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9.メモリア(文字書きワードパレット)
真っ白なキャンバスを前に烏梟(うきょう)はおもむろに筆を取った。しかし、その筆先は何も描くことはなく、机の上の小皿に吸い込まれていった。もう何時間も同じことを繰り返して、ただ時間ばかりが過ぎていく。
何が描きたいのか。何を表現したいのか。何度問いかけても空っぽの心は何も返してはくれなかった。
壁にかけられた時計を見れば、もう夕方の五時半になろうとしているところだ。遠くでひぐらしの鳴く声が聴こえ
物書きのみんな自分の文体でカップ焼きそばの作り方書こうよ
フツフツとお湯が沸く音がする 完全に沸騰するのを待たずに中身を注ぎ入れた 。三分が長い。
イライラと台所を動き回る。 そろそろ良いだろう、 勢い良くお湯を捨ててザッとソースを絡める。 勢いよく一口頬張り顔をしかめた。 まだ固かった。
『自由の庭』シリーズ/加藤基之
手についた土をパンパンと小気味いい調子で叩いて落とす。
最近は少しだけ学校に来るのも楽しいのだ。加藤はみずみずしく生えたハーブに手をやると小さく笑った。
「お茶でも淹れようかな」
そうすれば、きっと彼は涼やかな目元を微かに丸く見開いて小さく息を吐くのだ。
仕方がないというように。
えびすくんと大黒くん
死にたい、と彼は言う。
けれどそんなのはただの言葉遊びだと僕は分かっている。
男にしては長い髪の毛をくるくると指でもて遊びながら、視線をついと僕へ向けた。
その瞳に写った姿を見て思う。
僕では彼の退屈を紛らわすことは出来ないのだ、と。
夕暮れに赤く染まった彼を見て小さく息を吐いた。
『純情青春安眠薬』構想案/田中良助
別に何かがあったわけではない。
ただ、彼のテニスは良助にとって理想であったし、テニスに対する真摯な態度は尊敬もしていた。
当然のごとくこれからも部活を続けるのだろうと漠然とそう思っていたのだ。
だから、彼があまりにもあっさりともうテニスはしないのだと言ったことが良助は許せなかったのだ。