとしては過渡期の作品として扱われる本作、実際最高傑作と名高いのは
次作の「Liege & Lief」なわけですが、本作を推す理由はなんと言っても秋っぽさがあるから。再生ボタンを押した瞬間からプンプンと漂うこの圧倒的な冬場の無印良品の店内BGM感。この無印良品感の正体はなんと言ってもフロントマンのサンディ・デニーの声でございまして、少しの太くて垢抜けないけど妙な安心感を覚える声がまた良いんですよね。そんな彼女が残した稀代の名曲「Who Knows Where The Time Goes ?」も非常に沁み渡ります。そしてなんと言ってもバンドアンサンブルもまた絶妙で、次作ではかなりロック的なアプローチの音の鳴らし方にはなるものの、今作はまだ素直にフォークをやってる意識の方が強いのも秋っぽさがあります。それでも名手リチャード・トンプソンのギターは随所に光っており、どの楽曲もどこか愉快で心に豊かさをもたらしてくれる懐の深さが感じれる作品となってます。
3.Wishbone Ash「Argus」
往年の名盤リストなんかでは結構常連だった作品の一つですが、近年の脱ロック史観的な名盤リストだと漏れることが多くなった70年代UKハードロックを代表する一枚です。
このWIshbone Ashというバンドの面白い所はアンディ・パウエルとテッド・ターナーという2人のリードギタリスト、つまりツインギターを武器にしたサウンドで人気を博した点だ。そしてこの二人のリードギタリストに加えてベースのマーティン・ターナーの3人でボーカルを取るシステムであり、かなり一人一人の総合力の高いバンドであることが窺える。ツインリードと言えば同時期のバンドで言えばデュアン・オールマンとディッキー・ベッツによるAllman Brothesbandや、カルロス・サンタナとニール・ショーンによるSantanaなどがいる。また同時期のハードロックでもLed Zeppelin、Black Sabath、Deep Purpleなどがいるわけだが、その中でもツインリードという武器を持ちながらもフォークやプログレにルーツを持ったWishbone Ashの際立つ個性は圧巻だ。
冒頭の「Time Was」でのアコースティックギターが奏でる秋の夕暮れのようなアルペジオに3人のコーラスには物凄い郷愁を感じる。そして雪崩のように展開される演奏は同時期のハードロックバンドと比べても切れ味のあるものだが、決して騒がしいというよりもどこか一歩引いた落ち着きがある。3曲目の「Blowin Free」も程よいポップさでまるでスキップをしたくなる軽快さがありつつも、ドライブするようなギターソロの応酬は見事である。そして今作のハイライト的楽曲でもある「The King Will Come」のアンディ・パウエルによるイントロのギターリフ、もはやボジョレーヌーボ-とでもいうべき芳醇な音色だ。哀愁×ツインリード×ハードロック=秋なんです。
4.Michael Franks「The Art Of Tea」
70sのジャズ・フュージョン・AOR界隈でも定番としてよく挙がるイメージがあるマイケル・フランクスの2ndですね。ここまでフォーク系の傑作が多かったですけれど、趣向を変えてジャズ系の一作となっております。いかんせんジャズに関しては筆者は疎いもので、この手のボーカルメインのAORってボズ・スキャッグスの「Silk Degrees」が一番古いイメージがあったんですけど、このアルバム「Silk Degerees」と同じ1976年2月リリースなんですね。今回の記事を核に当たって色々リサーチをかけて初めて知った新事実。
さてそんな今作ですが、一聴して分かるのはめちゃくちゃイージーリスニングな一枚だねということ。というのもマイケル・フランクスの優しい声色を活かしたささやかな歌唱、そしてそれを邪魔しないバックの控えめな演奏、主張しない控えめな美学がこのアルバムの空気を貫いています。それがよく分かるのがこのアルバムと比較されやすい作品と聴き比べればわかる(ちゃっかり他のアルバムも紹介する作戦)と思うんですけど、例えば同年にリリースされた先述の「Silk Degrees」なんかは西海岸の爽やかな情景に男の情けなさやロマンを哀愁たっぷり乗せた音感なわけで、同じく同年リリースのGeorge Bensonの「Breezin'」なんかはベンソンの細やかなタッチを活かしたギターサウンドを前面に押し出してるわけでな。あとは同じく都会派AORの傑作Billy Joelの「The Stranger」なんかはメリハリ強弱付けたポップサウンドで都会の喧騒を描いてるわけだけど、この「The Art Of Tea」はどうでしょうか???なんだかまるで薄暗ーい喫茶店の端っこの席で、ボブディランを聴きながら卵トーストをむしゃむしゃ食べて今日の夜聴くポッドキャストをどれにするか選んでそうな情景が浮かんできませんか??????ガロ風に言うならば片隅で聴いていたボブディランって奴ですよ。俺の予想だとこいつはタナソーと三原勇希のPOP LIFEを聴くと見せかけて、佐久間宣行のANNを聴いてうへぇ~芸人かっけぇ~ってなって、下北沢に向かおうとするも卵トーストだけで満たした胃袋に限界が来て東北沢で果てるタイプの勘違いサブカルです。とはいえ主張しない控えめな風情が、冬のぬっくりとした風情にピッタリなんじゃなかなという一枚ですね。
5.The Replacements「Tim」
80年代USインディーシーンの中でも傑出したシンガーソングライターの一人、ポール・ウエスターバーグ率いるミネアポリス出身のバンドです。80年代のUSインディーシーンを語るうえで避けて通れないのが、カレッジラジオと呼ばれる大学のキャンパス内や学園都市に開設される学生運営のFMラジオ局だ。広大な国土を持つアメリカにおいて、全国区の知名度を獲得するというのはメジャーレーベルに契約する一握りのアーティストだけなわけで、そんなメジャーレーベルへの対抗手段かつ若者の空気感をダイレクトに乗せれるカレッジラジオの存在はインディー系のバンドとの親和性が高かった。そんなカレッジラジオ発で人気が出た代表格が後にU2を脅かすほどの影響力を持つR.E.M.だったり、今回紹介するThe ReplacementsやHusker Duだったりする。他にもイギリスのThe SmithsやThe Cureといったバンドもカレッジラジオで人気を獲得したのをきっかけで、今もアメリカのカルチャーに大きな影響を与えることとなる。
さてそんなThe Replacementsだが、このバンドの絶対的な強みはポール・ウエスターバーグという稀代のメロディメーカーを擁した点だ。個人的にはUKのPrefab Sproutのパディと並び、80年代最も過小評価されているソングライターだと思っている。彼の紡ぐメロディは田舎臭い野暮ったさとどこか現状にうんざりした居心地の悪さを感じさせる。そんなメロディラインをすり切れたような痩せたパンクサウンドで奏で、ヘロヘロで壊れそうな魅力が詰まったボーカルで歌う。ほんとに田舎の空気感が見事なくらい一枚のレコードに真空パックされているので、おしゃれのおの字も無いくらい野暮ったい作品なのだが、押し入れから引っ張り出すと思わず微笑んでしまうような愛くるしい魅力が詰まっているのは確かだ。カレッジラジオのことを歌った名曲「Left of the Dial」も今作に収録されている。
6.Primal Scream「Sonic Flower Groove」
変幻自在な音楽性で時代を先取りしていったイギリスを代表するロックバンドPrimal Scream。彼らを語るうえでやはりよく挙がる名盤と言えば91年発表の「Screamadelica」で、レイブの空気感とサイケを織り交ぜたダンスミュージックで当時熱狂の最中だったマッドチェスタームーブメントの集大成とした時代を彩った傑作である。その後ルーツミュージックに傾倒したり、ローゼスのマニが加入してバチバチのテクノに接近したりするわけだが、意外と彼らの初期のキャリアに着目する人はあまりいない印象がある。というか「Screamadelica」以前以後では聴いてるリスナー層が全く違うとまで言い切れる。
というのも彼らは元々The Byrdsから影響を受けたジャングリーなギターポップバンドとして完成されていたからだ。そもそもフロントマンのボビーがThe Jesus And Mary Chainのドラマーという事実からも分かる通り、このバンドは系列で言えば4AD系列のバンドとも共鳴するようなドリームポップ系のバンドなのだ。そんな事実を強調するのがデビューアアルバムの今作なのだが、聴けばわかるが非常に完成度の高いギターポップを鳴らしている。Beach FossilisとかReal Estateなんかが出てくる20年前でこの鮮度のよさと枯れ具合である。特筆すべきはギターのジム・ビーティの存在で、ロジャー・マッギン譲りの12弦ギターで彩る煌めくようなアルペジオで聴き手に哀愁を想起させ、そしてその優しくも切ないソングライティングで感動をもたらしてくれる。今作はボビーとビーティの二人によって全曲作詞作曲されているが、ビーティは今作発表後に脱退している。今作時点ではバンドのキーパーソンだったビーティの脱退がバンドの音楽性に変化をもたらす要因となったわけだが、それもまた運命のいたずらのようにも思える。
7.スピッツ「名前をつけてやる」
はいー日本最高のロックバンドでーす。もはや説明不要の国民的ロックバンドだし、特に近年だとそんな彼らのキャリアの中でも屈指の金字塔のような扱われ方をするような一枚ですね。そういえばこの記事書いている間に、ハライチ岩井が19歳のおはガールと結婚発表してましたね。おめでとうございます!岩井と言えば、2021年のM-1で敗者復活から勝ち上がってクソ滑ってた時に、この「名前をつけてやる」のジャケ写がプリントされたTシャツを着ていたましたね。どうでもいいか。うん、今年もM-1楽しみだね。
というわけでこの「名前をつけてやる」だが、このアルバムをリリースした1991年にスピッツはメジャーデビューしており、「スピッツ」と今作「名前をつけてやる」をリリースしている。前作「スピッツ」ではからっとした夏を想起させるようなバンドサウンドとなっているが、今作は11月リリースということもあってか分厚くてぬっくりとしたスピッツというバンドサウンドだ。これがまた冬っぽく感じるというか、ちょうどクリスマスに向けてイルミネーションをちらほら用意し始めた街って感じの雰囲気がしてすごくいい。こういう少しダウンを羽織るか迷うそんなタイミングで、シャッフルで「鈴虫を飼う」なんかを聴くとなんだかほっこりしちゃって、軽いコーチジャケットだけ羽織ってよる散歩に赴き、家路に着く頃にはちょっと鼻をすすりながらコンビニでファミチキ買って駅前のベンチに座り、うふふきゃっきゃっ言ってる高校生カップルにケッてなりながら「プール」を聴いてしゅんって肩を落とす。そんな経験、したことはありませんか?どうでもいいか。
うん、今年もM-1楽しみだね。
8.Slowdive「Souvlaki」
Souvlaki
あぁSouvlaki
Souvlaki
今作については「秋に聴きたいSouvlaki」ということで丸々一枚レビュー記事を書いているんで、詳しいことはそっちを読んで欲しいんですけど、まぁ凄く秋!!!!!て感じの哀愁たっぷりな名作です。
あれは大学生の時だったかな、京都の嵐山に行ったときのこと。嵐電の嵐山駅から歩いて5分ぐらいのところにある天龍寺ってお寺がありまして、そこのお寺の目玉が外人がうじゃうじゃ来ることで有名な竹林の小径あるんでせっかくなら行こうってなったんですよね。でその中に曹源池庭園っていう、禅の世界観を表現したようなおっきい庭園がありまして、鯉が一杯泳いでいる静寂な湖とバックに聳え立つ雄弁な山のコントラストがこれまた良くてね。縁側に座りながら自然とSpotifyの再生ボタンを押して、庭園を嗜みながら聴く「Alison」はめちゃくちゃキマッちゃいましたね。その後寒空に震えながらアラビカコーヒーを川辺で飲んでたら、友人が死にたいってインスタのストーリーを上げてて、普段朗らかにお笑いとかサッカーの話をしていた奴から一度も出たことない言葉だったから、慌てて”生きろ”ってもののけ姫みたいな返信して、何かしてあげられないかやきもきしながら嵐電に揺られ嵐山を後にした。あの時、夕暮れ時でぼんやりと考えながら聴いた「Dagger」を今でも忘れられないのです。
9.the pillows「Please Mr.Lostman」
ロキノン系っぽいけど実はロキノン系じゃないバンドでお馴染みthe pillowsですね。90年代初頭のバンドブームから出てきたバンドの一つで、同期のミスチルやスピッツ、イエモンのようなヒットメイカー的なバンドでは無く、フィッシュマンズのように最初から唯一無二の音楽性を持ったバンドというわけでは無く、むしろこの「Pkease Mr.Lostman」発表に至るまでマーいビートやボサノヴァとか色々試行錯誤してたバンドという側面もあります。今作は彼らが注目されるきっかけとなった名曲「ストレンジカメレオン」を収録しており、その後のUSオルタナ的な作風に舵を切る作品となるわけだが、聴いてみるとどちらかというとThe Smithsのようなジャングリーなギターポップ風情のUKロックに近い質感である。
10曲41分とコンパクトなボリュームでありながら、どの楽曲も完成度が高くまさに捨て曲無しと言っても過言ではない。個人的には「TRIP DANCER」から「Swanky Street」までは本当に素晴らしく、どの曲も胸の中にしまい込んでおきたくなるとっておきな魅力が溢れている。「TRIP DANCER」のもどかしい恋心、「Moon is mine」の跳ねるようなリズム、「ICE PICK」の切ないメロディライン、「彼女は今日」の荒っぽいギターの音色の良さ、「ストレンジカメレオン」のどうしよもない寂しさ、「Swanky Street」はもう涙でぼろぼろ。当時厳しい立場に置かれていた彼らの悲哀がダイレクトに楽曲に反映されており、まるで秋の夕暮れのような哀愁がそのまま音になっている。夕方4時くらいの井の頭公園を散歩しながら聴きたいアルバム1位。
10.D'Angelo「Voodoo」
くっっっっっっっっそ大名盤。言うまでもなく現代ブラックミュージックにおいて最も重要なバイブルとして不動の地位を確立している作品だが、ことさらこの日本では良さが分かりにくい名盤の代表格としての地位も確立しつつあるのも事実。この作品特有のヨレたグルーヴの革新性が今の人に伝わり辛かったり、当時のヒップホップとブラックミュージックの分客だったり、Jディラの影響だったりっていうとこだったり、、、と色んな理由が考えられますが、結局つまるところ音の派手さみたいなところが無くイージーリスニングで終始してしまうってのが原因だと思います。だって今スタバとか行ったらこういう「Voodoo」の二番煎じみたいなネオソウル普通に店内BGMで流れてるやん?それくらい日本人にとってもイージーリスニングとしてこの「Voodoo」由来の音楽って沁み込んでるわけで、そういう下地があるからceroや星野源なんかも売れたって考えると、日本人ってスタバが結局好きだよねって話になるわけですよ(そういうことじゃない)
ただそういったグルーヴの革新性と共に忘れて欲しくないのは、ディアンジェロが不世出のソングライターであるという点。ディアンジェロの曲の凄い所は不快な要素が無いスケベってところ。彼を語るうえで避けて通れないアーティストに、マーヴィンゲイとプリンスという偉大な先人がいて、二人とも性愛をテーマにした楽曲を多く作っています。でその二人と比べるとディアンジェロの曲はいい意味で淡泊なエロスと言いますか、マーヴィンゲイのような甘美なロマンチックさや、プリンスのような曝け出すような大胆さというよりは、じわじわと熱して絶頂する快感があります。上手く言い表せないけど、この三人の中で女の子に引かれなさそうな変態は一番ディアンジェロだと思うんですよ。アルバムのハイライトに「Untitled(How Does It Feel)」というこれでもかという至上の愛、めためたに下品な言い方すると完全に"イクッ"曲を置いてますけど、こんなにエロい曲ですけど嫌らしさ全く感じられないじゃないですか???射精してるとこ見せてすげぇ...って言わせることが出来るのがこの人の凄さ…おっと、これ以上言いすぎるとどこかから怒られそうだから、この辺で終わらせとこう。
11.Real Estate「Days」
みんな大好きReal Estate、俺たちのReal Estate、Twitterで#realestateって呟くとアメリカの不動産業者から大量のフォロー申請が来るでお馴染みReal Estateです。万人に受け入れられるであろう優しいメロディに、ジャングリーで繊細なギターワーク、ゆるっとした世界観の楽曲が魅力ではあるがいかんせん地味。存在、佇まい、風格、全てが地味。別にディスってるとかそういうわけじゃなくて、本当にいい意味でも悪い意味でも地味。もっと多くん人に聴いてほしいバンドだけど、どのアルバムも80点前後くらいの出来で、しかも作風もそこまで大きい変化が無い。レコメンドし辛い!
というわけで今回紹介するこのアルバムは、筆者がReal Estateの楽曲の中でも最も好きな1曲と言っても過言では無い「It's Real」が入っている作品です。1曲目からエバーグリーンな「Easy」で始まり、ずっとこの不思議な夢見心地なドリームポップが続いてきます。でも彼らの鳴らすドリームポップって不思議と季節感が感じられるというか、秋の落ち葉の上をザクザク歩く楽しさが感じられるんですよね。ギターは結構サーフロック風情な夏っぽい情緒がありつつも、USのインディーフォークの影響も受けた向こう特有の土着のある音楽性が、夏から秋に切り替わる移り変わりのように聴こえるのかもしれませんね。「Kinder Blumen」なんかのギロっぽい音とかも凄く飽きっぽい。そして「It's Real」は10年代ギターロックを代表する金字塔のような楽曲だと思う、この小気味良さはめちゃくちゃ快楽。
12.Turnover「Peripherial Vision」
個人的にめっちゃ高校生の時に聴いてたアルバム。このバンドもかなり面白い進化の仕方をしたバンドで、元々はめちゃくちゃエモ系のバンドでデビューしたんですよね。そこからしっとりとした大人な味わいのドリームポップへと変貌し、最新作だとネオシティポップっぽい作風になったりと完全に別物になってしまった感は否めません(笑)。この世代のバンドってやっぱり00年代後半のポップパンクブームの影響下にあるバンドが多いから、エモとかマスロックからスタートしたっていう人たち多いですよね。The 1975なんかも前進バンドがエモ系だったこともあり、その時代の名残はチラホラ見えたりしますからね。
そんなわけでTurnoverの本作ですが、エモの焦燥感を残しつつもドリームポップのふわふわとした質感でコーティングした興味深い内容の作品となってます。ディストーションとオーバードライブでガチャガチャ鳴らす音作りから、リバーヴを目いっぱい効かせたクリーントーンのギターサウンドが主役になったことで理路整然となったことで、持ち味だったメロウな楽曲群の説得力がグンと上がった気がします。同時代のドリームポップ系のバンドが幻想性を追求するためにドリームポップになったのに対し、今作におけるTurnoverは楽曲をしっかりとリスナーに響かせるための手段としてドリームポップになった感がある気はします。またこのメロウな楽曲がすごく11月12月っぽさもありつつ、リバーブの効いた音作りが冬の訪れを予感させている気がしてそれもまた良きです。
13.Big Thief「Two Hands」
今USインディー界隈の中で最も評価されてるバンドの一組。バークリー音楽大学の卒業生たちによってブルックリンで結成された彼らだが、出てきた当初から確かなソングライティングとしなやかなオルタナティブサウンドで人気を得てきた。そして2019年に「U.F.O.F」でさらにフォーク・カントリーの方面へシフトしていき、同年リリースの今作の2作を以てして近年盛り上がりを見せるUSインディーフォークを牽引する存在になっていった。去年リリースした最新作ではより立体的で身体性が欠如するような独特のバンドアンサンブルへと変貌しており、今後も目が離せない存在だ。
さてそんな彼らにとってターニングポイントとなった2019年リリースの本作だが、砂漠にあるスタジオでほぼオーバーダヴなしでレコーディングされた音源は凄く生き生きとした質感となっており、こういうオーガニックでまるで耳元で鳴らされるような生感のある音作りは20年代のトレンドになったようにも思える。その中でも光るのがフロントマンのエイドリアン・レンカーの存在感であり、その細やかな息遣いだけで場に緊張感をもたらす。「Forgotten Eyes」での搾り出すようにして吐き出すその震えた声は、聴き手にこれ以上の回答は無いと断言させるような説得力すらある。代り映えの無い当たり前の日常の中にも、美しく光る瞬間があるということを、この作品を聴いているとふと感じるのである。
14.Kaede「秋の惑星、ハートはナイトブルー。」
新潟のローカルアイドルNeggicoのメンバーであるKaedeが、Lampの染谷太陽とウワノソラの角谷博英をプロデューサーに迎えて制作された作品。Lampと言えば近年なぜか海外で偉く評価されているバンドで、一時期のFishmans再評価の波よりも大きなムーブメントとなっている。近年のインディフォークの隆盛と、ベッドルームっぽい質感がウケてるんですかね?ぼくは密かにCymbalsも海外でウケたりしないかなと思ってるんですけど、皆さんはどう思いますかね?
さてそんな今作だが、染谷太陽がプロデューサーにいるだけあってめちゃくちゃLampの音してます。厳密に言えばLampのフォークっぽい感じが少し減退して、そこをシティポップ的なエッセンスで補っているという印象。これが作品全体にお洒落な印象を与えていて、それこそ質感で言えば先述のMichael Franksの喫茶店っぽさに近いんです。でもこの作品の中枢を担うのはKaedeの声、この人は歌に関しては技巧的な上手さは無いんですけど、時間を忘れさせてくれる不思議な声質がすごくチャーミング。これを控えめだけど居心地のいい絶妙な演奏で奏でることで、よりボーカルの持つ魅力を最大限に引き出し究極のグッドミュージックに昇華させているんですよね。このいつまでも抜け出せない居心地のよさはほぼ炬燵です。そう炬燵です。
15.Mitski「The Land Is Inhospitable and So Are We」
日本人もっとMitskiに注目しろ!でお馴染みのMitskiですね。三重県出身の日系アメリカ人のシンガーソングライターで、現在はニューヨークを拠点とし、アジア系という括りを超えてUSインディー界隈でも10年代を代表するアーティストとしての地位を確立しつつある人でもあります。音楽性としてはアメリカンロックなスケールの大きさを感じさせる楽曲を丁寧に歌いつつ、おしゃれインディーロック的なパキパキとした音像でスマートに聴かせている、なんというか"丁寧さ"っていうのが強みな印象があります。
さてそんな今作ですか、本記事で紹介するアルバムの中では一番新しい2023年9月リリースの作品です。前作までシンセもガッツリ使ってパキパキとしたインディーロックを鳴らしてた彼女ですが、今作ではかなりアメリカーナって感じの暖かみのある作風へと変貌してます。夕暮れの牧草地帯で鳴り響くかのようなアコースティックギターを軸とした楽曲が多く収録されてますが、その後ろで鳴り響くオーケストラや合唱が彼女の持つ雄弁さにさらなるパワーアップをもたらしてます。彼女はアメリカに定住するのは18歳になってからとのことだが、そんな彼女がここ数年のUSインディー界隈のミュージシャンの中でも一番アメリカの田舎が生み出すノスタルジーみたいなものを表現出来てるのは興味深い。それとシンガーとしても才能は光ってて、雄弁かつ繊細に奏でられる今作において、その丁寧な歌唱が作品に包み込むような優しさをもたらしててとっても良きです。陽が落ちるのも早くなってきた寒い時期だからこそ、帰り道に聴きたくなるホッとする一枚だ。
いかがだろうか?
冬場は寒さとかで体調崩したり、肩こりが酷くなったりと色々大変なので、このアルバム聴きながらぬっくり過ごしましょ。
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