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Challenger Banking News #5

色々と慌ただしいですが、いつも通り、2週間分のチャレンジャーバンクを中心に海外のFinTechニュースをお送りします。

規制改革により英国銀行のオーバードラフト費用体系を標準化

FCA(英国の金融当局)により、2020年4月から、金融機関のオーバードラフト費用体系が統一/簡素化されます。

FCAは、2019年6月の時点で利用者保護の観点から、煩雑かつ過度なオーバードラフト費用に対する是正措置を公表していました。

現在の一般的なオーバードラフト費用体系は3つです。
・貸越(マイナス分)残高総額に対する金利
・貸越日/月単位で発生する固定費用
・金利無料枠の超過分に対する金利(利用者ごとに一定額の無料枠が付与される場合がある)

今回のオーバードラフト費用ルール変更により、オーバードラフト費用は「貸越残高に対する金利」に集約され、他の課金体系は廃止となります。

課金体系が標準化されることにより利用者保護に繋がり、FCAによれば、経済的にも70%の利用者が本変更の恩恵を受けるか、あるいは費用に変更がないかのいずれかに該当するとのこと。

[各金融機関の当座預金の金利無料(一部固定費あり)枠内のオーバードラフト費用体系のbefore/after]

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Monzo, Starling, Virgin Money等以外の金融機関の金利は押し並べて35%-39.9%で、これだけ見てもChallenger Bankに流れる理由が分かりますね...

ちなみに、Monzoは以下の通り、50p/dayの課金体系を廃止し、利用者のクレジットスコアに応じて年利19%, 29%, 39%いずれかの課金体系に移行します。

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今回取り上げたのは、FCAによる規制改革のごく一例で、あまり知られていませんが、CMA(公正取引委員会に相当する機関)主導で、以下のような具体的な施策を着実に実現しています。

[英国はなぜオープン API を促進するのか - 野村資本市場研究所]

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最もインパクトが大きいのは、おそらく「カレントアカウントスイッチ」という利用者が金融機関を切り替えたいときに、既に登録しているクレジットカードや公共料金等の口座引落の変更手続きを新旧の金融機関間で行ってくれるというものです。

これにより累計600万口座の切り替えを実現しており、こうした地道な取り組みがチャレンジャーバンク発展を支えていたりします。


Robinhood, 取引急増により取引一時停止

チャレンジャーバンクではないですが、FinTech界隈では大きなニュース。

3月2日、Robinhoodがシステム障害によりサービス一時停止しました。コロナウイルスの影響で2月末に株式市場は下落していたところ、3月2日に急上昇したことで、買付を急ぐ利用者が殺到したことが要因とのこと。

ロビンフッドは同日夜、一連の売買停止騒動について声明を発表。原因について「歴史的な相場の急変動で売買や顧客ログインが集中し、システム処理が追いつかなかった」と説明し、謝罪した。売買急増などに対応できるよう、システム強化を進めている。

その後、twitterに「ロビンフッド集団訴訟」アカウントが開設されており、3月10日現在フォロワー数7800人超となっています。実際に既に訴訟を起こした利用者も出てきています

Robinhoodはその後、代償として有料会員に対して3ヶ月間分の課金免除を公表しました。が... その矢先3月9日に再びサービス停止を起こしてしまい、しばらく尾を引きそうです。


Barclays, 公共料金乗り換えのOpen-Banking Platform, Youtilityに出資

Youtilityは、電気/水道等の公共料金や携帯電話の事業者を個人顧客の銀行口座を連携する仕組みをOpen-Bankingのホワイトラベル方式で提供しています。

顧客の家計簿分析や、公共料金等の事業者比較機能がパッケージングされており、パートナー金融機関に提供している他、自社でも個人向けアプリを提供しているとのこと。

先日、日本でも新仲介法制が閣議決定され、2021年にも施行予定という話も聞きますが、正直プラットフォームモデルはそれなりに規模のある事業者でないと収益化が難しく、新規参入のハードルは相当高いと見ていたのですが、Youtilitのようなホワイトラベル型はポテンシャルがあるかもしれません。既存金融機関の顧客を対象に、公共料金や携帯料金等の比較/送客モデルですね。PayPayあたりは普通に自社でやってしまうと思いますが。

その他の主な記事

続いて、アメリカ、欧州中心にチャレンジャーバンク関連の記事を簡単にピックアップしていきます。


Unqork, Goldman Sachs等から$51Mを資金調達

コード不要のアプリケーション化・API化サービスを提供するUnqorkがGoldman Sachs等から$51Mを資金調達。

Unqorkというサービスは初めて聞きましたが、金融基幹システムのAPI化プラットフォームとしてTruelayerが外部接続用APIとして有名ですが、同じようなことを自社内システム内でカスタマイズしやすい状態にするサービスのようです。

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Mastercard, myPOSが欧州の中小事業者用カード決済拡販に向けて事業提携

myPOSは2014年設立でイギリス本社ですが、大陸国を中心に中小事業者向けに決済端末/EC決済を提供しています。

myPOSのHPを見ると、Visa等主要な国際ブランドを担いでおり(JCBも入っていました)、Masterとの具体的な提携内容は書かれていませんでしたが、Masterによるプロモーション費用提供あたりでしょうか。


分割払いプラットフォームのSplitit, Visaとの事業提携を発表

Splititはニューヨーク本社の加盟店向けに分割払い機能を提供するFinTech企業です。2019年1月にオーストラリア証券取引所でIPOしているんですね。

今回の提携を機に、Splitlitの加盟店を対象にVisaの分割払いサービスも導入していくとのこと。


Draper Esprit, Thought Machineの$83mの調達をリードで出資

今回リードのDraper Espritはダブリン拠点のVCで、RevolutやTransferwiseにも出資しています。

Thought Machineはクラウドベースで基幹システムを提供するFinTech企業で、同社のCEOは元GoogleのエンジニアのPaul Taylorで、既にLloydsやStandard Chartered等の大手金融機関を顧客として抱えています。今回の調達によって、アメリカ/APACへの事業拡大を進めるとのこと。


Monzo, 400万会員到達も成長速度は減速

Monzoは約5.5ヶ月で会員数300万→400万まで到達しましたが、200万→300万までが4ヶ月だったので、成長速度が鈍化していますね、ということです。2019年5月にTVCMを打っているので、その影響かもしれません。いくつかクリエイティブがあるようですが、こういうのですね。


今回は以上です!次回の配信は3月23日の予定です。


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