午後三時のユーフォリア

その学園では毎日午後三時にメンデルスゾーンの「歌の翼に」が流れる。私たちは幼い頃からそれを聴くと跳躍をするよう教育された。伸びやかなドイツ語の旋律を浴びると生徒は何処にいたとしても跳躍する。校庭で、音楽室で、教室で、トイレの個室で。高く跳べば跳ぶほど先生方は喜んでくださるので皆いつも一生懸命に跳躍した。翻る濃紺のスカート。靡く髪の毛。少女たちの赤いリボン。
高く、大きく、美しく! 
なぜ跳ばなければならないのかなんて誰も考えない。跳躍の間だけ、私たちは自由で豊かで満ち足りていられた。

生徒たちは卒業式の日、屋上の端に整列する。そして午後三時、美しい調べと喝采を一身に受け私たちは思い切り跳躍した。

#Twitter300字ss /お題「歌」

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