冷凍庫はもういっぱい
午前二時、私はキッチンの明かりを点ける。 サンドウィッチを作るのだ。
トマトとタマネギを丁寧にスライスし、ベーコンをカリカリになるまで炒め、卵を半熟と固ゆでの間くらいの絶妙なタイミングで茹であげ、みずみずしいレタスをむしり、マヨネーズと辛子を4:1の比率で混ぜ合わせ、パンに薄くバターを塗る。塩胡椒も忘れないように!
ところで、キリちゃんの好物はサンドウィッチで(「絶望する暇があるならサンドウィッチを作れ」というのがあのこの口癖だった)、彼女は決まって真夜中、自らキッチンに立ち「サンドウィッチづくり」に勤しんでいたものだ。
どうしてわざわざ真夜中に?
一度そのように尋ねると、この時間帯のたべものはね、どれもこれも甘くっていっとう美味しいんだよと、彼女は愉快そうにトマトにかぶりついた。
そっと、トマトを囓ってみる。
顎を伝う汁をそのままに、
タマネギを
ベーコンを
ゆで卵を
レタスを
パンを
バターを
マヨネーズを
辛子を
胡椒を
塩を
少しずつ、私は口に含んでいった。
どれもこれも甘くっていっとう美味しいんだよ。
なんでもかんでも妙に甘ったるく感じてしまうのは果たして本当に真夜中のせいなのか、それとも。
真夜中にあのこはもう来ない。結局今日も答えは明らかにならず、あとには大量のサンドウィッチだけが残る。
私、朝は米派なんだけどな。本当に。もう、どうしてくれよう。
〈了〉
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