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ドラストールの住人達(中編) 蜘蛛の民

共通の知識:巨大な蜘蛛の一種が、蜘蛛の森一帯に住み着いている。その文化については、彼らが致命的な危険性を持つ狩人であるということを除き、何も分かっていない。

スパイダー

隠された知識:蜘蛛の民は、ドラストールの蜘蛛の森にのみ生息する古代の知的種族である。彼らの文化は、複雑な社会的行動パターン、化学物質と匂いで構成された精巧な言語で形作られた、人間の常識や知識では馴染みのない異質なものである。蜘蛛の糸と固着性の唾液を使用した彼らの巣は、驚くほど柔軟で耐久性があり、彼らの蜘蛛の巣が織りなすタペストリーは、質感、匂い、形ともに素晴らしく、そして複雑である。 彼らの部族の神話によれば、蜘蛛の民は、アラクニー・ソラーラが巣を広げる前からこの地に住んでいたとされるが、第一期の文書には何も記されていない。彼らは人間のように日々や起きた出来事を記録するということがなく、古代に何が起きたかを確認するのは不可能である。空が暗く、泥濘が森の境界を浸すようなときは、彼らは「灰塵の日」を思い出す。
 蜘蛛の民は、大きく4つに大別される。雄、若い雌、成熟した雌、太母蜘蛛である。

繁殖の樹
 繁殖の樹は、繁殖可能な成熟した雌を頂点とする家族集団が巣を構えるセコイアの大木である。蜘蛛の森には、およそ100本程度の繁殖の樹があり、それぞれの樹には、一つの家族の蜘蛛の民が住み着いている。
 典型的な繁殖の樹には、1匹の成熟した雌、2~5匹の若い雌、3~30匹の雄が生息している。繁殖の樹には、2~6体の感情精霊が、その幹に呪縛されており、繁殖の樹の根元から10m程までの部分に触れた者が、蜘蛛の民でなければ精霊戦闘を仕掛けてくる。恐怖や苦痛の精霊が一般的だが、狂気やその他の感情精霊に遭遇することもある。樹の周辺は、2~4ポイントの《隔離》呪文により守られており、呪文の領域を形成する棒は、生えている樹の根が使われている。雄は、通常、狩りのためにその樹を離れている。若い雌は、1~6ポイントのルーンポイントを有している。

精霊の樹
 精霊の樹は、蜘蛛の森の太母蜘蛛が棲む銀木犀の巨木である。これらの木々は、古より生えており巨大である。それぞれの樹は、蜘蛛の民にとって神聖なる中心である。現在、蜘蛛の森には五本の樹がある。蜘蛛の民の氏族構成は、長らく停滞しており、この3世紀の間、氏族が増えることなかった。太母蜘蛛の死による次代の継承の方法さえ確立しているにも関わらず、精霊の樹の枯死は氏族の終焉を意味し、氏族は散り散りになって別の樹に移っていく。
 精霊の樹には、女祭にして祈祷師の太母、1~3匹の成熟した雌、6~15匹の若い雌、10~100匹の雄が生息している。3~18体の感情精霊が、その幹に呪縛されており、精霊の樹の根元から10m程までの部分に触れた者が、蜘蛛の民でなければ精霊戦闘を仕掛けてくる。恐怖や苦痛の精霊が一般的だが、狂気やその他の感情精霊に遭遇することもある。樹の周辺は、6~10ポイントの《隔離》呪文により守られており、呪文の領域を形成する棒は、生えている樹の根が使われている。1~10匹の雄が守備兵として常時、樹の近傍に残っている。若い雌は、4~7ポイントのルーンポイントを有している。太母は、9~18ポイントのルーンポイント、呪縛した何体かの魔術精霊と気の精霊、古代からの部族の魔法の宝物であるヒーロークエストの像を有している。

「偉大なる古の母」のカルト
 蜘蛛の民が崇拝する女神の名は、匂いで綴られており、人の言葉に訳するのは困難であるが、そこには「偉大なる」「古い」「母」といった意味が含まれている。この祖霊は、太母蜘蛛の身体に宿り、受肉している。カルトの在り方はアラネイアに類似しているが、独特のルーン呪文を付与された魔法の蜘蛛の巣を編む力を有している。付与された呪文の効果は、繁殖と霊的な教化に関することである。
 司祭になれるのは雌のみである。雄は、入信者になることができ、女祭から精霊呪文を学ぶこともできるが、知性が欠落しており、精神が深化することもない。

生息範囲
蜘蛛の民の種としての生息範囲は、ドラストールのセコイアと銀木犀の森に限られる。個々の家族や氏族の生息域は、繁殖の樹や精霊の樹によって決まってくる。蜘蛛の民は雑食性であり、自分たちの生息する森の葉から重要な栄養分を摂取している。新鮮な葉を摂ることができないと弱って死んでしまう。彼らの領域が持ち出された卵も孵化するが、幼生は特定の樹から新鮮な葉を摂ることができなければ、いずれ弱り死に至る。さらに、セコイアや銀木犀は、現在の範囲の気候や土壌意外では成長することはできない。樹は根から生える新芽だけで繁殖し、種は作らない。新芽を採ってどこかに植えることもでき、発芽することもあるが、成長する前に大抵は枯れてしまう。成長するには、このドラストールの土壌が必要である。

セコイアと銀木犀
 蜘蛛の森の木々は、グローランサ全土において、このドラストールにのみ生えている。セコイアは、成長すると40~120mの高さになる常緑針葉樹である。木々の高みにある樹冠は、針葉樹やまばらばな陰性の植物で覆われた林床のはるか高みに天蓋を形作っている。巨大なセコイアは、繁殖の樹として、蜘蛛の民の成熟した雌の住処になる。蜘蛛の民の卵は、繁殖の樹がつくる天蓋の高所に産み落とされ、守られている。狩人をする雄は、森の木々に登り、樹冠から樹冠を行き来するが、繁殖の樹には登らない。複雑な蜘蛛の巣が林床に張り巡らされ、繁茂したカビ苔の下に隠されている。侵入者が、このような蜘蛛の巣に触れると、それは雄の狩人に、侵入者の存在と居場所を警告する振動を伝える。
 銀木犀は太く曲がりくねった幹を持ち、枝が幹から不規則な間隔で伸びている巨木である。セコイアほど高く育たない(成長して40m~80mほど)が、直径は30m以上になる。銀木犀は、比較的、成長が遅く、蜘蛛の森の木々のうち、1%も存在しない希少な木である。精霊の樹は、古代から生きている銀木犀の巨木であり、太母蜘蛛の棲みかとなる極めて稀で神聖な存在である。雄が、精霊の樹に登ることはないが、その根元に礼拝に集まることはある。雌は招集に応じたり、教育を受けたりするために精霊の樹にやってくる。
 セコイアと銀木犀は、病気や腐食、火や有害な昆虫に極めて強い。木質は軽く、加工が容易だが、強くも頑丈でもない。リスクランドにとって、これらの木々は異国情緒のある輸出品になる大きな可能性を秘めているが、その伐採には、蜘蛛の民の人口を大きく減らすことが避けられないため、凄まじい抵抗を招くだろう。

縄張り
 蜘蛛の民は、縄張りの境界という抽象的な概念を認識しない。縄張りとは、彼らが侵入者から防衛できる範囲のみがそうである。このようなことから、蜘蛛の民は、リスクランドで自分達が狩りをすることについて、それが強制的に阻止されない限り、やってはならないことだとは決して考えない。雌は雄の狩人を家畜程度の存在しか思っておらず、人間が彼らを殺しても気にすることはない。蜘蛛の民は経験から学び、雄の狩人が殺された場所を知れば、そこを縄張りから除外するだろう。雄の狩人を殺して、その死体を晒して置くことは、境界をお互いに明らかにする実践的な手段となりえるだろう。雄の狩人を捕らえ、蜘蛛の森に戻せば、雌は困惑し、興味を向けます。この方法なら、賢明な冒険者たちは、蜘蛛の民に知的生物を殺す際の寛容の原則を教えることができるかもしれない。

蜘蛛の民とテルモリ
 ナンタリ台地のテルモリは、蜘蛛の民の文化を理解している唯一の人間の文化である。彼らは、蜘蛛の森の端に綺麗な石やその他の美しいと思えるような丈夫な素材を残し、代わりに蜘蛛の糸を持ち帰る。テルモリは、蜘蛛の民の巣の織物についての正確な概念を保持し、かつてはより実質的な交流があったことが示唆されているが、現在、テルモリはこの方法以外で蜘蛛の民と交流することはない。テルモリは、友好的な人間に対しては、蜘蛛の森への侵入は確実な死を意味すると警告するだろうし、彼ら自身も、正直に人の姿でも狼の姿でも絶対に行かないと断言するだろう。
 蜘蛛の民は、テルモリとの取引、そして、かつて広大であった蜘蛛の森が現在の規模まで縮小する原因となったグバージ戦争の際の侵略と虐殺の古い記憶を全ての人間との接触における判断の基準としている。それゆえ、人間に対する唯一の肯定的な概念は交易であり、蜘蛛の民が人間に対して連想する大半は、蜘蛛の森における殺戮と破壊という脅威である。

冒険者達の遭遇
 冒険者は、蜘蛛の森の外で雄の狩人達の小集団と遭遇するだろう。彼らの一般的な狩場には、腐れの園と汚れの谷の沼沢地、ナンタリ台地のふもとのレッドバーク渓谷、ドラスタの社の東側が含まれる。蜘蛛の森の中では、雄の狩人達との遭遇は不可避であり、また極めて危険である。

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