ちぐはぐ学入門 第3回で触れた本のお話。



第3回の放送内で紹介した本のお話です。

古くてあたらしい仕事は、ひとり出版社「夏葉社」を営んでいる島田潤一郎さんの半生を綴った名著です。
帯にはこうあります。

嘘をつかない。裏切らない。
ぼくは具体的なだれかを思って、
本をつくる。それしかできない。

物事は、シンプルであるほど繊細な部分に目がいくものです。それは嘘をつけない、誤魔化せないということです。

島田さんが作る本は、どれも優しく純粋で読んでいると心の中に風が通り抜ける様な感覚になります。夏葉社は版権の切れたかつての名著を復刊する出版社ですが、装丁のすべてに柔らかな愛を感じることが出来ます。それはとても稀有なことだとぼくは思います。

言葉をいたずらに紡いで説明すること、言葉で納得させることは簡単です。島田さんが”古くてあたらしい仕事”の中に綴った言葉は、どれも等身大で、時に着飾った言葉を紡いだ際には、きちんと気恥ずかしさを添えています。無理にシンプルにした訳でもなく、無理にドラマチックに語るでもなく、かといって淡々と事実を羅列する訳でもない。そんな文書をかける人は多くありません。

何度となく読み返していますが、その度ぼくはふとしたところで涙を流してしまいます。その感情はとても説明が難しいことですし、説明する必要もない様に思います。

この本はどこまでも不器用でどこまでも暖かい人が必死に生きていることを肯定してくれる。そんな良著です。

長い冬休みに是非ご一読ください。きっと大切な人のことを思い出すことでしょう。

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