短歌10首「事後の世界」
〈以下、テキスト〉
ただいまとおかえりの一人二役を死ぬまでやった大根役者
少しだけ大好きだったこの国のフードコートのいろんなガチャガチャ
即席の陰謀論で笑わせてくれたあの子も子どもを産んだ
イマジナリーフレンドだけが本物でこうなることはわかっていたんだ
脇汗が涙になった瞬間に虫歯の味が耳障りだった
子沢山の人と話して価値観の一致がなくておもしろかった
ちゃんとやり直すつもりだったんだよ、新宿駅のあの日の樹液
つないだ手が剥がれたときのにおいがしてミスドがちょっとこわかった四季
変なボケを拾ってくれてありがとう ぽつねんと セルフポートレート
蕎麦屋の店先に並んだいろんな食品サンプルを見ていた 世界
遠雷が遠雷じゃなくなるとこでショートケーキの苺をあげる