レジデンス日記⑤浅川奏瑛四季シリーズ Spin-off 冬-デイサービス楽らく-
11月29日(水)晴れ
レジデンス5日目
いい服、いいフグ、いい肉の日
今日から"踊り"を解禁する
〈いつもいるあの子〉実は踊っています。
施設内で踊るのは反応がダイレクトに返ってきてしまって怖いから、ひとまずみんなの視線が集まりやすい中庭で朝の送迎時間を使って即興をする事にした。こちらからは逆光で中は何も見えない。
ヘンテコなダンスばかりやっていてもと思い脚を空に上げると中から拍手が聞こえてきた。笑
ペコっと一礼して中に入るとほぼ全員(スタッフさんも含めて)私のことを見ていて途端に恥ずかしくなった。いつもの朝のフェードインで起き始める雰囲気から、今日は朝から明るい雰囲気になったようで、「いつもの背景(中庭)が舞台になって、新鮮でいい」と言ってもらえた。
異端でいることを怖がらないことは難しいけれど、それはとても重要なことなのかもしれない。
馴染むことよりも。
今日は永遠に踊っていようと決めたので、お絵描きの時間も会話のちょいちょいをかいつまんで喋りながら踊っていた。
そんな光景は珍しいのでみんな今日はあまり色塗りが進んでいなかった(ごめんなさい)
皆さん昔は盆踊りや民謡や社交ダンス、フォークダンスなど、踊りをやっていたようで踊りを見ること自体好きみたい。前の方のテーブルに座っていたOさんが私のことを手招きして、
「午後の刺子の時間私もう飽きちゃったからあなた踊ってよ。私が言ったあげるからさ」と、早速職員さんに言ってくれて緊急浅川奏瑛ダンスタイムが組み込まれた、、、、!
東京ブギウギに合わせて即興で踊ることに。
昼休みはお昼寝の人、ぼんやりする人、歯磨きの人とそれぞれまったり自由な時間を過ごす。今日は中庭に出たいという方が何名もいてみんなで日光浴をした。私が朝外で踊っていたからだと嬉しいな。
職員さんの計らいでみんなで炭坑節を踊る事に。中庭は円形になっているので列になって一緒に踊った。楽しかった〜!私は腰が高いと踊りの上手なGさんに怒られた。やっぱり外に出ると気持ちがいいね。足の悪い方達も外に椅子を出して見てくれていた。気持ちのいい昼下がり。
最後はみんなとハイタッチをして、部屋に入る。
お昼休みを終え、いよいよダンス披露。
なんやかんやでアンコールをもらって結局3曲踊った。たくさんのフィードバックを頂く中で、
「私達は体はもう踊れないけれど心が一緒に踊った気がする」という言葉が強く印象に残った。
踊りは自由だ。昔の人は踊りといえば型があって先生がいて習うものだった。でも私がやっているダンスは年齢もハンディキャップも何も関係ない、
心が躍ればそれはダンス。
私がここに来てやらなければならないことが明確になった。上半身だけでもいいじゃない、ハイタッチをするだけで、手拍子をするだけで、踊りを見て心動かされる瞬間があること、それを一緒に踊った記憶として残して貰えるように私はここで踊っていきたいと思う。
身体の記憶は永遠に残るものだからね。
みんなが自由に歌を歌い踊りを踊る。
心が豊かになる1つのきっかけを作れたら嬉しい。
だんだん皆さんと仲良くなってきて、朝来ると手を振ってくれたり昨日の夜は何食べたか心配してくれたり、1人で寂しいだろうからとたくさん話しかけてくださる。職員さんでもない、子供でもない不思議な存在は立ち位置が難しいけれど、皆んなからすると、たわいもない会話をダラダラと喋れる気軽な相手なのかもしれない。
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表紙の写真は97歳のHさんの手。レース編みが得意で玄関の大きなレースはHさんが編んだものらしい。そのためにできたタコがカッコよくて写真を撮らせて貰った。髪の毛ツヤツヤ肌ピカピカで可愛らしい人。綺麗な秘訣は朝5時に起きて顔を洗って髪をとかしてお化粧をかかさずにすること。あと顔に塗って余った化粧水はかかとにもつけること。だそう。わたしも真似する。すっぴんでいつもウロウロしていて申し訳なくなった。
気がついたら夜の21:00
18:00頃から寝てしまっていたみたい。楽しさと比例して身体の疲れ具合が尋常じゃない。
ぱぱっと焼きうどんを作って食べた。
明日明後日と土日は泊まらないから、残り物の野菜を消費しないと。
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