【映画】私をくいとめて

●見たのは12月23日

『勝手にふるえてろ』の監督なので雰囲気酷似。もう1人の自分と相談しながら生きる奥手な30女の話で、とくにドラマもなくうじうじ勝手に妄想の2時間余りはそこそこ楽しいので退屈はしなかったけど。まあ、良くも悪くも、能年玲奈の映画。以上。な、感じかな。

見た直後は内容がぼんやりしてたけど、一日たって少しずつ見えてきた。日常的には相談にも乗ってくれる幻聴と共存し、ときには解離性同一障害によって人格を乗っ取られる。そういう女性について、別人格からの視点を排除して描いた映画だな、これは。

見ている途中は、もやもやしていた。脳内の相談役とは、なんだ? たんなる思考の脳内処理なのか? それが1日たって、あれは幻聴なのかも、と思いいたって納得した。実をいうと後半に入って、多田君とうまく行きそうなのに柄にもないハイヒールと11万のドレスを買うシーンがあるんだが、次の場面ではどこかから帰宅後部屋で、みつ子はAに、歯科医がどうの、断るのに苦労したとか、趣味じゃないとか、突然消えちゃって、とかあれこれ文句をいう。実は、あれが何だかよく分からずにいた。もしかして、多重人格? と疑ったけど、まったく人格が入れ替わるわけではないので、首をひねっていたのだ。
で、今朝、ふと、脳内の声は“幻聴”か、と思いついというわけだ。幻聴というと罵詈雑言で自分を非難する他人の声、というイメージだったけど、みつ子の幻聴は本人と親和性が高く、相談役にもなってくれている、ということなのだろう。
そして、いつもはみつ子が支配している身体をAが支配することもあって、そういうときは別人格になる。派手で社交的で、もしかしたら淫乱で、会費制の出会いパーティなんかにも出かける…。でも、これに関してまったく説明がない。これでは分からんと思う。はじめは、そんな行動に至ったのは、なぜか? 解離性同一障害もあるのか? という程度の理解だったんだけど、幻聴と共存してると考えれば説明がつく。これはたんなるコミュ障おひとり様な30女の話ではない。メンタルな障がいを持つ女性の話である。


さらに考えるに、みつ子は多重人格の相手Aと幻聴のような感じで会話できる状態で、たまにAに人格を乗っ取られることがある、ということなのかな。それと、飛行機で不安をなくすために吐きだした風船の文字とか、あるいは電線が楽譜になるとかは、彼女の幻覚なのかもな。

最後は、多田君と南の島へ飛行機で。恐怖症があってドキドキだけど、イタリアのときのように1人ではなく、隣には彼氏がいる。これで多分、もう、Aは登場しないのだろう。日常の中に自ら引いていた一線を越えることで、みつ子の精神的な病は、ひとまず寛解したということなんだろう。


・いろいろセリフが意味深というか、解読に役に立ちそうだけど、ボーッと見てたので、あまりすんなりと頭に入って来なかった。ホテルで氷を取りに行ったときだったか、みつ子は浜辺でAの実体と出会い、話をしていたんだけど、内容は忘れてしまった。あそこにも多分、解釈に役立つ情報はあるんだろうけど、まあいいや。こういうとき、ビデオとか配信なら見返して理解が深まるんだけどなあ。くそ。


・男が欲しいけど言い出せないコミュ障女、にしては能年玲奈ば美人すぎる。これが、フツーがそれ以下のキャスティングなら説得力が有るんだが、能年玲奈じゃなあ。


・能年玲奈は、相変わらずの棒読み一本調子で、芝居になっていない。可愛いから見ていられるけど、演技は無理だ。何をやっても、能年玲奈だ。
・もう1人の自分=Aという男性と対話するように独り言をいい、でもそれは人には聞こえないのか。自分の中で右か左か悩むとき、対立軸で思考を巡らすのか? ← これは見た直後の感想。あれは幻聴と理解できたので、疑問は解消。


・30女が、多田君とホテルに泊まって、何を小娘のようなことを。もちろんみつ子の性格は分からんでもない。でも、久しぶりの恋愛、という話もあったし、付き合うのが初めて、でもあるまいに。もしかして、まだ処女なのか? 


・たぶん症状が発症する前は、少し奥手なだけだったんだろうな。それが発症後に、引きこもり=おひとり様になったのかも知れない。そもそも大学時代の友人はいるし、会社にも話し相手の女性同僚はいる。多田君とも街で会って話ができるし、家にも招き入れてる。つまりは、一線が超えられないということか。でも、なにかトラウマがあるような感じもしないし、側からはフツーの女子社員。男が近づいてこないようにも見えない。自ら拒否してる感じはしないでもないけどね。あれが病的に見えないのは、2つの人格の入れ替わりを極力見せないようにしているからだろう。


・みつ子のまわりには、会社も、商店街にも、変人ばかり。みつ子に見えるのは、この世界から外れた人ばかりなんじゃないのかな。なので、大学時代の友人がイタリアにいて、まだ交友関係がつづいているというのが、少し違和感。


。イタリアシーンもあるけど、まともにロケしてる感じはない。観光映像と、日本にあるイタリア風な場所での映像をつないでるんだろう。コロナ下なのでしょうがない。


・ホーミーの音で鍵が箪笥の上から落ちて、飛行場に行ける、はいいけど、そんなところにフツー載せないだろ。


・合羽橋、科博、ヒューマントラストシネマ渋谷、築地本願寺とか、知ってるところがドカドカでてくる。ところで、あの地元の商店街はどこなんだ? 足立区、という文字が最後の方で見えてたけど。エンドロールが早すぎて確認できなかった。※後でWebで見たら足立区関原らしい。

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