ことばのせい──20220623

黙っていれば

ひとつだったふたり

きみにふと暗い風が訪い

わたしがどれほど美しいかと

わたしでなければならないわけとを

ひととおり語りおえたあとでわたしに

今度はきみがどれほど美しいかと

きみでなければならないかを

語ってくれとせがんだ

ぼくは最善を尽くし

そしてきみでなければならないわけと

きみがどれほど美しいかを言い尽くした

それはうまくいった

だからきみは失望した

じぶんが言葉に尽くせぬほど美しく

言葉に尽くせぬほど代えがたいものだと

信じていたからではない

語ることと語らせることが

失敗だったと気づいたからだ

きみがうつくしいのでも

ぼくがうつくしいのでもなく

きみにもぼくにもかわりがいるということが

わかってしまったからだ

言葉のせいではない

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