猫泥棒に心を泥棒された話【ロシャオバンドパロ妄想】

注意

このnoteは羅小黒戦記のキャラクターのバンドパロ妄想です。さも見てきたかのように書かれたレポ風創作となっております。苦手な方はブラウザバックを推奨します。

猫泥棒に感情を泥棒された

「ヤツはとんでもない物を盗んでいきました、貴方の心です」なんて台詞がとある映画にあるが、この歳になると他人にそう簡単に心を奪われるわけがないと思っていた。

彼らに出会うまでは。

運命の日は×月某日。龍遊のとあるライブハウスで行われた対バンに友人に誘われたのがきっかけだった。
ここで少し私の話をすると、私が普段聞くのは花の妖精と謳われるシンガーソングライターの紫罗兰や、JAZZバンドの執行人、有名音楽プロデューサー老君がプロデュースしている清凝。そこから清凝ちゃんと老君もメンバーとして活動している(ほぼアニソン)歌手グループの蓝溪镇。
そう、お察しの通りロックバンドをあまり聞かない。なので対バンの参戦を友人にせがまれたときは、正直どうしようかと困惑はした。
興味が無いわけではなかったけれど、バンド、対バンと聞いて陽キャやバンギャの姿が脳裏をよぎってしまった私はここで誘いを断ろうとしたが、結局友人の圧に負けて行くことにした。今ではこの友人に頭が上がらない。

さて、そんなこんなで参戦が決定した私は、当日、まだ開場されていないライブハウスで友人と集合した時、衝撃の事実を知らされる。
なんと友人が持っている整理券は二桁(身バレ防止の為にぼかしますが、二桁と言っても数は大きめ)だった。
この日のために色々と対バンやライブハウスのルールやマナーなどあれやこれやを検索していた私は、二桁台だったら手際良く入場すれば最前付近で見られるという情報を確保していた。つまり、さして興味もない奴が前方で見れるという権利を得てしまったのだ。さすがにそれはファンの人らに申し訳ないから後ろに居る、と友人に言ったがここでもまた彼女に救われる。

「とりあえず一緒に前の方で見よう。もし人の圧や会場の熱さに負けそうだったらいつでも抜けて後ろに行っていい」

この言葉に渋々と頷いたが、結果、私は1回もその場を離れなかった。いや、むしろどんどんステージへ近づいていたと思う。
興味が薄かった奴が一体なぜそこまで惹かれたのか。
どうして心を奪われたのか。
前置きが長くなったが、あの感動を忘れない為に記していこうと思う。


開演前のステージ。
最前では無かったけれど前に居た人が友人と顔見知りらしく、私が初参戦だと友人が伝えたら周囲の人達もなるべく写りこまないよう協力してくれてこの一枚撮らせてくれた。
なお私はこの時点でファンの人達に対するイメージがひっくり返ってちょっとビビってた心が落ち着く。

ずっと流れてたBGMがフェードアウトするのに合わせて会場を照らしていた薄暗いライトが消えて、真っ暗なステージにメンバーが入場して来た瞬間、怒涛の悲鳴と共に周囲の人間が距離を詰めてきたのにビビった私はメンバーが最終調整をしている間、ずっと放心していた。
そして調整の終了を告げる一瞬の間と、それを破るドラムスティックのカウントと共に演奏が始まる。眩しいスポットライトが猫泥棒を照らして、ようやく放心していた私は対バンが始まったことに気づいた。

猫泥棒の第一印象は「ドーベルマンとチャラい飼い主」だった。とにかくカラーの違う二人。なのに、音が噛み合っている。
そして前奏からAメロへ移った瞬間、心の中で叫んだ。

「歌うのそっち!?!?!?!?」

友人曰く「猫泥棒の初見は皆その反応」らしい。
けれど、そんな驚愕も一瞬で消し飛ぶくらいの技術と愛がその声にはあった。
話は少し前に戻るが、私はこの対バンに向けていくつか曲を聴いた方がいいか、と友人に尋ねた。
だが友人はいくつかの曲名とその曲の定番の振りを軽く教えるだけで、後は前情報無くても大丈夫だと言った。
多分、猫担(猫泥棒の担当)さんなら彼女の意見に同意する人は多いだろう。

猫泥棒vocalの叶子は、その技術は然る事乍ら何よりも歌詞が聞き取りやすい。全て初めて聞く曲なのに、歌詞がその曲の印象と共にスルスルと胸の中に落ちてくる。でも、決して淡々と歌っている訳では無い。
一曲目からエンジンはかかっていた。音に込めた熱量がフルで客へ伝わっているのが肌で感じられて、一曲目が終わる頃にはじわりと体に興奮の汗が湧いていた。

そして叶子の「こんばんは猫泥棒です」の声に合わせて一曲目が終わり、すぐに二曲目に入る。周りのボルテージも既にMAXだと言わんばかりにみんな拳を振っていた。無論、一曲目から彼らの演奏に惹かれた私も同じように不慣れながらも周りに合わせて手を振った。楽しい。そう観客の感情が伝播するように叶子の声も次第にノッてくる。ファンと共に熱量を上げて、ここで一度トークが入った。

トークの進行は叶子がやっていたが、言葉の節々に丁寧さというか、上品さが伺えて「育ちがいい……」と感じていた。
一方、阿赫はというと一曲目からずっと澄まし顔を貫いてて、私が想像していた通りのバンドマンであるという印象を強く受けた。
※なお、この印象はあるタイミングを境に粉砕される。

この時のトークの流れはメンバーの紹介→対バンへの意気込みだったはず。メンバーの名前を叶子が言うとギターやドラムの音で答えていた。
叶子の紹介は阿赫が担当していたが「まだ緊張気味のリーダー、叶子くんで〜す」って言ってたの笑っちゃった。叶子も「おい」って顔してたけど、正直緊張しているとは思えない指使いでギターを鳴らしていた。カッコよ……。

そして意気込みとして「後に控えているメンバーが凄い人ばかりですが、俺らは全力で食らいついていきます」と叶子。付け足すように阿赫が「ついてこいよ」とだけ言って三曲目が始まる。
三曲目はダンスナンバーである「.3(ポイントスリー)」のメロウなイントロから始まるメドレーだった。

このメドレーが、強烈、ただその一言に尽きる。

先程の熱狂を一度抑え込むようなゆったりとした曲調は、まるで火のついた導火線のようだった。曲が進むにつれ、熱狂という名の爆弾が近づいてくる。そして点火の合図は、サビ直前の歌詞をアレンジした叶子の台詞だった。

「お手並み拝見」

その声と同時にギターが叫び、ドラムの音色が迸る。
猫泥棒の人気曲「傀儡」に移った。
そのアップテンポなナンバーはまさに爆弾。
観客も歓声と共に、再び手を突き出して熱狂を爆発させた。そして更にこの曲は掛け声が入るのだが、それが怖いぐらいに乱れない。観客すら曲の一部となっている、と言っても過言ではないだろう。そしてその様子を嬉しそうな顔をして歌う叶子の声は明らかに、一曲目と段違いな程熱くなっていた。

この時ようやく阿赫の言っていた「緊張気味」の意味が分かった。勿論、一曲目から上手だったが、テンションの上がった叶子の声はその技術も相俟って心臓を鷲掴むような熱を帯びていた。そしてその声を何よりも堪能していたのは他でもない阿赫だったろう。彼の顔には「たまんない」と言わんばかりの笑みが浮かんでおり、体の動きも少しづつ派手になっていった。
そして「傀儡」から「礫(つぶて)」へと曲が移る頃にはもう澄まし顔で冷静にベースを弾いていた阿赫の姿はどこにも無くただただ心底震えるように彼の歌に興奮しており、そしてその感情は美しいハモリとしてサビでぶちまけられた。

この瞬間、私は猫泥棒に心を奪われた。

彼らはお互いの音を愛し合っている。
愛しているからこそ、お互いが奏でる音が更に愛に満ちたものになり、そしてその音にまた互いが惹かれていく。
そうした互いの愛がまるで階段のように積み重なっていき、彼らだけの音楽が出来上がっていく。

こんなの、好きにならない方が無理だ。

片手は振り上げたまま、もう片手でシャツの襟を引っ張り涙を拭いながらそう心の中で呟いたのをよく覚えている。

そうして「礫」が終わりメドレーの最後は「tail someone」で締めくくられた。この曲はどこかオルタナ風な楽曲で、本来はスローテンポなものだがこのメドレーでは礫の曲調に合わせてアレンジされており、家に帰って初めて本家を聞いた時にはその雰囲気の違いに度肝を抜かされた。
余談だが本人らがSNSに上げている「tail someone」の動画はPV風に作られている(阿赫曰く、撮らされた)のだが、そのPVの猫泥棒の色気がヤバいので是非見て欲しい。そのあまりの色気とそこはかとないダウナー感によってシーン全てが暗喩に見えてくるファンはタイムラインを見る限り少なくはない。

メドレーが終わり叶子の「ありがとう」という声と共に次曲が始まる。対バンの時間は一時間に満たない程度だったが、そのわずかな時間に少しでも多く演奏しよう、という気概を感じられるセトリになっていた。

次曲「unknown」は曲調は派手ではないが手拍子や掛け声があり、この時ガッツリと猫泥棒に心を奪われていた私は事前に教えられてた流れを回らない頭で必死に思い返しながら見よう見まねで周りに合わせていた時、ふと阿赫と目が合った気がした。
ヤバい、合ってないのかなと不安になりながらも教えられていた動作を全力でやると、これは、本当にただの思い違いかもしれないけれど、阿赫が「やるじゃん」と言わんばかりにこちらに笑いかけた。最初のうちは終始澄まし顔をこちらに向けていた彼が。
今思うと本当にズルいなと思う。
けれど何よりもズルいのは、こちらに向けた笑顔の何百倍も楽しそうな笑みを隣に居る叶子に向けることだ。
(だが更に阿赫の笑みを引き出す者が居る……ということをこの時の私は知る由もない)

そして「unknown」が終わるとここでトークが入った。早い事でもう次曲が最後らしい。
その前に物販の宣伝を叶子がし始めるが、阿赫、一切トークに交わらず控えてあった水を飲んでいた。自由奔放。
そんな阿赫を叶子は呼び寄せて今日の感想を聞いた。阿赫は「え〜」と言いながらもマイクの前に立ち、入れ変わるように叶子が屈んで足元にあった水に手を伸ばすが、そのストローを口につけた瞬間に「楽しかったデス」とだけ言って感想……もとい叶子の給水タイムは終わる。さすがにちょっと待ってと言わんばかりに屈みながら手のひらを阿赫に向けて一気に水を飲みこんでいた。

またここで文句を言ったりツッコミを入れたりもせず普通に立ち上がって「よし」と叶子が言うのも「もういい? 準備できた?」と聞く阿赫も凄い。色々ツッコミどころ満載なのに、全てが慣れているような様はまるで熟年夫婦のそれだ。

そうして最後の曲が始まった。今回の対バンで唯一のツインボーカル曲だ。
あえて曲のタイトルは載せないでおく。
ただ、猫泥棒の曲を知らずにここまでこのレポを読んでくれた方にこの歌詞を知って欲しい。

「希望の朝を夢見て まがい物の光を纏う 夜光石よ どうかどうか君だけは 本物でいて」

この歌詞の2番はこうなる。

「歪な夜を乗り越え 紛れもない理想を追う 夜光石よ どうかどうか君だけは そばに居て」

この曲を聞くにあたって、私は伝えておきたいことがある。
阿赫の目は綺麗な青色なことを、叶子のSNSのIDにlockの文字が入っていることを。
これだけで、分かるだろう。
彼らがいかにお互いを大切に思っているかは。
どちらがどちらの歌詞を歌っているかは、是非聞いてから確認して欲しい。
そして、届いて欲しい。彼らが愛する互いの音を。
願わくば、もっと色んな人が彼らに心を奪われますように。
そんな祈りを込めて、このレポは締めくくらせてもらう。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
いつかどこかのライブでお会いしましょう。

猫泥棒に心を奪われた新参より、愛をこめて。

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