どうしようもない劣等感
地頭の良さと家庭環境に初めて憧れを抱いたのは、小学生時代の同級生、Kに対してだった。
父親はシティーホテルの総支配人で家庭はもちろん裕福、成績はトップクラスで、運動神経も抜群だった。Kには憧れを抱いていたが、同時に、劣等感も強く抱いていた。小学生の六年間、ずっと同じクラスだったというのに、口を聞いたことはほとんどなかった。
Kと話すようになったキッカケは、Kが私立中学受験に失敗したことだった。
Kのことを知れば知るほど、自分と変わらない普通の小学生男子だと分かった。誘惑に弱く、遊びの誘いを断れなかったKは、勉強不足で私立中学受験に失敗した。K本人はその自覚がちゃんとあって、それはさすがだと思うところだったが、母親からの嫌味はすごく、それは同級生へも容赦無いくらいで、それがKの心を少しずつ蝕んでいたようだった。
公立校の中学生になって、Kと同じクラスになることは一度もなかったが、Kの噂を聞くことは多かった。
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