imperfect

彼女は毎日欠かさず日記をつけていたので私はその一日を克明になぞることができる。

朝、トーストを一枚食べて勤めていた職場とは逆方面の電車に乗る。
昼、駅前のマクドナルドに立ち寄る。ストロベリー味のマックシェイクを片手に近くのゲーセンでクレーンゲームに興じたあと公園のベンチで微睡む。
夜、ファミレスで日記を書きながら好物の枝豆をつまむ。日記はここで途切れているけれど彼女の次の行き先は分かっているから問題ない。

午前零時、私は彼女がひとり沈んだ海に辿り着いた。

足裏を撫ぜる黒々とした夜の水は相変わらずひどく冷たい。私はきっと今日も沈めない。ここで迎える十数回目の朝を思って、私は、揺蕩う波を静かに蹴った。

#Twitter300字ss /お題「水」

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