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ドラストールへの移住を望む者達へ

 ルナー帝国は、ドラストールへの移住を促進するために大がかりな宣伝を行っている。以下の文書は帝国属領地の行政機関ならどこでも閲覧できる。

ドラストールにの移住に関する通告

自由の土地! 何を信仰しても良い!
赤の皇帝は恩赦を宣する!

 リスクランドは大河に沿ったなだらかな丘と豊かな森に覆われた高地にある肥沃な素晴らしい土地だ。この地方の気象は、雨がよく降りそれぞれの季節は穏やかなので、オーランスを信仰する者が暮らしていくのにちょうど良い。この地方は、実り豊かな土、素晴らしい牧草地、豊かな森を備え、川は澄んだ水と肥えた魚に満ちており、他の既知の土地と比べても最も有利な特性を備えている。オーランスの聖地である雷鳴山やその他の山々は、悪天候時の避難場所になる谷間を幾つも有しており、嵐の季であっても、温暖な日が何日もある。

 タラスター国の筆頭部族であるビリニの尊貴にして寛大な王、“泳ぎ手”ハコンは、自らの息子、風の王にして大剛の戦士、混沌にとっての災厄である“岩石”レンコットに、この恵まれた地に新たな氏族を建てることを命じた。豪胆な戦士、頑強で真面目な農民が彼の守護の下に集まっている。今後、タラスター国のビリニ部族を支えるレンコット氏族として知られるようになるだろう。

 レンコット族長は、氏族、氏族の輪、族長に忠誠を誓う者であれば、誰であれ歓迎して迎え入れる。農場を経営したい者には、耕作のための広大な土地が、雄牛と鋤、氏族が共有する羊とともに下賜されるだろう。彼の戦士団に加入しようとする者は、生活は楽になり様々な助けも得られるだろう。成し遂げた思っている功績に対して公平な恩賞も与えられる。そして、血潮と栄光に満ちるまで混沌の汚らわしい落し子と聖戦を続けることができる。

 赤の皇帝は、リスクランドに限り、オーランスへの崇拝を禁止されない旨を皇帝の大権にかけて誓約した。

 リスクランドへの移住を望む者には、大罪への恩赦が認められることもある。

 興味のある者は、アーナールダの寺院、又は最寄りのルナー属領地政府の事務所に信書と誓約書を提出せよ。
 全てのやり取りの秘密は、真実と死を賭けた宣誓によって護られる。

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 以下の文書は、ドラストールへの移住に興味を持ったオーランス教徒が、タラスター国に住んでいる親族に当地の状況について尋ねた手紙への返書である。これが、ドラストールにたいするオーランス教徒の一般的見解である。

親愛なる従兄弟よ。

 お前は、ドラストールについて私が知っていることを教えてくれと言う。
 ドラストールは邪悪なる場所だ。不浄の三神が秘密裏に会合し、悪鬼を宿した地だ。すなわち、ドラストールは、世界で最初に冒涜がなされた場所だ。
 混沌の悪魔共が神々に抗った際に、奴らはドラストールで軍議を催した。ガージャボール、ポチャーンゴ、そしてワクボスといった邪悪なる者共が、言葉に言い表せぬ行いを為すために集まる魔都なのだ。
 オーランスが時を始め、世界を救った後、彼の神は、ドラストールに赴きこの地を一掃した。未だ存在していた邪悪の残滓はこそぎ落とされ、破壊できなかったものは、全て、休眠したり、分散したり、形を変えたりした。風の主は、ドラストールは浄化され、素晴らしい土地になったと断言したのだ。
 曙の後、全てが未だ平和だったころ、オーランスは、ドラストールに住まわせるための最初の人々を導いた。この者がカラスマスである。カラスマスとその仲間達は、この地を調べたが、全ては、オーランスの仰る通りであり、彼らは幸せに暮らし、次々と丈夫な子供を授かって大家族となった。カラスマスは、賢明で公正であったので、彼らの親族が大勢がここに住むためににやってきた。何年もの間、住み暮らし平和と豊作が続く中、繁栄した。
 そして、彼らは、ある日、悪魔達の古代のからくりを掘り出した。誰も、そいつらが恐ろしいものだとは思わず、そいつらのどこにも混沌の印はなかった。偉大なウロックス、“狂気の”パンガロンでさえ、ドーカットでそいつらを調べ尽くした結果、彼らは安全で害はないと断言したほどだ。
 それがドワーフだ。その中でも、特に片目で顎髭を蓄えた“鋼鉄髑髏”ファナックは、ファンジャレルを悪魔の所業に駆り立てた。奴らは、混沌が持つ邪悪さを信じておらず、だから、人々は奴らの危険性を悟れなかった。そして、短命かつ、自らの進歩に熱心な者達は、必要な賢明さは持ち合わせていなかった。
 他よりましな災厄は、第一評議会が滅びたことだった。ある者は、それが人の性であるというよりは弱さの言い訳だという。ドラストールの者達は、自らが他よりも優れていると思っており、実際、目立って注目されていたので、その賞賛に負けまいと考えていた。
 まもなく、ドラストールの者達の発言の重みは、他の賢明な助言や伝統を重んじる声、危険性への警告といったものよりも重くなっていった。低地人が自分達の反抗してきたとき、ドラストールの者達は、新たなる戦争を呼びかけ、多くの者が付和雷同した。ドラストールの民は、新たなる闘争には新たな指導者が必要だと言い、他の者達もほとんどがそれに賛同した。ロカマヤドンは、第二評議会を招集したが、それは破滅の始まりだった。
 ロカマヤドンは見境なく力を探し求めた。彼が見つけた神は、虚ろであり偽りであった。“裸足の”ハルマストは、神話の世界への探索行に赴き、解放のための足掛かりを連れ帰ってきた。彼は、アーカットを連れ帰ってきたのだ。アーカットは、ハルマストとは別に探索に赴き、軍を引き連れて戻ってきた。その後、彼は邪悪なものを滅ぼすまでは休むことはなかった。
 アーカットは彼の地を滅ぼし、全ての神々にこの地を呪うよう命じ、何人も永遠に近づかぬよう、巨大な目印を置いた。この地が終焉を迎えるまで、そうあるべきだった。
 そうは思わぬ者たち、他の人間とは異なる考えを持つ者達が、彼の地にやって来た。その者達は、自分達の敵であるドラゴンのやり口さえ用いた。この愚か者達は、ドラストールに入り込み、生命の呪いを再び目覚めさせるドラゴンの儀式を執り行った。堕落したドラゴンは人間を顧みるようなことはほとんどなかったが、我々に災いをなす混沌の悪を解き放った。
 そのとき以来、人の力は弱まり、混沌の悪が吹き荒れ、ドラストールを越えて穢れと疫病が撒き散らされた。小さな脅威は、しばしば我々の富や生活する領域の周りを忍び歩く。時折、ブルーの軍勢に率いられた混沌の大群が、ドラストールから這い出して来る。
 1104年にも、混沌は押し寄せ、我々は何もできなかった。我々は、風の主が我々とウロックスに力を授けてくれるまで、丘陵に逃れた。
 最近では、汚れた宿主が再び、忍び寄った。
 私は、貴方の意気込みに水を差したいわけではない、従兄弟よ。しかし、もし貴方がここに来る気なら、鋭い刃と闘争心を携えてくることだ。ドラストールの穢れが炎や剣や、嵐、英雄的な魔法によって永久に清められない限り、この地には平和はない。

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