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今、「オリジナル」が熱い

VRChatで今、急激にオリジナルモデル(フルスクラッチor合法改変)勢が増えている。この1-2ヶ月の間に急に増えている。

 Twitterでは連日のようにモデルできました!ツイートがRTで回って来て、VRChatで自作勢集まれ!と一声上げたらイベントによっては3桁人数をマークする大イベントも発生している。筆者の周りも殆どが自作or合法の改変を施したオリジナル、その他の方も合法の配布モデルか、既成品を「購入」して使用している。 VRChat界隈、少なくとも国内のVRC界隈は一気にクリーンになりつつある。

 僅か1-2ヶ月で…?と思う方もいるだろうが、この界隈、とにかく行動が早い。ちょっと新しいアイデアが出ようものなら、その2-3日後には企画として始動していたり、毎日新しいギミック、技術交換会が行われているほどの勢い。モデル作りたい勢にこの勢いが伝播しても何らおかしくはない。

 この流れ、筆者が考えるには
・2つのネガティブな事件
・3つのポジティブな動き
これらが影響していると考えている。ここで言うネガティブは違法モデルが引き起こした界隈を揺るがす大事件を指し、ポジティブな動きはクリーンな選択肢の多様化を指す。

1.界隈全体の意識を変えた大事件

まずはネガティブな事件。2つあるこの事件を契機に界隈全体の遵法意識が高まり、違法モデルが居づらい環境が形成されていった。
・CGWORLD 6月号 VRChat特集
 雑誌"CGWORLD"内のVRChatで使われていた写真の中にモデラーが使用を許可していないMMDモデルがあるとTwitterで大騒ぎになった。この一報は瞬く間に界隈を超えて広まり、VRChatが無法地帯じゃないのか?という疑いが広まった。(雑誌自体は直後に回収になり、特集が削除された改訂版が改めて販売されている)
 この後、界隈外のモデラーがVRCにログインし、違法性を糾弾する声が高まった。もちろん、その声は正論ばかりで、我々は甘んじてその声を受ける必要があると考えている。だからこそ、後述する流れに繋がってくると思っている。

・Vtuber「魔王ヘルネス」モデル事件
 これは事件というよりは事故で、直接的な要因とは言えないが、モデル作成に関する意識に一石を投じる流れになった。
 ヘルネス氏が配布していたモデルの中に、Tda式MMDモデルの一部が混ざっていたことが彼自身の声明により判明した。これは習作モデルに流用していたものをそのまま正式版に使ってしまったらしく、現在データを全て破棄した上でクリーンなモデルを再制作、差し替え中とのこと。
 もう一件はVtuber「万楽えね」に彼が個人的に渡していたモデルにカスタムメイド3D2の髪型のリッピングデータ(ゲーム内のデータを違法に抽出したもの)が入っていたこと。これは紛うことなき違法行為…なのだが、海外のフリー素材を使ったらリッピングデータだった、という配布者に問題がある事故だった。全ての件に関して当事者同士で解決は行われているのでこれ以上の追及は行わない、行うべきではないが、モデル流用の危険性、クリーンなモデルとはなんぞや?と議論を呼ぶ一件となった。

 この2つの事件、共通するのは金が絡んだor絡みかけたことである。Vtuber、VR界隈では無料のコンテンツに価値を感じた人が任意でお金を送る投げ銭、サポーター制度が普及している。個人的に応援したい人や、支援したい人がコンテンツ…というより、人に投資する流れである。この文化でコンテンツでお金を稼ぐ、ということが身近なものになったが、当然金絡みになるため、コンプライアンスが重要になる。褒められた話ではないが、過去にも違法な事案は散見されていた、が、金が絡んだこれらの事件が初めて重大インシデントとして表出したと言える。

 これを機に、界隈内ではクリーンを目指す動き、違法モデルを(特に放送などから)排除する機運が高まった。今現在、違法モデルで放送に出ることは配信者が許さないし、視聴者参加型放送では参加前に厳重なチェックが行われていることが多い。
 しかし、排除しただけでは路頭に迷う人も多いのも事実。そこで次はポジティブな動きに注目してみる。

2.クリーンな選択肢の普及

 今現在、有志によってどんどんクリーンな選択肢が増えてきている。今回は3つほど紹介する。
1.自作テクニックの情報共有の拡大
 
3Dモデルを自作!少し前はとてつもなくハードルが高いものであり、限られた人にしか出来ないものという印象が強かった。実際
・金(ソフトウェア)
・技術(ソフトを使いこなす技能、思い通りの形を作る技能)
・モノ(金にも絡むが、性能の高いPCなどのツール)
が要求されるが…この3つの障壁は個人的にはもはや無いと考えている。ソフトはBlender、メタセコイアの2大フリーモデリングソフトが普及しているし、モノはVRChatが動くPCであれば間違いなくモデリングもできる。最後の技術が一番ハードルが高い…と思われたが、今現在、多数の有志によって技術共有がなされており、創ることは遥かに容易になっている。実際、筆者も情報を読み漁って、自作モデルを創っている。

※筆者が最初に作成したVRChatアバター

できる人からすれば一笑に付すようなクオリティかもしれない。しかし、新世界に飛び込むにあたり、改めて自分の身体を自由に造れる。界隈ではよく魂の器だったり、受肉と呼ばれているが、自分のなりたい姿で現界できるのだ。唯一無二のオリジナルの身体を以って。この考えは主観的ではあるが、間違いなく同じ考えの人は多数居ると信じている。事実、VRChat内で開催された自作アバター交流会では参加者ごとに自分の「好き」を込めたモデルでバーチャル現界を果たしている。
 ここでよく言われている優しい世界が効いてくる。みんな褒めるんだ。初めてのオリジナルで現界を果たした者を。少なくとも正しい先駆者は。なぜなら皆通った道であり、また一人勇気をもって踏み出した者を最大限の称賛をもって迎え入れるのだ。自分もそうされて、意欲が湧いた結果、ここまで進化を果たした。

※最新の同一モデル 作り始めて2ヶ月目のことである
 創れるだけの技術共有、努力が正当に評価される世界。誰でも挑戦し得る土壌は出来ていると強く主張したい。

2.フリーランスモデラーの台頭
 ここ1ヶ月で急激にフリーランスモデラーが増えてきた。彼らは金銭を貰い、発注者の望むモデルを製作、納品する。価格は見た所最低10万から、としている人が多い。
 フルオーダーメイドの3Dモデルとしてはかなり安いとはいえ、高い出費には変わりない。本当に買うの?と思いたくなる諸氏も多いだろうが、事実として観測している範囲では全員それなりの受注を獲得している。更に、多数の受注の獲得により自分の技術に価値を実感し、基本価格の値上げに成功した人も居る。
 これを見ると、新しいこの界隈ではきちんと技術にお金を払う、という流れが出来上がっている。これは言うまでもなくいい流れであり、永遠に続いて欲しい流れでもある。

3.VRC向けモデルの配布と販売
 これは読んで字のごとく、VRCでの使用を前提としたモデルを配布、もしくは販売することである。これならVRCで使える、使えないの問題はクリアされるので安心してVRCで使用できる。
 ここで重要なのは、販売モデルがごく普通にVRCで普及し、それどころか一大ブームとして流行っているのだ。早い話が、皆そのモデルを買って、VRCで大集合しているのだ。ここにも、技術に金を払うことを躊躇しない流れができている。
 ここから流れは更に派生し、オリジナリティを求める人達が入手したモデルに改変を施し(当然規約上合法の範囲内で)、思い思いの個性を発揮している。完全自作と比べると難易度は低く、しかし自分なりの「好き」を表現できるということでモデリングに挑む姿は多い。

色々書いたが、界隈を揺るがす事件を経て、クリーンユーザーの数は日に日に増えている。更にこの流れを広め「オリジナルアバターで現界する」「VRCを想定したモデルで現界する」ことがVRChatの普通になれば、界隈の浄化が進んでくれると考えている。

まとめ
 ・大事件が起きて以来、遵法意識が高まっている
 ・オリジナル、個性をもってバーチャル現界する選択肢が無料、有料問わず増えている(光の軍勢の誕生である)
 ・有料の選択肢を取る人も普通に存在し、「技術に金を払う」流れはできている
 ・努力を正当に評価する優しい世界も、クリーンな世界創造に貢献している

 界隈に住む一個人としては、光の軍勢の勢いでネガティブを押し流せたらな…と切に願う。

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