動物愛護法というデタラメを暴く
今週末の20日から大阪十三シアターセブンにて1週間限定公開されます。
東京ー横浜ー名古屋ー千葉と続きましたが、
これで所謂一般劇場公開は終了になります。
https://www.theater-seven.com/mv/mv_s0470.html
2017年に埼玉県で起きた連続猫惨殺事件で逮捕された元税理士の男の裁判。
結局、執行猶予判決という茶番で幕を閉ざした細谷泰暢裁判長に対して、
どうにも納得がいかない想いが、このドキュメンタリー映画『動物愛護法』を作らせた原動力である。
とは言え、題材が【動物愛護法】と漠然とし過ぎて、一体何をどのようにして映画として表現して良いのかさっぱり見当がつかなかった。ただ、思いだけが先走ったのだと思う。
先に述べた動物虐待犯である元税理士の男を追い続けても、逆にこっちがストーカー扱いされて映画的にも面白くないだろうし、でも動物愛護法という僕のような素人がみてもいい加減な法律を横行させてはいけないし、そこは相当に悩んだ。
当時は、山梨県の甲府に住んでいて、僕には勿体ないほどの素晴らしい奥さんと共に、とても幸せな日々を送っていたんだが、取材で幾度となく東京に出向くのと同時に、事件の真相を探るうえで実際の虐待動画を幾度となく調べていくうちに僕の精神はとことん壊されていった。
その微妙な心理は先日、ヤフーニュースにもなった元ソースに書かれていますので、興味のある方はお読みください。
インコを避妊具に入れ虐待、なおも不審死は止まず… 逮捕された30代男性と対峙したドキュメンタリー | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)
ずっと、悩んでいた。
頓挫もしかけ、ほんとうに止めようと考えていた時、確か2018年の春ごろだったろうか。僕のところに8万円程の大金が送られてきて、手紙には『北田さんが、元税理士が行った蛮行を映画にすると聞きました。ぜひご支援したいと思いお送りさせて頂きました。』と記載されていた。実を言うと、この一通のお便りの想いだけに絆されて、この映画は完成したと言っても過言ではない。その方のお名前は、エンデイングクレジットの一番下に、つまり『監督 北田直俊』のすぐ上に刻ませていただいた。
20代後半の一度も会ったことも、おそらくSNSでも繋がっていない方。
やはり誰かがやらねばという想いに奮い立たせて貰った。
思い起こせば、その前年に作った『アジア犬肉紀行』もそんな想いだけで突っ走り800万の借金と、中国・玉林チワン族自治区の取材では犬肉ブローカーに数時間も追いかけ回され、公安警察には僕の宿泊施設までガサ入れされ逮捕も覚悟したのも、そんな使命感に駆られた所以だろう。あの時は、ああ!スパイ容疑で10年は実刑を食らうのだろうと本当に覚悟した。異国の地で終身刑を食らった映画『ミッドナイトエクスプレス』の冒頭シーンがずっとリフレインしていたくらいだから。だが、公安警官は僕のパスポートをじんわりと目を通した後に、犬肉の取材をやめて明日の朝一でこの町から出て行けば今回だけは許してやると言った。こんな所で意地を張っても仕方ないので、すぐさま退散して次の取材地予定の広州市に逃げた。
その前の2015年『みえない汚染・飯舘村の動物たち』も福島原発に伴う居住制限区域・飯舘村に平山ガンマンさんと動物保護シェルターを立ち上げた時も、がむしゃらに皆さんにシェルター建設費用を求め、実際の建設業者にも頭を下げて工事をしてもらった経緯は、やはり使命感のみだった。
2013年に発表した『ZONE/存在しなかった命』もまた、立ち入り禁止区域での逮捕覚悟潜入撮影をした時も同様。(話が長くなってしまう・・・)
話を戻そう。それからはもう、猪突猛進の如く山梨を去り、単身東京に居を構え映画取材に没頭した。まず、様々な動物虐待事件から数件をピックアップし、犯人の居所特定に数か月を要することもあった。数週間の車中泊張り込みなんて当たり前だった。所詮は中国で10年間は刑務所にぶち込まれていたことを考えれば、朝飯前の苦行だった。
2017年の元税理士の裁判から始まり、2018年は生き物苦手掲示板に動物虐待の投稿を続けている人物を特定し、インタビューにまで成功した。そして、2002年に起きたインターネットによる動物虐待事件の幕開けとなった福岡こげんたちゃん事件の真相と、犯人の両親のインタビューも敢行し成功した。2019年は名古屋熱田区インコ虐待犯のインタビュー、2020年も同じく名古屋熱田区の有名老舗店による連続動物虐待事件を徹底取材、とまた同じく名古屋熱田区の連続猫踏み付け犯の取材と、名古屋名東区の名東警察による動物虐待事件のもみ消し隠蔽事案を取材、と書きながら名古屋はなんて動物虐待事件が多いのか不思議でならない。名古屋走りという揶揄した言葉が存在するが、やはり県民性が顕著になって現れるのか? そして、映画の終焉に差し掛かった辺りに東京都三鷹警察によるこれまた動物虐待事件の隠蔽もみ消し事案を取材し、最後は大阪の生き餌ユーチューバー問題に到着する。この生き餌問題こそが【動物愛護法】の脆弱と矛盾を分かり易く炙り出している。エンディングは警察関係者の『動物愛護法ってあるけれども、アレって法律なの? 正直言って警察は何もできません』というとても正直な台詞で締め括った。編集仕上げは2021年の夏になっていた。思えば遠くへ来たもんだ。116分の映画に仕上がった。まぁ、手前味噌じゃないが、きっちりと動物愛護法の無意味さというかデタラメさが子供が見ても分かり易く描けていると思う。そうそう映倫でPG-12評価なので、12歳以下は保護者同伴か、指導の下ならご鑑賞できます。PG-12は分かり易く説明すると映画『鬼滅の刃』がそうなので、ご理解いただけるだろう。僕自身はR-18を想定していたんですけど、映倫の職員さんもこの映画『動物愛護法』の本質テーマをご理解くださり、本当はG評価を与えて子供にも観て欲しいと仰ってくれた時は、憚ることなく泣いた。素直に嬉しかった。
そんな顛末で出来上がった記録映画『動物愛護法』だが、ひょんなことから文化庁の助成金で一本映画が製作できそうな話が舞い込んだ。そこで元々、この『動物愛護法』の中の一つのエピソードとして挿入しようと考えていた15分程の短編映画のシナリオがあった。しかし、それは書いていくうちにどんどんと膨れ上がって長編劇映画として仕上げないと厳しいと考えていた企画が『彷徨う魂』である。元々の主人公夫婦は20代で団地住まい。対する虐待犯は60過ぎの冴えない小太り独身ジジイの設定だった。最終的に書き上げてくれた脚本家の大春ハルオさんの案で、紆余曲折の末に固まっていった。
この劇映画『彷徨う魂』は2021年の9月に準備、10月新潟ロケで撮影。11月に編集仕上げの急ピッチで作った映画。同じ【動物愛護法】を扱った2本の映画だが、制作スタイルも撮影日数も大違い。こちらも良い作品に仕上がっていると思う。だいたい現在の日本映画が扱わない題材なので、稀有な立ち位置の作品じぁないのかな?
今後、この両作がどのようにしてじっくり化学反応していくか楽しみである。
そうそう、最後に言いたいのは、4年に及ぶドキュメンタリー制作で培った経験と知識を活かして、現在アニマルポリス(的)な活動を準備しています。まだ詳細は公にはできませんが、来年には発足する予定です。
かなり画期的な活動になると思います。
https://www.theater-seven.com/mv/mv_s0470.html
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