おすぴー

「おすぴー」

ここで言う「おすぴー」とはオスカー・ピーターソンのことである。
おすぎとピーコのことではない。

「おすぴー」を私に教えてくれたのは私のジャズの師である、玲子先生だ。感謝。
今日はその「おすぴー」の「Night Train」というアルバムを聞きながら。


今、この「おすぴー」の流れている部屋は薄暗い。
照明の色味的にはオレンジ系統で、LEDではあるのだが眩しくない。
すごくおしゃれな電球が放つ薄暗い空間なのである。

ソファの隣には我が0歳の息子がスヤスヤ…
息子の安眠のためにも薄暗いほうがいいだろう。

しかしながら、正直言って私にとっては薄暗い。
パソコンをカタカタやるには薄暗い気がするし、
何を隠そう今まで三十ウン年、白い明るすぎる灯り…いわゆる「白昼色」の電灯で暮らしてきた私は薄暗いとなんだか不安でソワソワしてしまうんですよ。そういうのないですか・・・?

息子のためと書いたが、息子は別の部屋に移せば済む話。
なのになぜ私がこの薄暗い空間にいるのかといいますと、
そう、私の夫が薄暗いのが大好きなのである。

今、私たちが住んでいるこの古めの賃貸マンションには、入居者を早く見つけるためのサービスからか最初から照明器具が備え付けであった。
リモコン式のめちゃめちゃ明るい照明が全部屋についていた。
その照明に対して夫は、
「目が〜〜〜、目が〜〜〜やられる〜〜〜!!!」
とラピュタの終盤のムスカ大佐の如く嘆いていた。

前の部屋は夫が住んでたところに私が転がり込んだのだが、その部屋も暗かった。
しかし転がり込んだ手前、何も言えないし、私はできる限りMAXでつけられる電気を全てつけて過ごしていた。
夫が帰宅すると消されていってしまったけど。

引越しして久しぶりの白く明るい光で過ごし、なんだか実家に帰ってきたような安心感に包まれていた私。
だが何日か経過すると、Amazonから大きな荷物が届いた。
照明器具と電球である。
わざわざ備え付けを取り外しておしゃれで暗い照明を取り付けたのである。そして備え付け照明は今、寝室の片隅に追いやられてしまった。

おしゃれ素人であり夫からもクソダサ認定を受け、なおかつ小さい節約とかお得が大好き貧乏性の私には理解し難い行動である。

わざわざお金出して暗くする…?
賃貸やから出るとき元通りにせなあかんから備え付けも置いとかなあかんのに…?めちゃ邪魔やん…?

しかし夫が金を出しているため何も言えない。
嘘、ちょっと口を出した。
そしてめんどうになったのでもうお任せすることにした。
そして私の実家雰囲気を堪能する日々は消えた。

しかしおしゃれにはなった。すごく。
それはクソダサおしゃれ素人の私にもわかり味が深すぎるほどにわかった。

白昼色の部屋よりもよっぽど「おすぴー」の音楽が似合う部屋になったのである。

これからこの暗さで生活していくのだったら、なんかポジティブに受け取れたほうがええよね、と思いジャズを流す。
この暗がりに慣れた頃、私はおしゃれ人間になっているのかもしれないという淡い願いを持ちながら。

いや、たまにはこのおしゃれな空間でアニソンも爆音で聞こう。

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