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20周年を迎えるUSJで本当にあった心温まる物語

今年3月31日、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が開業20周年を迎えます。

映画からそのまま飛び出てきたかのような空間、趣向を凝らしたアトラクション、大人気アニメやアーティストとの数々のコラボイベント、そして、奇跡のようなクルーとの出会い――。

この20年間USJでは、ゲストの数だけ素敵な出来事と感動がありました。どんなときも来た人を幸せにしてくれる、そんなUSJで実際にあった心温まるエピソードを、『USJで出会った心温まる物語』(USJのツボ著/あさ出版)より1つ、ご紹介いたします。


結婚10周年の記念写真

「結婚10周年には、何か特別なお祝いをしたいね」
旅行でもしようか、ちょっと奮発して一流のレストランで食事をしようか、何か記念に残るものを買おうか……。
主人と2人であれこれ話している中でひらめいたのが、
「そうだ! USJはどう? 『ワンダーピックス』で2人とも思いっきりドレスアップして記念撮影してもらうの!」
というプランでした。

私たち夫婦は毎年、年間パスを購入し、毎週末遊びに行っていると言っても過言でないほどのUSJファン。USJは、結婚後の2人の思い出がたくさんつまった場所なので、そこで記念に残る写真を撮れたらどんなにステキだろう、と思ったのです。
USJの「ワンダーピックス」には、「ドレスフォト」というサービスがあり、その場で衣装を選べます。
もちろん、それだけなら街のフォトスタジオでも可能ですが、ワンダーピックスの魅力はなんといってもパーク内で撮影できること!
いつか、私もUSJのステキなロケーションを背景に、映画のヒロインになった気分で写真を撮ってもらえたらなあ、と思っていたので、「結婚記念日に最適!」と思ったのでした。
USJが大好きな夫も、
「いいね、それ! きっと一生の思い出になるよ。そうしよう!」
と大賛成。

私たちは、ただ写真を撮るのではなく、「結婚10周年」の記念写真であることがわかるように「1」「0」「T」「H」の文字のバルーン(風船)を用意することにしました。
ワンダーピックスに予約をしに行ったとき、バルーンを持参していいかも事前に確認。「もちろん大丈夫ですよ!」と、返事をもらっていました。
また、男性の衣装はタキシード中心で数は多くありませんが、女性のドレスは色とりどりでデザインも豊富! 
ふだんからなかなか服を決められない私は、当日では選びきれないと思い、予約時に見せてもらって、「これ!」というドレスを先に選んでいました。
それは、鮮やかなミッドナイトブルーの大人っぽいデザインのもの。彼はクラシカルな黒のタキシードです。
こうして、事前準備をバッチリ行い、当日を楽しみに待ちました。

そして迎えた結婚記念日当日の4月9日。
衣装室で私たちが着替えている間、クルーの女性が、用意してきたバルーンをふくらませてくださいました。
「こちらに入れておきますね」
4つのバルーンを膨らませ終わったクルーが、声をかけてくれました。
「ありがとうございます」
鏡の前に立ち、ドレスを着せてもらい、みるみるいつもの自分でなくなっていく姿がうれしく、どこか上の空で返事をしました。
1つひとつ背中の編み上げリボンを結びながら、
「今日はお2人の結婚10周年という大切な記念日。精一杯、務めさせていただきますね」
衣装担当の女性がそう言ってくださり、私のテンションはどんどん高くなっていきました。

「おー、キレイ」
ドレスアップした私を見て、彼がほめてくれました。
「あなたもカッコイイ!」
主人のビシッとした正装を見るのは、結婚式以来じゃないかしら。
想像していた以上にステキにドレスアップできた私たち。
結婚したばかりの頃のドキドキを思い出し、手をつないで撮影場所へと向かいました。
大事な小道具のバルーンは、ワンダーピックスを出るとき、クルーの方が持ってきてくれました。

ところが……。

撮影をしようとバッグからバルーンを出してみると、数字の「1」がありません。
「申し訳ありません。歩いている最中に落ちてしまったかもしれないので、すぐに探してきます!」
そう言うやいなや、クルーの女性が、もと来た道へ駆け出していきました。

待っている間、私たちが退屈しないようにと撮影担当の方がバルーンなしで撮影してくれるなど、終始気づかってくれます。
その気持ちはとてもうれしかったのですが、やっぱり消えてしまった「1」のバルーンが気になります。
10分、いえ、30分は待ったでしょうか―――。
先ほどのクルーが息を切らして戻ってきました。沈んだ顔です。
あぁ、見つからなかったんだ……。
私たちはその表情からすぐに察しました。
「遠くに飛んでしまった可能性もあると思って、パークの半分くらい範囲を広げて探してみたのですが……。なんとお詫びを申し上げたらいいのか……、本当に申し訳ございません!」
いまにも泣きそうな顔で、深々と頭を下げます。
  
じつは、この日は、私の誕生日でもありました。
「誕生日と結婚記念日を、こんなにステキにお祝いできるなんて幸せ♡」と、ついさっきまでは大はしゃぎしていたのですが、楽しみにしていた分、思い描いていたとおりの写真撮影ができないことに、正直落胆が大きく、それがクルーのみなさんに伝わってしまったのでしょう。
私たちのために広いパーク内を一生懸命探してくれて、待っている間も不安な気持ちにならないように、退屈しないようにと精一杯楽しませてくれようとしてくれた、みなさんの気持ちは本当にうれしかったし、感動もしました。
でも、それ以上にショックが大きくて……。
「いえいえ。大丈夫ですよ〜」
私は、努めて明るく振る舞おうとするのですが、うまく笑顔をつくることができません。
(せっかく準備したのにな……。一生懸命探してくれたみなさんを、これ以上悲しませたくないのに、うまく笑えない……)

そのとき――。

「これ、代わりにもならないことはわかっているんですが……。よかったら使ってください!」

バルーンの捜索に行ったクルーと一緒に走っていった別のクルーの方が、いつの間にか戻ってきていて、手にした「1」を差し出して言いました。
それは、ダンボールに金色のセロファンを貼って、バルーンのようなキラキラを出した手作りの「1」でした。

え、この短時間にどうやって!?

材料も時間もない中で、これだけ見栄えよくつくってくれるなんて……。
彼らの一生懸命な気持ちが伝わり、胸が熱くなりました。
「すっごくステキ! うれしいです。ぜひ、この『1』をバルーンに加えて撮影させてください!」
申し訳なさそうにうなだれているクルーのみなさんを励ますため、いえ、私自身の気持ちを引き上げるために、意識して明るい声で言いました。
「ね、いいわよね?」
主人に聞くと、満面の笑みで「OK」サイン。

手作りの「1」と、バルーンとを組み合わせて「10周年」とわかるサインを手に持ってパシャッ。
「あの、みなさんも一緒に入りませんか? こんなふうに『1』をつくってくださったこと、本当にうれしかったので、記念にみなさんとも撮りたくて……」
「え、いいんですか? ぜひ!」
「もちろんです!」
クルーのみなさんは、私の提案に笑顔で答えてくれました。
「ハイ、チーズ!」
カシャッ。
「私、いまの写真が今日いちばんの笑顔だったと思う」
「俺も!」

「お2人ともラブラブで、ステキなご夫婦ですね」
私たちの会話を聞いていたカメラマンさんから、そんな言葉をかけてもらいました。

そのときの写真は、いまもリビングに飾ってあります。
友人が遊びに来ると、不思議そうに写真を見て言います。
「なんで『1』だけバルーンじゃないの?」

ふふふ。
それはねえ……。
あの日のことを、友人たちに話すと、みんなこう言います。
「トラブルに巻き込まれちゃったのに、2人ともなんだかうれしそうだね」

そうなんです。
思い描いた記念撮影とはなりませんでしたが、USJのクルーのみなさんの思いやりにあふれた対応に接することができて、あの日の出来事は、夫婦の忘れられない特別な思い出になりました。
私たちは、いままで以上にUSJが大好きになりました。

いつも笑いが絶えない私たち夫婦。
「ちょっとおかしい記念写真くらいのほうが、私たちらしいのかもね」――。


いかがでしたでしょうか。
 ご紹介したエピソードは、USJで数多くあった出来事の1つにしか過ぎません。
 本書では、USJファンのゲストが実際に体験した全24のエピソードを紹介しています。
 本書を読み終わる頃には、何度もUSJに足を運んでいるファンの方々も、久しくUSJを訪れていない人も、また、USJにまだ一度も行ったことがない人も、きっとこの素晴らしい場所を訪れたくなることでしょう。


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