帰り道

水の都と呼ばれるだけあって、至る所に水路が引かれ、そこここを繋ぐ橋がかかっている。
「あんたの子かい?ねぇ」
通りがかった橋のたもとから、欄干の中ほどに立つおばあさんが見えた。
「あんたの子かい、ねぇ、かわいいねぇ」
話しかけているのは、カラス。
カァとも返事をしないけれど、2羽が左右からおばあさんを慕って甘えているように見えた。
鳥特有の、カクカクした首の動き。
撫でてほしそうに、撫でたそうに。
やさしい景色。

暮れなずむ空、風も冷たく感じる夕方、それでもこの心がふわふわあたたかい。

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