170616 [TEN 公演]「ジョンヒョン、境界を壊す」


ジョンヒョンは、境界を壊すアーティストだ。彼のステージを見ていると、「アイドル」と「ミュージシャン」を区分することが無意味だということを悟る。アイドルグループ SHINeeのメインボーカルであると同時に、シンガーソングライターとして彼は歌唱者と創作者を自由自在に行き来し、「完成形ミュージシャン」に近い姿を見せてきた。彼のソロコンサートもやはりそうだった。

5月からソウル市江南区三成洞 SMTOWN COEX ARTIUMシアターで20回開催される「The AGIT ガラス瓶の手紙(The Letter)- ジョンヒョン(The AGIT ガラス瓶の手紙(The Letter)- ジョンヒョン)(以下 ガラス瓶の手紙)」は、華やかなアイドルコンサートを見るようでもあり、また、小劇場公演だけがくれる些細な面白みも感じられ、ジョンヒョンと直接会話を交わしながらラジオを聴く雰囲気も感じる。

14日午後、「ガラス瓶の手紙」14回目の公演を訪ねた。「ガラス瓶の手紙」は、ジョンヒョンの3回目のソロコンサートで、ジョンヒョンが高麗大学 ファジョン体育館を経て、再び小劇場であるARTIUMシアターに帰ってきた公演でもある。

ステージの幕が上がり、華やかな照明の中に登場したジョンヒョンは、「She is」、「White T-shirts」、「Crazy(Guilty Pleasure)」、「Like You」などを続けて歌った。驚いたのは、オープニングから観客全員が立ち、ジョンヒョンの華やかなパフォーマンスを一緒に楽しんだということだ。

ダンサーたちと共に致命的な雰囲気を誘った「Suit Up」と「宇宙がある」まで終えた後、ジョンヒョンは「AGIT公演といえばミニマルな、バランスの取れた繊細な公演を想像される方たちもいるでしょう。僕は異なった感覚を与えたくて、スタートから立ち上がってもらいました。」と笑って話し、「コミュニケーションを取れるセクションもあるので、ご参加よろしくお願いします。」と頼んだ。

また、「AGITでのリアルさ、コミュニケーションを取る時に感じる温度がすごく気持ち良いこの場所で、長期公演を開催することになりました。」と小劇場に帰ってきた理由を明らかにもした。ジョンヒョンは、「今日が14回目の公演ですが、それくらい僕も(実力が)上がるしかないんですよ。ペース調節をどこでして、どのようにすれば観客の方たちがより見やすくなるだろうかという計算などを徹底的に進めています。覚悟されると良いですよ。」という可愛いお願いを付け加えたりもした。



オープニングでのジョンヒョンがアイドルだったなら、その次にはDJに変身した。セクションを繋ぐ公演VCRでジョンヒョンは、それぞれ異なった哀歓を持つ転校生、就活生、社会人、老人からの手紙を貰って読む姿が詰め込まれた。ジョンヒョンはこの後、「1000」と「ぼーっとしている」を歌い、観客たちにヒーリングを贈った。特に「ぼーっとしている」のラスト、曲のコンセプトに合わせてアイマスクをつけて歌を歌った彼が、アイマスクをこっそり下げてカメラに向かってウィンクする姿は、「天生アイドル」ジョンヒョンを感じることができる場面だった。

MBCラジオ「青い夜、ジョンヒョンです」を1155日間進行したジョンヒョンは、さすがの流麗な話術、穏やかな口調で夢に対する話を打ち明け始めた。そして、観客たちから共感を引き出した。

「僕は、他の人から見ると、夢を叶えてやりたいことをすべてやって生きている人じゃないですか。ですが、まだ僕は夢を探しているところなんです。夢を叶えた者として見せることが好きだ、嫌いだという話ではなく、僕の基準において夢をまだ見つけられていないので、他人の基準に合わせて、誰かを慰めてあげたくはないということです。誰かが僕を成功した人として見るからといって、自ら他人を慰めたり、偉ぶったり。…結局、僕はまだ夢を見つけられてないんです。皆さんは?」

実際にお便りも受けた。観客の中のひとりから事前に受けたお便りを読んで、即席でインタビューも進行した。ジョンヒョンは、『辛い時に慰めることができる曲を何曲か書きました。実は、慰めるのは得意なほうではないんですが、僕の業の中のひとつがDJだったので悩み相談をたくさんすることになりました。やりながら感じたことは、辛いと感じている人たちに「ファイティンという言葉ばかりを言うことが慰めではないということ」』と話した。

そうして彼が選んだ方法は音楽。ジョンヒョンは就活生だというお便りの主のために、「明日あたり」という歌を歌ってあげた。観客たちは、半月ベルという小さな楽器で曲にリズムを合わせた。会場に集まった全員がひとつになって誰かを慰めてあげる、心温まる風景だった。



「ガラス瓶の手紙」のメインは、このセクションではないだろうか。「暖炉(Fireplace)」から「放して(Let Me Out)」、「Elevator」、「1日の終わり(End of a day)」を立て続けに歌った時だ。ジョンヒョン自らも、「感情的や技術的にも歌うのが難しい歌」と言うほど、切なさと慰めなどの感情を込めた曲たちだ。ジョンヒョンは特に「暖炉」について、「僕の部屋に白い暖炉があります。その暖炉は一番最初に手に入れた時は本当に浮かれて、たくさん整理して気を遣って大切にしていました。人が僕の家に来ると、一番に自慢したりもしました。その冬から少しずつ時間が流れる内に自然と忘れていたんです。夏頃になると、ドアを開けるとすぐに見える暖炉を忘れるようになっていました。僕が暖炉だったら、本当にやりきれなかっただろうと感じました。暖炉だけではないでしょう。人である可能性も、趣味である可能性も、おそらく皆さんも持っているでしょう。大切に思っていたのに、忘れてしまったもの。誰かにとって僕が、あるいは何かが僕にとって、僕は忘れられることに対する悲しさを持ってこの歌を書きました。」と告白したりもした。ジョンヒョンの作業秘話と共に聞く「暖炉」は、特に心を泣かせた。

最後にジョンヒョンは、デュエット曲の「Love Belt」と「Lonely」を観客と一緒に歌った。ゲストをひとりも呼ばず、2時間余りのステージをギュッと満たしたジョンヒョンと観客たち、そしてバンドなどがフィナーレまで飾ったこと。アンコール曲で「Deja-Boo」リミックスバージョンと「Fortune Cookie」、「Beautiful Tonight」まで歌ったジョンヒョンは、この日観客たちがジョンヒョンへ向けて準備したイベントスローガンを見て、明るく笑った。

「今、君の愛し方が分かった。ありがとう。いつもそう思ってるよ。」関係というものは、コミュニケーションを取ることが楽になれば、さらに持続がうまくいくじゃないですか。与え方、受け取り方を知ればいい関係を、さらに長い間、維持することができると思います。皆さん、僕の愛し方をご存知ですか?(笑)そのスローガンにはきちんと書かれていませんが、僕を理解してくださってありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」



全曲自作曲でギュッと詰め込んだステージ、バンドと呼吸が引き立ったライブ、ダンサーたちと小さなステージをどの公演より豊かに飾ったパフォーマンスまで。感情、技術、どれひとつ非の打ち所がない歌唱力はもちろん、言うまでもない。彼自体で、完成型ミュージシャンと呼ぶに値するジョンヒョンに出会った時間だった。公演は、今日(15日)から18日、来月2日まで、6回公演を残している。



LINK☞︎ http://tenasia.hankyung.com/archives/1233946

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