見出し画像

レジデンス日記(11)浅川奏瑛四季シリーズSpin-off 冬-デイサービス楽らく-

1月25日(水)晴れ


前の滞在と変わらず朝の利用者さんがだんだんと集まってくる1時間、施設の大きな窓から見える中庭で踊る「日常の風景にダンスを添えるプロジェクト」(←勝手に命名)を続けている。
私はまたぎっくり腰になり前屈みオランウータン状態🦧なので身体の具合を確かめながらゆるゆると踊る。なるべく人前に出たくない自分にはありがたい逆光の為、外から中はほとんど見えないので窓を鏡がわりに踊る。
1時間あっという間に過ぎそろそろ戻ろうとしたら中から拍手が。数人窓際に椅子を置いてじっとみていてくれていたみたい。あなた前もいたよね?と思い出してくれた方もいて嬉しかった。やはり踊りは記憶に残るみたい。

ここ東松山に住む利用者さん達は、若い頃に社交ダンスが流行っていたり、民謡や盆踊り等も盛んで農家の仕事が暇な時期に習い事をしていた人が多く、踊ることが好きな方がたくさんいる。和裁教室に通っていた方も何人もいて、とにかく皆さん手先が器用でしなやか。
日常動作の中でもふとした手捌きが上品でいつも見惚れてしまう。私の手を見て綺麗で羨ましいと言ってくれるけれど、私からしたら皆さんの手ほど綺麗なものはないと思う。農家の家の方が多い為、畑仕事でゴツゴツしているからとコンプレックスに思っているそうだけれど、日々の生活が染み込んで使い込まれた唯一無二の人生が刻まれた美しい手に敵うものはない。
今気がついたけれど、ここで過ごす1日の中で無意識に私は利用者さんの手を物凄く意識して見ていた。
ご飯を食べている手、塗り絵をする手、お茶を飲む手、じゃあねと振る手…。
特に帰りの会後の送迎を待つ時間、1人ずつ呼ばれて出口に向かう時に、残った利用者さんに「それでは、お先に。またね。お元気で。」と手を繋いだり振ったりする、誰かのために使われる手を見るとぐっときてしまい涙が出そうになる。
時々こぼれている。
私もこの方達みたいな手になれるようにたくさんの経験を積んで、喜びも悲しみをも刻み込んだ美しい手になれたらいいな。

15時30分過ぎ〜16時30分位までの送迎を待つ間は椅子を中央に寄せてみんなでまったりとテレビを見る時間がある。眺めてる、の方がしっくりくる。お料理番組を見て美味しそう〜と呟いたり、歌謡曲の録画を見たり、日本の文化財の特集番組?を見たり。私はこの時間が1日の楽らくの中で1番好きで、なんだか利用者の皆さんが素に戻っているというか、やっぱり共同生活だから周りの人や職員に気を使うし日中は活動をする身体になっているけれど、この時間だけは利用者とそうでない自分との曖昧な瞬間のようで、独り言を言っていたりぼーっとしていたり、聞いたことのない話をコッソリ話してくれたりする(過去の恋話とか…!)

この良い時間に何か皆さんと一緒にできないかなと考えている。私から一方的にWSのようなお祭り的なものをするのではなく、みんなで何かを生み出すことがしたい。
…そうだ、帰りの歌をみんなで踊ろう。
いつも帰りの会で歌うアーティストのアサダワタルさんが作成した『また明日も楽らくで』の歌詞に合わせて座っていながらでも踊れるような振り付けを考えたい。
"体操"ではなくて、"踊り"の身体が見たい。
早速藤原さんに相談し、月曜日から10分ほど時間を頂き楽らくダンスを作ることになった。アサダさんもここに滞在しながら作成した曲だから共感ポイントの多い、大好きな歌をお借りしよう。レジデンスアーティストのコラボレーションだ。(←勝手に←すみません)帰りの会前に帰ってしまう人もいるから全員で踊ることは難しいけれど、1人ずつ少しずつ帰っていってしまうのも演出の一部になる気がしてる。一つ目標ができた。

1番最後まで残っていたOさんにこの事を打ち明けてみたところ、それも気になるけどそれよりも今日の晩御飯を何にしようかで悩んでいる。と

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?