5月1日

昨夜は終電を逃してしまったので深夜タクシーを使うことにした。
つかまえたタクシーには先客が乗っていた。アロハシャツを着た青い星だった。星型のサングラス。胸元にはハイビスカス。
どこまで行くのかときくと、むかし自分に願い事をしたひとに会うのだという。最近の星は地上でタクシーを使うのですね、というと「もう歳なもので」と優雅に微笑んだ(なお、今の主流はクロスバイクとのことだった)。
「どんな願いを叶えるのかきいても?」というと「じきにわかりますよ」とこれまた優雅に微笑む。そのまま星はタクシーを降りていった。
朝、目覚めてみると外が妙に騒がしい。
ベランダに出ると、真っ赤なブライダルカーが空を飛び回っているのがみえた。クルマはそのまま、ファンファーレを鳴らしながら南の方角へと消えていく。
「ハネムーンってやつですかね」と、のんきにスイカバーをかじるフミちゃんを見ながら、すずしい顔してやっぱりあれだいぶ浮かれてたんだなと思った。

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