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短歌32首「実験」





針のような天使の犬歯 やらせでもなんでもいいから微笑んで、ここで

蜘蛛の巣を愛の巣にして(愛の巣を蜂の巣にされて)おなかがいたい

スヌーズ 最低になる スヌーズ 最低になる スヌーズ 咲いて

6時から8時にかけて轟音のセツナレンサをリピートするだけ

緊張と緩和と太陽 とりあえずしょうもなくない朝をさがした



おすすめのくるりの曲を知らせあう気配があった 気配はあった

ピタゴラスイッチみたいにシャンプーやボディーソープをユニットバスで

運命は人魚のような顔をしてぼくを待たない Jアラート

何をしに現れたのか、大きめの相田みつを日めくりカレンダー

半額の大学芋や枝豆を大切にするパブロフの犬

金銭のやりとりだけが目に染みて言いたいことは全然ずれる

異次元の女戦士とどこまでも行けると思った 誰でもよかった



救急車のおかげで生まれた一体感、それを短歌にしようか迷った

マクドナルドのプレイランドの静電気(プラトニックな)ぼくのネオテニー

毒親を自認できない片田舎 かいけつゾロリのじごくりょこう

幸せなら手をたたこう で 手をたたけなかった人のLINEのスクショ

鼻水でつくった指輪、結局はこれも美談にしなきゃいけない



お互いにどうでもよくて適当に話したあとのポケットマネー

隣では「花束みたいな恋をした」みたいな恋をした後日談

言うなれば武蔵野美術大学の芸術祭に行くときのムード

創作を排泄や自慰に例えない約束をしたホワイトキューブ

ダサいことに巻きこまれているプレイヤーの目が死んでいてよかった、すごく

あの頃のあの子がたぶん涙目の写ルンですを現像しない

空調の音だけになった東京でピースサインをできるだけでかく



青空に感情移入しちゃうくらいさみしかったんだ、ペースメーカー

スタッドレスタイヤの季節 かっこいい若い夫婦を目の当たりにする

お互いを赤ちゃんだって思いたいだけなのになぜかうまくいかない

短歌とは暫く距離を置くとしてペットショップの明るい虚無感

1000円を3600秒で買う 非喫煙者じゃないような顔

行政の金の使い方 ぼくの手の堅あげポテトブラックペッパー

指先が夕日になって、心臓の内訳についてトークするまで

(字余りのところにぼくは住んでいてそれくらいしか今はわからない)




遠雷が遠雷じゃなくなるとこでショートケーキの苺をあげる