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ドラストールにおける特殊な遭遇(3)完

プレートウォーカー(ライカンスロープ)
遭遇場所:地獄森

ドラストール01

 啓発されたフマクトの剣であり、彼の武装は全て鉄製である。彼は立ち上がると4mもある巨躯であるが、あくまで巨人ではなく、成長しすぎた人間であるとされている。彼は、出会う人間に対し友好的に振舞い、仲間になろうとするが、非人間、特にブルーやその他のろくでもない存在には嫌悪の情を示す。以前は、彼は熊人間(人間と熊のシェイプチェンジャー)であったこともあり、友好的な人間たちとともにあったかつての日々を思い出すのかもしれない。彼は、時折、まだ、自分の身の丈が普通の人間とさして変わらず、混沌の痕跡がごく僅かだったので自由に人間の街を訪れることができた、あの頃を懐かしむことがある。
 プレートウォーカーは、2足歩行のステゴサウルスに変貌するライカンスロープである。彼は、ステゴサウルスの形態の時に、自分の武器を使用すると同時に、尻尾を用いて打撃することができる。鎧は着ていないが、ライカンスロープとして通常のダメージへの耐性を持っている―もちろん、ステゴサウルスの形態の際の皮膚は、魔術によるダメージにも効果がある。
 もし、攻撃を受けたなら、彼はヒューマクトの決闘の儀式(死に至らない戦いも含む)を行うように主張しようとする。彼は、そのような決闘の場では、ステゴサウルスの姿を取らずに戦おうとするが、それ以外の形式の戦いであるなら、ライカンスロープとしての力を思う存分揮う。
 彼はソーリアン・ブルーの一党を憎んでおり、彼らを根絶することを誓っている。彼が、そのブルー達との関係を問われたなら、彼はそれについて語ることを拒絶する。

スカンス(男)&スカース(女)
遭遇場所:死霊ヶ原

ドラストール02


 この、奇妙なシャム双生児のような生物は、男女の組が男の左手と左足、女の右手と右足くっついたような見かけをしている。彼らは、同時に呪文を投射することが可能であるが、投射された側はそれぞれの呪文に抵抗できる。また、「ナイサロールの謎かけ」を数多く知っているが、一日に一つしか思い出せない(思い出す謎かけは日毎に変わる)。彼らは、様々な毒に対する解毒剤を調合することができ、灰の平原にすむ灰の男がもたらす疾病とその効果に対して耐性を持っている(ただし、彼ら自身は灰の男とは友好的である)。また、短距離(1Kmほど)ではあるが、瞬間移動することもできる。
 この強力な存在は、3つの目標に基づいて行動する。
(1) 食う。スカンスとスカースは、生きていくために魔法の品物を食べる必要がある。沢山は必要ないが、1~2週間に一回は食べなくてはならない。もし必要なら、出会った人間から可能な限り多くの魔法の品物を強奪しようとする。
(2) 繁殖する。彼らは、お互いに性交することはできない(しようともしない)が、代わりに普通の人間と熱心に性交しようとする。彼らは、性交することを無理強いすることはない―それは、明らかに魔法を台無しにするからである。彼らの相手は、自発的に性交に臨まねばならない。男と性交してから9日後、スカースは、グラーグを産む。もし、このことについて彼女に尋ねるようなことをしたら、彼女は失望の色を隠さない。どうも、彼女は、いつかは違う結果になることを期待しているうようである。彼女は、何を期待しているかを言うことはないが、彼女にグラーグでない子を孕ますことができる男がいるなら、彼女は、その男のために素晴らしいことを用意するだろう。スカンスと性交した女性は妊娠し、9ケ月後に出産に至る。その子供は混沌に汚染されているが、他の人間よりも全てにおいて秀でた能力を有している。このような子供達はルナーの奴隷商人にとっては垂涎の商品である。ごく稀なことであるが、女性が双子を出産した場合、その子供は、スカンスとスカースと同じく、シャム双生児の態で産まれてくる。これまでのところ、そのような双子は、全て死産となっている。
(3) ナイサロールの謎かけを行う。彼らは、まだ啓発されていない者達と出会ったなら、彼らに対してナイサロールの謎かけを問う。もし、謎かけを問うた者達が、謎かけを受け入れられそうなら、彼らはその場にとどまり、さらに多くの謎かけを仕掛ける。

スライムストーン
遭遇場所:灰の平原

 この巨大なゴープは、スライムストーンの廃墟を包み込み、ゆっくりと消化している。この怪物には、人間にとってはあまりに強大である。スライムストーンに近づく者は誰であれ、覆いかぶさるように移動するゴープの波に包み込まれる。また、スライムストーンの上を歩いている者に対しては、それを掴もうと小さな水たまりのようなゴープの溜りが滑り寄ってくる。ただのゴープであれば、その不器用な攻撃は、少し身軽な者なら容易に回避できる。しかし、怪物の上を歩いている者を飲み込もうとする攻撃は、自動的に、その者の両足を捉えてしまう。
 時折、スライムストーンから、新しく、風変わりなゴープが分裂するので、その地域は文字通り何千ものゴープが蔓延っている。


忌まわしいそれ(Thing)
遭遇場所:穢れの谷

 形なき、混沌の粘塊である。その外側はなめし皮のような被膜で覆われているので、ゴープとは明らかに違う。それが持つ力は、馬鹿馬鹿しいものから破滅的なものまで様々である。それは、短い時間に目まぐるしく変化し、その能力もそれにつれて変化する。その変化は、大きさや見かけのみならず、生命力や魔力、戦い方やその巧拙さにまで及ぶ。それは、幸いにも移動する速度はそれほどでもないが、精霊魔法は効かず、病気や毒にも耐性がある。
 通常、その忌まわしいものは身を守るためにしか戦わない。もし、それを殺したなら、それは魔法の品物を一つ生み出す。そして、それ自身は生命を得て、息を吹き返す。それを永久に死んだままにしておきたいのなら、それを1日の内に何回か殺さなくてはならない。
 忌まわしいそれは、かつて完全に殺されたことがあるはずである―だが、それはいまだドラストールに蠢いている。それは、怪物、それも全く類を見ない単一種の怪物を産み出すことがある。それは、かつて何度もスカンスとスカースに類するものと遭遇しており、過去に成功した交配の産物なのかもしれない。

イェーチ(Yeachi)
遭遇場所:地獄森

 イェーチはかつてはメイドストーンアーチャーだったと思われる。イェーチの一般的な戦い方は、2張の鉄製の弓による遠隔攻撃(もし可能なら、矢は2本同時に放つ)である。もし、敵の接近を許したなら、イェーチは、3つある頭と2張の鉄製の弓(杖のように振り回す)、尻尾、そして催眠能力で戦う。もし、攻撃を受ける必要が無いと判断した場合は、弓の代わりに自分の拳を使う。
 イェーチは、極めて高い知性を有しているにも関わらず、話すことができない。しかし、彼はほとんどすべての言語を理解することができる。彼は、他者と意志を疎通させるためには、身振り手振りや表情に頼らなくてはならない。もちろん、3つの頭で表情を作り、4本の腕で身振り手振りをするので、彼は、言葉に拠らない表現手段を数多く有している。
 イェーチの、もう一つの重大な欠点は、彼はあらゆる種類の魔術について学ぶことも使うこともできないということである。これは、彼が自分の傷を自分で癒せないという点で特に重大な弱点である。このため、自分が傷付くという稀な事態が起きた場合、治癒呪文を使える者を探し出し、彼らを説得して癒すように試みるかもしれない。この治癒の見返りに、イェーチは、その者達に何らかの財宝を提供するか、次の戦闘まで共に行動し、その戦闘において味方として戦うことを申し出ることがある。あるいは、彼が言うままに治癒をしないのであれば殺すと脅して、無理やりに治療させようとするかもしれません。
 イェーチの皮膚は腐食性であり、彼を攻撃した武器は、ひどく痛んでしまう。また、イェーチに投射した呪文は、ほとんどの場合、(彼に良い効果をもたらす呪文も)効かないか、吸収され彼の魔力になってしまう。また、イェーチの左の頭は、強力な《破裂》と同様な効果を与える力を持つ。右の頭は、金属にしかダメージを与えない特殊な歯を持ち、噛みついてくる。噛みつかれた部位の金属製鎧は、噛み砕かれることがある。その場合でも、その下の肉体は傷付かない。

ブルーの王、ラルツァカーク(Ralzakark, King of Broos)

ドラストール03

 この帝王の如きブルーは、ドラストールにおいて最も洗練された文化の主である。ラルツァカークは、構成員のほとんどがブルーであるが、あらゆる混沌の能力を理解し、厳格な規律により強化されている良く統制の効いた軍団を率いている。混沌の生物を完全に信頼することは不可能だが、それでもラルツァカークに仕えるブルー達は、人間のそれと同じくらい信頼でき、忠実である。力と恐怖、喰らう者として君臨することで、ラルツァカークの力はドラストールを支配している。彼の玉座は、憤怒の城砦にある。
 ドラストールを通る交易ルートが開かれて以来、ラルツァカークは、自分が認めた者については、砦への訪問を認めている。このような訪問者に対して、彼は様々な姿を見せているが、最も頻度が多い装いはユニコーンの頭部を持つ人間の姿である。彼は、面会した者に対し、覚醒前の出来事はほとんど思い出すことができないと語っている。彼は、自分がドラストールの地そのものの覚醒と同時に奇跡的に覚醒したことは偶然とは思えないと指摘している。彼は更に、ドラスタのカルトの伝説で予言されている「熊狼」が自分であることをほのめかしている。多くの聞き手は、ラルツァカークに優れた感性、ウィット、創造性、ユーモアと皮肉のセンスを持った知性を見出している。しかし、ラルツァカークは実際には忌まわしく恐ろしい生物であり、残忍で不道徳、気まぐれで恣意的、人間と獣に容赦ない苦痛を与えることを楽しんでいるという報告もある。

注釈:ラルツァカークはドラストールの支配者を僭称していて、ドラストールの最も文明化されたブルーの指導者として認められており、彼の指揮下にある強大なブルーの常備軍を保有している。二人の司祭(スレッシャーとシュライク)が彼を崇拝し、一人(スレッシャー)は弓兵の一団を、もう一人(シュライク)は剣士の一団を指揮している。彼は、50人の入信者からなる彼個人のカルトを所有しており、その入信者の40人が剣士であり、10人が弓兵である。また、平信者も300人ほどおり、そのうちの30人程度がチャラーナ・アローイの信徒であり、そのうちの3人は司祭である。
 ラルツァカークは、毒茨のエルフと友好関係にあり、エティーリズの交易ミッションを年2回認めている。この交易協定は、ルナー帝国と結ばれたものであり、他にも何か秘密の協定を結んでいると噂されている。彼は、ドラストールの他の知的種族や生物に対し中立的な態度を保っている。これは、ドラストール以外の他の部族、国家、帝国に対しても変わらない。彼は、自らが目指すのはドラストール及び近隣諸国の平和と安定だと公言している。彼は、過去の襲撃や戦争について、それは彼の統制下にはない独立した勢力の仕業だとして、自分には一切の責任はないと主張している。
 このブルーの英雄は、始祖混沌及びナイサロールの信徒としても知られており、自らも啓発されており、50個以上の謎かけを知っていると言われている。

ユニコーンの皇帝
 ユニコーンの皇帝の姿は、ドラストールにおいてラルツァカークが様々に取る形態の内、部外者と会う際の姿の一つにすぎない。これらの様々な形態が、ラルツァカークがそのときどきに身に付ける異なった外観なのか、それとも多数の形態は、同時に顕現することができる実体なのかは、誰にも分からない。同時に複数の異なる形態のラルツァカークが、離れた場所で目撃されたという報告があるが、それでも決定的とは言えない。それらの形態は、一つを除き、ラルツァカークによる幻影かもしれないし、彼の側近がラルツァカークの分身を演じているのかもしれない。ラルツァカークとされる存在が何世紀にもわたって戦場で殺されているということは、彼が複数の物理的存在である決定的な証拠にも思えるが、グローランサの歴史において死んだはずの英雄が再び現れることが珍しくない事や、ラルツァカーク自身が卓越したヒーロークエストの遂行者であるという評判を考えると、いまだ決定的な判断を下すことはできない。
 アルビノの人間に白いユニコーンの頭部の外見は、ラルツァカークのよく知られた装いである。彼は、明らかに身なりが整っており、文明人らしい豊かな刺繍で優美に飾られた衣装が、素晴らしい体格を覆っている。彼は明らかに非武装ですが、手振り一つで、虚空よりラブター(略奪者)の銘を持つ魔剣を取り出すことができる。ラルツァカークが自ら鍛造した大剣、ラプターは、振るわれると魔力のこもった歌を歌う。それを聞いた者は誰であれ、戦意を削がれ、精神を保てない者は自信を喪失し意気消沈する。また、一見、衣装しか身に纏っていないように見えるが、攻撃を受ければ、精巧な装飾がなされた板金鎧を装備していることが顕わになる。この板金鎧は、鉄製であり魔獎石が嵌め込まれている。彼は、通常、側近のシュリンク、雌のブルーでチャラーナ・アローイの女祭であるブロッドロック、8匹の精鋭剣士ブルーの護衛を伴っている。
 このラルツァカークの仮面は、しばしば、国家の失態を取り繕う外交官のように、ドラストールで起きる悪しきことは全て自分の不徳のせいかのように語るが、実際にはラルツァカークが支配しているのドラストールのごく一部にすぎない。彼は、自分を信奉する数千匹のブルーについて、彼らを文明化し、教導するための自らの努力について長口舌を揮い、ブルーが彼の保護の下にある旅人を襲撃しないという規律に忠実に従うことを聴き手に保証する。そして、これほど対規模な軍隊を持つ権力者のうち、自分ほど平和を重んじ、征服と支配のための戦争を自制している者はいるかと尋ねるのだ。

ラルツァカークの他の形態
ラルツァカークの顔:ユニコーンの皇帝以外にラルツァカークがよく使う形態は、「ラルツァカークの顔」と呼ばれる。ラルツァカークは、かつて、ジェナーテラにおいて、最も洗練された社会で活動していた。彼は、人間の(そして他の古の種族も)やり方を理解しており、定命の者を扱う際には、自分自身のこの形態を現す。
 「ラルツァカークの顔」は、全くの無毛で、ひどく古い意匠の衣服を着た青年である。彼は、茶色の瞳で、武器は持っていないが、小さな杖を握っている。彼は、この世のほとんどの言語を知っており、皮肉な、そして時折、恐ろしいほど冷酷な人生観を持っている。
 「顔」が誰かと直接向き合って話しかけるときはいつでも、その人は「顔」を完全に実体のある存在として見ている。しかし、「顔」を誰かが別の方向から覗き見た場合、彼の姿は奇妙な形状に見える。彼の背中は窪んでいて、正面から見たのと全く同じに見えるが、それは逆さまになっている。服も、手に持つ杖さえも、全てが逆になっているのである。
 「顔」は、あらゆる魔術に耐性を持っており、誰かが実際に試してみるような無礼を犯すなら、その者は、「顔」が危険で致命的な連続する魔力の層に囲まれていることに気付くだろう。
 もし、「顔」が、冒険者を憤怒の城砦に連れていくことがあれば、生きながら腐っていく突然変異した恐竜の死骸の上で沈思するラルツァカークを見ることになる。そして、「顔」は冒険者に「準備しろ。これが唯一の機会だ」と囁く。
 もし、顔の囁きに乗った者は、恐ろしい光景を目にした後、ラルツァカークに、短い時間の娯楽を供することになる。

サソリの腕を持つ恐ろしいブルー:この怪物に遭遇したことがあるのは交易に従事している者達のみで、憤怒の城砦や悪魔の台地の近くで見かけられたことはない。彼は、自分こそが真のラルツァカークであり、憤怒の城砦に居座る気取ったうじ虫は偽物であると主張している。
 ラルツァカークは、この怪物が話題になったとき、彼は、「ああ、奴か…彼も、もう一人のラルツァカークだ」と答えたが、詳しい説明は拒否した。

“複製者”ヴォスタサドール:この怪物は、野生のブルーの独立部族の指導者として知られているが、実際にはラルツァカークの別の姿のようである。

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