4月6日

どきどきした出来事について。
今日は天気が良かったのでわたしはひとりで散歩に出かけることにした。通ったことのない路地を抜けていくつかの角を曲がり人影のない道をもくもくと歩き続けていると、いつの間にか見知らぬ墓地にたどり着いていた。
だれかが供えたであろう百合の花の香にくらくらとしていると、視界の端をピンク色の鋭い光が、ヒュンッと横切っていく。え、と思いながらそちらをみてみると、ひとりの若い女の人が右足をすいっ、と掲げて墓石を蹴り飛ばした。エナメルのハイヒールが描く放射線。それはおどろくほど美しく、いけない、と思いながらもわたしはじっとその光景に見入ってしまった。女の人はそれから二回、墓石を蹴飛ばして颯爽と去っていった。
どきどきして堪らない気持ちになったので、帰りはバスに乗って家まで帰った。

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