「知ることでスポーツ環境が変わる。」

画像1 世界には数え切れないほどの人工芝メーカーが有る。 人工芝と言ってもいろいろ。 スポーツ施設用と一般装飾用に庭用人工芝、作り方は一緒でも、中身はまるで違う。 見た目に誤魔化されると大変なことになる。 スポーツ用の人工芝は各種国際スポーツ団体で基準を決めて、製品品質を確保している。 写真はFIFAのホームページに掲載されているもので、FIFAが優良と認めたメーカーが掲載されている。 これらのメーカーの製品は一定レベルで品質保証は出来るが、鵜呑みには出来ない、注意は必要だ。
画像2 この画像も同じくFIFAのホームページに掲載されている、FIFAライセンス工場である。 優良工場7社、ライセンス工場は27社が掲載されている。 最近は中国企業が目立つ。 「私の会社はFIFAの認定を受けております。」と言うのが、中国企業の売り文句。 騙されない方が良い。 FIFAの認定はそう難しいものではない。 一定の工場で有れば、申請と支払いをすれば良いだけの話。 要するに「マーク」を買うことで、お客さんに安心を売ろうとする。 それでビジネスになるからマークは安い買い物だ。
画像3 人工芝で重要なことは、糸の品質と、糸を縫い付ける基布の材質。 後は糸を固定する技術。 世界中に有る人工芝メーカー。 ドイツ、オランダ、スペイン、イギリス、アメリカ、イタリア、チェコ、デンマーク。 そして中国。中国国内だけでも100社は有る。 日本国内でのスポーツ用人工芝販売数は約120万平米程度。 世界的にはかなり少ない。 中国企業が日本に売り込みするのは、中国国内で販売する為。 日本で使われているが、ステータスになる。中国では一つの省でも300万平米以上が販売されている。
画像4 人工芝で重要なのは糸の品質。 糸のメーカーから購入して人工芝を作るメーカー工場と、原材料を溶かして、糸から全てを作る工場がある。 糸の品質によって価格も違う。 耐久性ももちろん違う。 原材料を溶かして糸から製造する工場は少ない。 そうした工場は、製造開発に力を入れている。ある意味で安心信頼できるメーカーとも言える。 ドイツのポリタン社やオランダのテンカテ社は人工芝メーカーとしてだけではなく、糸のメーカーとしても有名だ。 この2社は日本の大手も採用している。 私もポリタン社とは、直接取引をしている。
画像5 なかなか糸を作る工程や原材料は公開してくれない。 企業の秘密が満載だから、産業スパイを警戒する。 この糸の品質とボリュームが、人工芝の価格に大きく関わる。 使う原材料によって、スポーツ用糸、鑑賞用糸、庭用糸等に分類される。 間違っても人工芝を同じに見てはいけない。 日本のホームセンター等で売られている人工芝は、ほとんど最下級品。 それでもFIFA認定××なんて書いたりしているので、要注意。 しかも高い!高過ぎる。 私なら1平米500円でも買わない。 2000円、3000円?とんでもない。
画像6 溶かした原材料を、人工芝用糸に加工していく。 昔の人工芝ねスポーツ用糸は150μから200μ(ミクロン、糸の厚み)が使われていた。今の主流は250μから450μ。 もちろん糸の厚みが増せば、人工芝全体に使用する原材料が多くなるので、人工芝の価格に反映される。 糸の厚みがある=良い製品では無い。 天然芝の厚みから考えると、450μなんてゴワゴワするだけだ。 糸の屑が嫌だと言う日本人向けの人工芝で謳い文句に意味はない。太けりゃ強いのは当たり前。むしろ難しいのは、薄くて強いだ。安くて強いだ。
画像7 こうして作られた糸を何本使うか? 例えば、1ロール1000円の糸を何本使うか?それが人工芝の価格の目安になる。 なかなか一般の人には糸の品質迄はわかりにくい。 糸の原材料が何であるか、原材料を生産しているメーカーはどのメーカーか? 原材料の配合はどうか? 太いだけでも折れやすく、切れやすいものも有る。悪質な原材料で作れば、いくら太くしても無駄。 そこにメーカーの技術が集約される。 人工芝は毛足が短く成れば安くなるかと言えばそうではない。短くても高密度な人工芝に成れば、それだけ糸を使う。
画像8 大型ミシンのような機械で糸が縫い付けられていく。縫い付けると言う表現が正しいか分からないが、4メートル幅の布に糸を等間隔で縫い付ける。 絨毯の製造に似ている。 一見同じくみえる人工芝。同じ長さの人工芝でも密度は違う。 糸を縫い付ける幅。縫い付ける縫目が微妙に違う。 そして糸の太さ。これらをトータルして密度と言う。 1平米当たりに使われる糸の量。これが目安基準。 あとは糸の品質。 人工芝の製造機器はオーストラリア、イギリス、ドイツ製が多い。 中国の企業もこうした国の機械を使っている。問題は原材料。
画像9 縫い付ける幅とミシン目間隔。 ロングパイルと言われる45mm以上の人工芝は比較的に溝の幅が広く、短い人工芝は縫い付ける幅が狭くなる。 この一山一山の縫い目が1mm違っても全体のボリュームはかなり違うし、縫い付ける幅が1mm違っても密度はかなり違う。 人工芝は一つの目に5本から6本の糸を縫い付ける。2つ折りで縫い付けるので、一山の縫い目から10本から12本の糸が出る格好だ。 一山抜いてみるとわかる。 1mmに誤魔化され無いことが肝心だ。 先ずは基本。 価格の比較対象の役に立つ。
画像10 写真では見にくいが、縫い付けた糸が抜けない様に、バッキングを行う。 ポリウレタン等の樹脂を溶かしたものをコーティングして行く。 このコーティングも重要です。 直ぐに削れて剥がれるようなものは、あまり良くない。 芝糸が抜ける原因と、後々の人工芝の剥がれの原因になる。
画像11 綺麗に縫い付けられた糸の長さを均一にカットして表面の処理は終わる。 縫い付ける段階で、自動的に芝糸の長さがカットされるが、最終的には人力で点検カットする。この作業には人数を必要とする為に、人工芝の製造は人件費の安い国で作るか?人件費の安い人材を海外から雇用するかになる。
画像12 高音の乾燥炉でバッキングした樹脂が固められ乾燥する。 この工程め重要で、バッキングの品質は人工芝の耐久性に直結する。
画像13 樹脂のコーティングが上手くいかないようだと、基布から簡単に剥がれてしまう。 こうなると糸は抜けやすくなる為に耐久性が落ちる。 正確に製品を見る為には、こうしたところも確認する必要がある。 人工芝は表側の芝糸を見ることも大切なことですが、最近の芝糸はかなり品質が向上している。 余程の粗悪品で無い限り、耐久性に遜色がない。むしろ裏側の基布の品質の方が重要だ。基布は長時間雨水に曝される。乾燥と水没を繰り返すと、水素結合、加水分解を引き起こし劣化する。
画像14 芝糸を固定する為の、コーティング樹脂が劣化すると、芝糸が抜けやすくなる。 日本では、良く人工芝の糸カスが問題になる。日本の人工芝グランドは管理状況が悪い。全くメンテナンスをしないグランドさえ有る。 天然芝はメンテナンスと維持管理が大変。 管理費用が高額なことから人工芝グランドが普及した。 メンテナンスが少なく済むが、メンテナンスをしなくても良い。そう勘違いされていることが多い。やはり、人工芝もメンテナンスが肝心で、最低週一程度はした方が良い。 メンテナンスと言っても、大した作業ではない。
画像15 あえて言えば、人工芝にランクは無い。車で言えばレクサスとカローラクラスの違いはひと目でわかる。 人工芝の場合は、売値が決まってないだけに、厄介だ。 売値が決まってないとは、日本だけのはなしで、製造メーカーには、ちゃんと決まった価格がある。FIFAは製品のクオリティ検査期間をいくつか指定している。残念ながら日本には無い。メーカーが無いからである。そうした検査期間もFIFAのホームページに掲載されている。写真は2012年のもの。当時の推奨メーカーだか毎年同じメーカーが登録してる訳ではない。
画像16 FIFAは本当に様々なデーターを発表している。天然芝と人工芝の違いのデーターも沢山掲載させている。各年代のトレーニングの基準など様々なデーターが満載である。 製品テストについても詳しく説明している。 JFAのホームページとは大違いだ。FIFAのホームページの丸写しでも素晴らしい内容に成るかと思う。 JFAでも人工芝についてはラボテストと言うのを、カケンと言う会社にお願いしている。ラボテストに合格した人工芝はJFA公認として認定される。馬鹿らしい話だ。 海外から製品を購入してテストを受けて自社名で登録?
画像17 全くあほらしいシステムだ、JFAのホームページにはJFAラボテストに合格した人工芝が山ほど登録されている。 いったいいつの時代の人工芝?そんなものは、中国産の訳の分からない人工芝でも合格する。 役所工事は、JFA認定品となる。 全く分かっていない。 例えば、ドイツのポリタン社などは世界的なメーカーだ。とにかく製品が素晴らしい。日本でもポリタンから糸を購入している会社は有る。因みに当社は製品で購入して販売している。こうしたメーカーもFIFAに登録している訳ではない。製品に信頼が有るから今更なのだ。
画像18 日本のラボテストがいつからのことかは記憶きないが、当時からの製品が記載されている。A社は20品種、B社は15品種とか、いったいいつの時代の人工芝だ? 製品てして在庫しているなら、10年前の人工芝などお粗末だ。時代が違う。数を登録する事で競ったり、それが信用になると思うからお粗末になる。 弊社のはJFA認定の人工芝です。それだけで説明が終わる。 値段もユーザーの懐具合を勘ぐりながら、後日見積もりと成る。 見積もりを見ても、いったい人工芝の価格ってどれ?って感じだ。
画像19 ドイツのケルンで2年に一度開催されるスポーツ界最大のイベントが面白い。FIFAもブースを出している。人工芝メーカーもかなりブースを構えているが、ここに来ると、様々な人工芝の比較が一気にできる。 メーカーの製品クオリティもよく分かる。 毎回登場するメーカーもあれば、一回きりのメーカーもある。やはり、ドイツのポリタン社、オランダのテンカテ社は良いと思う。 その他では、domo社、soltex、フィールドターフ、グリーンフィールドなどはさすがだ。写真の芝糸ですが、ダイヤモンドや芯ありなどは特に意味が無い。
画像20 とにかく、日本では大間違いなことが横行している。 これはJFAに大きな問題がある。 施設担当者の癒着かなんかは知らないが、全く勉強されていない。 アスファルトやコンクリートがマストで有るかのような施工図まで掲載されている。 いったいいつの時代のものだろう? ドイツのサッカー協会のホームページにあった!1985年代のドイツのものだ! 実に35年前の施工ではないか。ましてや暗渠排水管とか、散水システムとか、どこかの体育施設屋の手ほどきでしかない。 企業のためではなく、選手の為を考えて欲しい。
画像21 FIFAは施工についても詳しく説明をしている。グランドはあくまでも選手が安全にプレーできる環境にするもの。 下が硬かろうが、どれだけ怪我が増えようが、温度が50度を超えようが、平気でサッカーをする。 しかも毎日。文明社会とは思えない。もはや狂気の沙汰でしかない。 もう少しスポーツ文化について考えては如何でしょうか? JFAもイノベーションが必要に思う。 どうせ施設担当と話したところで、大手の言いなり。 甘い汁にどっぷり浸かるだけで、話にならない。 やはり、現場から理解してもらうしかない。
画像22 さて、スポーツ人工芝とランドスケープ人工芝。 ここで紹介したいのは、ランドスケープ人工芝。 恐らく、日本のホームセンターにあるような人工芝は半端もの。 スポーツ用人工芝の会社が、余った人工芝で作った一般家庭用。 殆どは中国産のもので、なんでも売れれば作る中国企業らしい。 品質は度外視の見た目だけ真似たもの。 それに比較してヨーロッパには、専門のメーカーがある。スペインやオランダ、デンマーク、ドイツなど。 製品のクオリティは全く違う。触って踏めば誰でも一目瞭然。 それにしてもホームセンターの芝は高い!
画像23 毎回訪れるポリタン社のブース。歴史が50年もあり、技術は最先端を行く。とても勉強に成る。 これまでに見た中で、ポリタン社、JUTA、domoグラス、soltex社、フィールドターフ、グリーンフィールドなどは特に素晴らしい。イタリアの人工芝については中国生産が多く2番手レベルだろうか?ただ、イタリア系はなんでも高く売ろうとする。コスパは良くない。 中国メーカーは特に気をつけたい。私の知るところで、信用できるのは3社くらい。 安くて我慢できるなら使えなくはない。 あとは利用の頻度にもよる。
画像24 元日本代表の城さんと対談したことがある。 日本ではグランドにこだわりすぎることがある。その理由は、あまりにも人工芝が高いからだと話した。サッカーにどこまで必要なことか?これはグランド施工のことである。天然芝が土の上なら、人工芝もやはり土の上。無駄にお金をかけて怪我をする必要は無い。 そして不明瞭な人工芝の価格。 グランド費用が想像出来ないのは、オープンプライスだからである。 海外のメーカーに直接問い合わせすれば分かる。日本の企業は少なくとも更に安く仕入れているはず。 文化を作る為に変わる必要がある。

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