ending(樋口茜)

病棟での暮らしは今日で3日目。監禁生活をしていた時はあれほど外に行きたかったのだが今ではさすがに懲りてしまった。ベッドの中でYouTubeを見たりすることが今は楽しい。
私が撃たれた時、田端さんが助けようとしてくれた記憶がおぼろげに覚えている。もしかしたら今私が生きているのは、田端さんのおかげかもしれない。
だけど一つの予感があった。もうこれからの人生で彼に会うことは一度もないだろう。タイタニックの主人公みたいに私の人生から消えてしまうんだ。消しゴムで文字を消すみたいに。田端という名もきっと本名ではないのだろう。
私は幼少の頃から父子家庭で、その唯一の父も仕事が忙しく一緒に過ごす時間は少なかった。だからだろう。私は他の子に比べたら少し捻くれたというか、サバサバした性格をしている自負があった。
それにしても一人娘が命の危険に晒されたというのに会いにこない父親というのはどうだろうか。
一抹の寂しさがよぎったが、すぐに頭を切り替えた。
まあいいか。ネット友達にさっきみた映画の話でもしよー
廊下を慌ただしく駆ける音が聞こえた。ここは病棟だというなになんだ?
勢いよく開かれたそのドアの前に現れたのは、茜の父、樋口星十郎だった。
「アカネ、、、生きてるか、、、。」
愛娘が生きている様子を見て父は顔を綻ばせた。父は全力疾走でもしてきたのか、シャツのボタンは不自然取れ、ズボンはヨレヨレだった。
「パパ、、、何勘違いしてんのよ。私は生きてるよ。」
そう言い、心の中で思った。
-そうだよね。娘のピンチに現れない父親なんていないよね。
「アカネ、、、私は間違っていたのかもしれない。すぐにこれなくてすまんな、。」
父の何が間違っていたのかなんて私は知らない。だけどその何故か無性嬉しくなって私は泣きそうになった。
-良かったね。茜。
「え?」
友達の声が聞こえた気がして、私は窓の外を振り返った。そこには、花柄の髪留めをつけた女の子達が遊んでいた。